人間失格 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087520019

作品紹介・あらすじ

「恥の多い生涯を送ってきました」3枚の奇怪な写真と共に渡された睡眠薬中毒者の手記には、その陰惨な半生が克明に描かれていました。無邪気さを装って周囲をあざむいた少年時代。次々と女性に関わり、自殺未遂をくり返しながら薬物におぼれていくその姿。「人間失格」はまさに太宰治の自伝であり遺書であった。作品完成の1か月後、彼は自らの命を断つ。

感想・レビュー・書評

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  • 葉蔵と共に滅んでみたい・・・

    この作品を読むと、何故か堕落が美しく思えて、つい、陶酔してしまう。

    そして、自分が堕落気味の時には、
    心にぴったりと寄り添ってくれる。

    まるで、悪い恋人のような存在だ。

  • 手記の主人公がもつ人間不信的な部分や、書かれている人間の本性的な部分はとても共感しました。
    また自分が「道化」であるということも、作り笑いや空気読みをいつもしている自分にとてもしっくり来ました。
    また、とても衝撃かつ腑に落ちたのは「飯の時間が儀式に思える」という所でした。
    自分も拒食気味になった事がありますが、親と食べるご飯の時間は苦痛であり、まさに儀式のようでありました。

    この本は有名でありましたがまだ読んだことがなく、ようやっと手に取る勇気がもてました。
    読んでよかったと思いました。

  • 少し読みずらかったが、共感できる所もあった。
    私も小さい頃は親の顔ばかり伺い、「道化」を演じていたのか…。と思った。

  • 『はしがき』から始まる葉蔵の生涯。
    既に『第一の手記』で胸が突っかえる程の心苦しさに苛まれながらも、読書が苦手な人間である私が計二日で読み上げた作品。

    台詞のみで見ればまた違うのだろうが、葉蔵の心情をこれでもかと綴る手記の内容に、何度も目を細め、胸を押えて読み進めた。

    手記後半にふと現れる『人間、失格。』の一文。
    その言葉の重さは、単なるタイトル回収と呼ぶのは余りにも重く、苦しく、ずんと伸し掛るような心苦しさを与えてくれた。

    文字一つ、たった一文にも心を絞られるような書き方は、さすが『文豪』の作品と感じた。

  • 普段何も考えず「当たり前」とすら捉えているような
    世の中のあり方一つ一つを深く考え、疎外感を覚え、恐怖する。
    映像作品や音楽ではない、
    文学だからこそ表現できるテーマなのかな、と。
    はじめは考えすぎでは、とは思いましたが、読み進めるうちに
    むしろ我々が考えていなさすぎるのではないか…
    という気になりました。
    皆が普段気にしない世の中の歪みを躊躇いなくつついている、
    そんな感じがします。

    太宰治の作品で読んだことのあるものはこれだけですが、
    他作品も気になってきました。

  • 節目の100冊目は、名著を読みたいと思い太宰治の「人間失格」にしました。

    存在は以前から知っていましたが、昔の作品は言葉や時代背景が今と異なるので、なかなか手が出せませんでした。

    太宰治が死ぬ1ヶ月前に完成したこの作品。
    完成後に自ら命を絶っており、この作品は遺書とも言われています。

    裕福な家庭で育ちながらも、幼い頃から周囲の人たちのために道化を演じる。
    そして、成長するにつれ、酒、薬に溺れ、自殺未遂を起こしたり、精神病院に入院したりし、人として徐々に堕ちていく。

    タイトルに表されるように、物語は陰鬱な流れで進んでいきます。徐々に人として堕ちていく主人公に、軽蔑の思いを抱きます。
    しかし、同時に共感の思いも抱きます。時代、環境等違えば、それは自分だったかもしれないと思ったからです。
    人間の弱い部分を飾らずに、晒したこの作品に人は惹きつけられるのかな。

