- Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087604979
感想・レビュー・書評
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ノベライズ
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話題の映画「ブロークバック・マウンテン」の原作。とても短く、あっという間に読めるのだが、ホモフォビア、ヘイトクライム、親の虐待、子ども時代のトラウマといった要素がストーリーの中にしっかりと織り込まれていて、何度か読み返して確認したくなる。
自分がゲイであることを認めているジャックと、その志向があることを認められないイニス。ジャックは2人で将来を築こうとするが、イニスは子ども時代の思い出から逃れられず、どうしてもそれに踏み出せない。そして2人の間にあるのは、20歳の頃のブロークバック・マウンテンでの思い出ばかり。ストーリーを覆う閉塞感は最後の最後まで、重く垂れ込めている。
小説の背景は、1960年~80年代のアメリカ北西部。田舎で、保守的で、同性愛などとても受け入れられない雰囲気だが、しかし、これが現代ならもっと違う展開になるのだろうか? 確かに以前よりは同性愛は認知され、一部では良いイメージもできあがっているが…イメージ先行、さらに言えば妙なイメージが確立されているだけじゃなかろうか。多分、ほとんどの同性愛者にとっては、あまり状況は変わっていないんじゃないかな…読んだあと、そんなことを思ったのだった。 -
ゲイのカウボーイの話、と書くと何とも説明出来ない(しかしそれ以外に説明の仕様のない)話。
きっと手に取った人はその薄さにビックリするはずだ。
淡々と綴られて過ぎていく日々はあまりに薄くて、だからこそ2人が過ごした時間の濃さや鮮やかさが鮮明になる。ぼんやりとした日常を越えた非日常の明確さ。
全然湿っぽくないのが凄いなあと思う。この手の物って結構説教くさかったりお涙ちょうだいが定番って気もするから。
でもせめて訳は女性がするべきだったなと、思う。多分原作に合っただろう情緒がゼロ。まあきっと、日本人の感性だとこれが限界だったんだろうけど・・・。 -
映画観てから読んじゃうと、なんだかなぁ。
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故ヒース・レジャー出演の超名作映画の原作小説。
カウボーイ同士の許されぬ恋を描く。
互いに家族をもちながらも,押さえきれない心が切ない。
「オレはお前を見失っちゃいけなかったんだ」と気づいたときはもう遅かったのだから。
山で羊番をしながらの二人の食事は,シチュー,石みたいに堅いスコーン,豆の缶詰。それでも,二人にとっては,天国の食卓。 -
映画がとても好きなので読みました。映画よりも内面の描写が丁寧なため、すごく刺さりました。ブロークバック・マウンテンの景色も見えてきます。こちらの方がドロドロさが増しており、女性の小説感がありました。
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大学のゼミで、映画について深掘りしたのをきっかけに原作も読んだ。
当時の時代背景、アイデンティティ、
色々考えさせられて、思い出深い一作 -
映画だと寡黙なイニスの感情がつぶさに描かれていてよかった。
お互いに補完し合う作品である。
特にラストは、映画は映画的な盛り上げた感動を感じるが、このペーパーバックは男が一人という切なさが漂う。
映画では描写しきれないような、ゲイ差別があった時代のすさまじさに圧倒された。
男たちの、カウボーイのとんでもない匂いの濃厚さがとてもよかった。これは純愛の物語。 -
己の中の忌避する感情の存在。それを認める事は強さの一つと思う。ワイオミング州の荒々しい自然を舞台に、感情と向き合えなかった当事者の悲哀が描かれている。当時や地域の同性愛差別の強さ、貧しさ、揺らぎなきマッチョ信仰、それらが彼の目を背けさせていた。
ゲイアスリートの差別を描いたフロント・ランナーのように酷いゲイフォビア。登場人物に寓話のように刷り込まれる呪い。なぜこれほどまでに憎むのか。それほどまでに恐れるのか。荒々しさと粗雑の間に垣間見える純粋さ。山の夜の冷気と牧場の埃っぽさが見えた作品だった。
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映画は観ていないんだけど、図書館で原作を見かけたので読んでみた。
広大なワイオミングの荒っぽい自然と、無骨で荒っぽいカウボーイ文化。アメリカはホモフォビアのとても強い国だから、特に田舎ではゲイの人たちには生きにくいところだろうと想像する。気持ちを口には出さず、心を偽り、普通を装って生きていくしかないというのは、本人にとっても周りにとってもつらいことだろうと。
でも、そんな中でも幸福な瞬間がきらめいて、心のなかにいつも灯っている――それもまた幸福な人生なのかも。
訳者さんの後書きがていねいでよかった。