説教師 エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

  • 集英社
3.40
  • (2)
  • (34)
  • (31)
  • (3)
  • (3)
本棚登録 : 265
感想 : 31
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087606072

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「カミラ・レックバリ」の長篇ミステリー作品『説教師―エリカ&パトリック事件簿(原題:Predikanten、英語題:The Preacher)』を読みました。

    『氷姫―エリカ&パトリック事件簿』に続き「カミラ・レックバリ」作品です。

    -----story-------------
    夏の朝、洞窟で若い女の全裸遺体と朽ちた古い遺体が2体見つかった。
    休暇中の「パトリック」だったが、妊婦の「エリカ」を気遣いながらも捜査を指揮することに。
    検死の結果、新旧遺体は二十数年を挟んで全く同じ方法で惨殺されたことが判明、捜査線上に今は亡きカリスマ説教師の呪われた一族が浮上し…北欧の海辺の小さな町を震撼させた猟奇的殺人事件を作家&刑事が解決する大人気シリーズ第2弾。
    -----------------------

    2004年に発表された「エリカ&パトリック事件簿」シリーズの第2作目、、、

    前作から1年半後という設定で、季節は冬から夏に変わっているし、「エリカ」と「パトリック」はパートナーとなり「エリカ」は妊娠8ヵ月、「エリカ」の妹「アンナ」はDV夫「ルーカス」と離婚… 等々、季節やプライベートな設定が前回と変化した状況下で新事件の解決に挑みます。


    国王の洞窟(クングスクリユフタン)で6歳の少年が偶然見つけた若い女性の全裸遺体… しかも、その遺体の下から白骨化した古い遺体が二体発見された、、、

    小さな町フィエルバッカで発生した大事件… 休暇中の「パトリック」は呼び出され、この猟奇的な事件の捜査を指揮することになります。

    捜査が進展する中で、若い女性の遺体はドイツからの旅行者「タニャ・シュミット」で、殺される前に14か所の骨折や数々の切り傷があることが判明、、、

    そして白骨化した遺体は24年前(1979年)に行方不明となっていた「シーヴ」と「モーナ」で、「タニャ」と同様に多くの骨折があることが判明する。


    24年前の「シーヴ」と「モーナ」の失踪事件で容疑者とされたのは、カリスマ説教師「エフライム・フルト」の次男「ユハンネス」、、、

    「ユハンネス」は兄「ガブリエル」の目撃証言により嫌疑をかけられていた… しかし、「ユハンネス」は、嫌疑をかけられた2週間後に自殺しており、今回の事件を起こすことはできないことから、「パトリック」は24年前の事件を含め同一犯による犯行ではないかという疑いをもち捜査を進めます。


    捜査線上に浮かんだのは、亡きカリスマ説教師「エフライム・フルト」の呪われた一族、、、

    「エフライム」は「ガブリエル」と「ユハンネス」の二人の息子を使い、異言を口にさせ、あらゆる病気や体の不自由な人々を癒し、熱心な信者を獲得… そして熱心な信者である富豪の婦人から財産を遺贈され、その後は遺贈された財産の一つであるフィエルバッカの森林にある豪邸で過ごしており、現在は「エフライム」の孫「ヤーコブ」がその信仰集団を支えていた。

    「エフライム」の死後、その豪邸は「ガブリエル」が相続し、「ユハンネス」の妻「ソルヴェイグ」とその子どもたちは、森の中の小屋で貧しい暮らしをしていた。

    財産の相続を巡り「ソルヴェイグ」と「ガブリエル」の間には強い確執があったが、何らかの理由があり「ガブリエル」の妻「ライネ」は、夫に内緒で「ユハンネス」の妻「ソルヴェイグ」お金を支払っていた… 「ライネ」は「ソルヴェイグ」に脅されているのか、、、

    DNA検査で「ヤーコブ」の父親は「ガブリエル」ではなく「ユハンネス」だったことが判明、

    自殺したと思われた「ユハンネス」は殺害されていたことが判明、

    そして「ユハンネス」を殺したのは??? と… 一族の隠された事実が徐々に暴かれます。


    そこに、

    若い女性「イェンニ」の新たな失踪、

    捜査を混乱させる(別な犯人による)強姦未遂事件、

    「タニャ」の母親は24年前に失踪した「シーヴ」だったということが判明、

    等々が絡みながら、複雑な人間関係や相関関係が明らかになり、「パトリック」は真相に近づいていきます。


    「エフライム」に利用され洗脳(マインドコントロール?)されていた二人の息子「ガブリエル」、「ユハンネス」と、孫の「ヤーコブ」、、、

    「エフライム」の虚言に気付いていた「ガブリエル」、自分には特別な能力≪癒しの業(わざ)≫があると妄信していた「ユハンネス」と「ヤーコブ」… この違いが犯行の動機に繋がっているんですよね。