  • 人間失格のみの文庫を探して、集英社のスタンダードを選択。
    これは、もはや硬派のエルか⁉︎小畑健先生、もっと思い切って「デスノート」2巻のエルの椅子に足をあげているバージョンで書いてで描いていきたかった。

    人間失格は、雑誌「展望」昭和23年6月から8月
    連載。連載中に入水自殺。第3回は、死後掲載された。単行本が、筑摩書房初のベストセラーとなる。
    当時は、自殺そのものから、本人の遺書であると言われること。また、「道化の華」の大庭葉蔵の再登場、「HUMAN LOST」のパピナール中毒の再考から文学的遺書であるとも言われていた。
    同時期に朝日で「グッドバイ」が連載中だった。

    「人間失格」は、
    まず、“はしがき”で、作家である“私”が、これから語られる男の3枚の写真を見るところから始まります。そして、3枚の写真の時代にそった「手記」が始まります。
    第一の手記で 幼児期を。演技で道化を続け、家族に認められようとしていた子供。媚びた薄気味の悪い笑顔の写真が残される。
    第二の手記で、中学、上京しての高校、中退。 心中事件。美貌であるが生気のない写真の時代を。
    第三の手記で、結婚して、漫画家となるも、妻の事件の後、薬物中毒となり入院。脳病院へ入れられる。生気のない表情のない写真が残される。
    そして、あとがきで、再び作家である私が登場して、その手記を預かることになる。
    そんな三部構成となっています。

    様々な女性に惚れられて破滅していきながら、芸術家として失敗し、人間になることには、失格した男の物語。
    太宰治は、神は罪を与えるものとして、神さえ恐れ、脳病院への入院で罪人以上の廃人、社会的な死と認識していたようだ。
    太宰が自分で思っている自分がこの主人公で、それを小説家としての自分が俯瞰していると思うのだけれど、現実と創作の部分が混然しすぎて、
    小説の為に身を崩しているのかなんだかわからないです。
    今回は、考えすぎて、混乱してしまいましたので、またどこかで再読します。

    巻末に太宰治の娘さんの人間失格の“鑑賞”が掲載されています。実際に見た写真のこと、太宰治の好物の話、人間失格に感じる父性。これを読んでしまうと、誰の解説よりも納得してしまいます。

    • 傍らに珈琲を。さん
      読者失格 笑
      それ言ったら私もです~

      あ、ちなみに源氏物語挫折しました(汗)
      読者にさえなれなかったー!
      素晴らしい作品なのは伝わってきま...
      読者失格 笑
      それ言ったら私もです~

      あ、ちなみに源氏物語挫折しました(汗)
      読者にさえなれなかったー!
      素晴らしい作品なのは伝わってきますし、読めば楽しいんですけどね…。
      またいつか3巻から再チャレンジだわっ←内容忘れてなければ
      2023/12/13
    • おびのりさん
      傍らさん、瀬戸内源氏に挑戦してたでしょ。
      もっと、コンパクトな作品から再挑戦お待ちしてます。瀬戸内寂聴さんのは、艶っぽすぎる。
      田辺聖子さん...
      傍らさん、瀬戸内源氏に挑戦してたでしょ。
      もっと、コンパクトな作品から再挑戦お待ちしてます。瀬戸内寂聴さんのは、艶っぽすぎる。
      田辺聖子さんとか?
      円地さんのコンパクトな3冊のやつとか?
      谷崎源氏は、私も苦手。
      2023/12/13
    • 傍らに珈琲を。さん
      そうそう、瀬戸内源氏です。
      この訳し方は寂聴カラーだろうな~みたいなところがたまに出てきて笑えたんですけどね。
      確かに艶っぽいかもしれません...
      そうそう、瀬戸内源氏です。
      この訳し方は寂聴カラーだろうな~みたいなところがたまに出てきて笑えたんですけどね。
      確かに艶っぽいかもしれません。
      そうか、もっとコンパクトなものがあるんですね。
      再検討だわっ。

      あーぁ、張り切ってガイド本まで用意したのになぁ 笑
      せめてガイド本くらいは読み終えようかな?
      2023/12/13
  • 考えすぎではある