    その天賦の才を試そうとした(取り戻そうとした)ことが事件の動機だなんて… 被害者にとっても、加害者にとっても哀しい、、、

    「エフライム」の功罪… 許せないですねぇ。




    前作と同様に事件解決のサイドストーリーとして描かれるプライベートな描写も凝っているんですよね、、、

    季節が夏ということもあり、リゾート地のフィエルバッカでバカンスを過ごそうと「エリカ」と「パトリック」の自宅をホテル替わりに利用しようとする招かざる客(親戚×2組)が現れて長逗留しようとしたり、警察署署長「メルバリ」がメールオーダーブライダルを利用して結婚しようと呼び寄せた女性がとんでもない人物だったり… 本編とは、あまり関係ないのですが愉しめましたね。

    今回はプライベートでなかなか手が離せなかったせいか「エリカ」が事件解決に絡む部分は少なかったですね。


    前作に続き約600ページの大作… 現在と24年前の事件を巧く絡めながら、なかなか読み応えのある作品に仕上がっていたと思います。
    (そういえば、前作も現在と23年前の失踪事件が、巧く絡めてありましたね)

    「エリカ」は陣痛が始まり、「アンナ」は元夫「ルーカス」の元に戻ってしまう… という場面で終わるプライベートも気になります。


    続篇も読みたくなりましたね。



    以下、主な登場人物です。

    「エリカ・ファルク」
     伝記作家

    「パトリック・ヘードストルム」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事

    「ガブリエル・フルト」
     会計士、農場主
     
    「ライネ・フルト」
     ガブリエルの妻
     
    「ヤーコブ・フルト」
     ガブリエルの息子、宗教団体指導者
     
    「リンダ・フルト」
     ガブリエルの娘
     
    「マリータ・フルト」
     ヤーコブの妻
     
    「ソルヴェイグ・フルト」
     ガブリエルの弟の妻
     
    「ローバット・フルト」
     ソルヴェイグの息子
     
    「ユーハン・フルト」
     ソルヴェイグの息子
     
    「アンナ」
     エリカの妹、二児の母

    「ルーカス・マックスウェル」
     アンナの元夫、トレーダー

    「バッティル・メルバリ」
     ターヌムスヘーデ警察署署長
     
    「マーティン・モリーン」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事
     
    「ユスタ・フリューガレ」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事
     
    「アーンスト・ルンドグレーン」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事
     
    「アンニカ・ヤンソン」
     ターヌムスヘーデ警察署事務官
     
    「ダーン・カールソン」
     漁師、エリカの昔のボーイフレンド
     
    「トード・ペーデシェン」
     イェーテボリ警察管区法医学室監察医

  • もちろんミステリだから犯人は誰かとか色々考えながら読むんだけど、このエリカ&パトリックシリーズは登場人物の変化とか行動が面白くて犯人2の次になっちゃうんだよね(笑)

  • 一作目から変わらず感じる訳の違和感。
    そして内容の暗さ、後味の悪さ、好きになれる登場人物がいない。物語自体はずっと混沌とした壺の中を覗き込んでいるよう。

  • 暗くてどんよりした、一族の物語というわけで、犬神家の一族的な。
    スウェーデン人ってシャイで日本人と気質が似てるっていう記事も見かけるけど、ここに出てくるスウェーデン人はしかし酷いのばっかりでちょっとビビる。実際どうなんだろうか。
    人の家に勝手に遊びに来て、突然泊まるって言い出して、食事の準備から何から全部やらせて、家でダラダラして、お金を払うでもなく。ってここまで図々しいのは日本でもなかなかお目にかからんのではないか。他にもいろいろ酷いのが出てきてスウェーデン、ハンパない、ってなる。
    と言っても小説は、ここが変だよスウェーデン人!ていう内容じゃないので、じんわりと追い詰めていくけど相手もちょっとヤバくて、やっぱり金田一耕助だわ。