    世間とは君のことじゃないか

    愛は信じられないのに罪は信じられる

  • 学生時代に読んだと思うがあまり覚えておらず再読です。
    今読んでもハードな内容だったので当時、もしかしたら最後まで読めてなかったかもと思いました。

    「はしがき」と「あとがき」の間に主人公の葉蔵を写した三枚の写真の頃についての葉蔵の手記がある形式の物語。

    「恥の多い生涯を送ってきました」から始まる手記には、少年時代から家族や周りの人に対してさえ怖ろしさを感じ、おどけてみせて過ごすしかできなかった葉蔵。
    そうして成長してさらに、次々と陰惨な状態に陥る半生が克明に描かれてます。

    主人公の葉蔵というキャラクターは、太宰自身を投影してるようでした。
    この集英社文庫にはなんと、太宰治の娘さんの解説が巻末にありました。

    太宰治の奥様ではなくて太田静子さんとの間の娘さん(1947年生まれの作家さん)の太田治子さんです。
    この作品を通して父親についての思いや感想が綴られていて、読んでいてそれが胸にぐっときてしまいました。
    例えば、小説での葉蔵の写真が醜く笑っていると描かれているところが娘の自分としてはおおいに不満だったとか、「空腹という感覚がサッパリわからなかった…」という作中の部分は信じられなくて腹がたったりしたとか。
    それは太宰治はウナギが大好物だと、母から聞かされていたので、食べることに関心がない筈が無いのに大袈裟な強がりだな、と…。

    それから作中のシズ子とその娘のシゲ子が白兎の子と遊ぶ姿をドアの向こうから、のぞきながら葉蔵が思うシーンが好きだとのこと。
    (幸福なんだ、この人たちは。自分という馬鹿者が、この二人のあいだに入って、今に二人を滅茶苦茶にするのだ。つつましい幸福。いい親子。この幸福を、ああ、もし神様が、自分のような者の祈りでも聞いてくれるなら、いちどだけ、生涯にいちどだけでいい、祈る)

    そして最後には…
    太宰治の『人間失格』は何よりも私に「父性」について教えてくれた作品ですと、締められていました…






    • mihiroさん
      チーニャさ〜ん♡おはようございます(*^^*)
      有名な作品だけど、小栗旬の映画で見ただけです(^_^;)
      主人公は太宰さん自身を投影してるっ...
      チーニャさ〜ん♡おはようございます(*^^*)
      有名な作品だけど、小栗旬の映画で見ただけです(^_^;)
      主人公は太宰さん自身を投影してるってよく言われてますよね。闇が深〜い。。
      純文学はなかなか敷居が高いのですが、、そういえば私、乙女の本棚中断したままだ〜(*/-\*)
      また再会しなくちゃと思い出しました(๑˃̵ᴗ˂̵)و
      2023/11/22
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      かなさん、こんばんは!

      やっぱり、内容覚えてないですよね。同じですね〜(笑)あ~映画、そういえばやってましたね…私は観てなかったんです…!...
      かなさん、こんばんは!

      やっぱり、内容覚えてないですよね。同じですね〜(笑)あ~映画、そういえばやってましたね…私は観てなかったんです…!
      もう、だんだんと寒くなって来ましたよね。かなさんの方は、雪とか降ると大変でしょうね…。気をつけてくださいね。コメントありがとうございました…♡
      2023/11/22
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      mihiroさ〜ん、こんばんは♪
      あ〜、やっぱり観たんですね〰️。小栗旬ですか…♡
      私は観てないので、読んでみました…(笑)
      乙女の本棚も私...
      mihiroさ〜ん、こんばんは♪
      あ〜、やっぱり観たんですね〰️。小栗旬ですか…♡
      私は観てないので、読んでみました…(笑)
      乙女の本棚も私も中断してます…同じですね(笑)
      今日も一日お疲れ様でした〜。コメントありがとうございました♡
      2023/11/22
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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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