  • 前作からレギュラー陣の環境が大きく変化していて驚く。
    エリカはパトリックの子供を妊娠中(でも結婚はしていないみたい)だし、エリカの妹アンナはDV夫と離婚したらしいがまた良くない男と付き合っているし、エリカの元彼ダーンも離婚しバカっぽい若い娘と恋愛中。
    スウェーデンも夏は暑いらしく、妊婦のエリカは体調管理が大変らしい。なのに親戚やらパトリックの友人やらが夏を過ごしに二人の家に押し掛けエリカにもてなしを要求する。妊婦に何の配慮もないとは、やはり出産前日まで働くのが普通のお国柄ということか。
    事件の方は、今回はエリカの活躍は殆ど無し。一族の泥沼の争いと血液鑑定の件は面白かったが、事件の裏側にあるのがアレでは被害者たちが浮かばれない。
    読み終わるとタイトルの「説教師」という言葉が余計虚しく響く。

  • エリカ&パトリックシリーズ第2弾。

    期待していたのは、その後のエリカとパトリックの恋愛話だったのに、
    もはや一緒に住んで子どもが産まれそうになっているとは。
    あまりに急な展開にびっくりというか、ちょっとがっかりしてしまった。
    もうちょっと恋愛的にハラハラドキドキさせてほしかった。

    謎解きの方も、もっぱらパトリックが活躍していたのが残念。
    エリカが妊娠中とあっては無理はさせられないのだろうけど。

    とはいえ、殺人事件の方は町の名士、元説教師一族の入り組んだ人間関係がからんでいて面白かった。
    署長のエピソードも。
    警察署の面々もそれぞれ活躍(?)していて楽しかった。

    妹のアンナはどうなってしまうのだろうか。

  • シリーズの1作目を読まずに2作目から読んだからだろうか。
    まず、登場人物が多くて名前が覚えられない…。
    どうでもいい、事件とは関係ないと思えるような話が続くのだが、これはストーリーに重要な意味をもっているのか、それとも前作からのファンにお気に入りキャラクターの近況を報告してるだけなのか…。 後者だと切り捨てる勇気もなく、読み飛ばさなかったけど、全部読み終わって激しく後悔した。

    1作目を読んで、各キャラクターのファンになった人にはいいのかもしれない。しかし、この作品単品としては、全く面白くなかった。

  • 2004年発表
    原題:Predikanten

  • 今回は署長が大人しかったので、まだ良かったけど、お客さんにイライラさせられた。
    犯人が本当に分からなくて、すごく面白かった。盲信は恐ろしい。

  • 全シリーズの中で一番評価が高いらしい、二作目。
    10年以上前に起こった少女連続失踪事件の遺体が新たな遺体と共に発見されることに端を発する女性連続失踪事件。
    全体としてはうまくまとまっていて、寒気のするラストシーンも北欧と聞いて日本人がイメージする空気とうまくはまっていた。
    一作目もそうだったが、意外性をこの作品に求めてはいけない。
    語られている謎については、だいたいすぐに真相がわかる。それをどれだけ面白く肉付けし、キャラクターのやりとりを楽しませるかが、この手のミステリーでは重要なことだと思える。
    それに関しては、成功している方だと思うので★4
    ●ゴルフ狂のユスタの意外な過去と、なけなしの男気を感じさせた活躍(事件解決の行動がよかった)
    ●パトリックと昔の事件の被害者の遺族とのやりとり(奥さんもなくして、その際娘が妻を迎えに来たと思い、彼女たちのそばにいくために自殺せず穏やかに生きている父親)
    ●スウェーデンの観光地に住む人の夏の悲劇
    ●一作目の人々のその後
    ●セクハラパワハラ上司メリバリの変貌とその理由、そして顛末
    ●北欧ダメンズウォーカーのアンナの不幸

    このあたりが見どころか。
    残念ながら、エリカ&パトリックシリーズなのに、実質的にパトリックが主役でエリカは身重の体を転がしながら、無遠慮な親戚からの攻撃に耐えているだけでした。
    三作目に期待

全31件中 1 - 10件を表示

カミラ・レックバリの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
トム・ロブ スミ...
ドン・ウィンズロ...
村上 春樹
村上 春樹
ジャック カーリ...
村上 春樹
ネレ・ノイハウス
スティーグ・ラー...
ドン・ウィンズロ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×