Matt

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711646

作品紹介・あらすじ

日本から移住してはや5年。父と二人、オーストラリアに暮らす安藤真人は、現地の名門校、ワトソン・カレッジの10年生(16歳)になった。
Matt(マット・A)として学校に馴染み、演劇に打ち込み、言語の壁も異文化での混乱も、乗り越えられるように思えた。そこに、同じMattを名乗る転校生、マシュー・ウッドフォード(マット・W)がやってくる。
転校生のマット・Wは、ことあるごとに真人を挑発し、憎しみをぶつけてくる。
「人殺し! おれのじいさん、ジャップに人生台無しにされたんだ! 」。
第二次世界大戦、日本とオーストラリアの、負の歴史。
目をそむけてはならない事実に、真人――マット・A――は、自らの“アイデンティティ"と向き合う。

【著者略歴】
岩城けい(いわき・けい)
大阪府生まれ。2013年『さようなら、オレンジ』で第29回太宰治賞を受賞しデビュー。14年、同作で第8回大江健三郎賞を受賞。15年に刊行した『Masato』で17年、第32回坪田譲治文学賞を受賞。その他の著書に『ジャパン・トリップ』がある。

感想・レビュー・書評

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  • 「Masato」の続編。  
    小学生の時にオーストラリアに移ってきて、今は16歳。父との対立、日本人であるだけで拒絶反応を示す、戦争の負の記憶を持つ人たち。みんなのことが嫌いだし、何よりも自分自身が大嫌い。自分とは何なのか?アイデンティティを模索する少年の話。

    キャンベル先生の「みんな言ってる、と、きみは言ったな?みんな、と。きみは自分の頭で考えるということをしないのか?きみのような人間には、人の痛みや悲しみを感じ取ることはできず、それを自分のこととして考えることもできない。」という言葉が刺さりました。

  • 前作『Masato』から成長した真人の10年生(16~17歳)の一年間が描かれている。  
    MasatoからMattへの成長が文体にも現れて、対象読者年齢もその分あがっている。

    オーストラリアに溶け込んでいたMattだったが、転校生で同姓のMattから憎しみをぶつけられることで過去に日本が犯した罪を知り、日本人であることと向き合わざるを得なくなる。
    転校生Mattに怒り、父親が日本人意識を持ち続ける態度にも怒り、何より自分自身に怒っている。
    I hate myself! が悲しいくらい繰り返される。
    16歳の男子の悩む姿、怒りの爆発的なエネルギーに圧倒された。

    前作では、母親に批判的な読み方をしてしまったが、続編で姉から見た母親の苦しみを知った。両方読まないと解らなかった。
    本作では父親の弱さが書かれている。
    「親に逆らうってことは、日本に逆らうってことだ」こんな言葉は、日本で暮らしていたら決して出てこないだろう。
    日本にいたら、日本人であることをこれほど意識することもないだろう。
    異文化経験は母国を理解し、自己を知ることなのだろう。
    Mattの成長をこのあとも追ってみたい。
    子どもの成長は親との葛藤の物語でもある。
    Mattがこのあと親とどう関わっていくのか知りたい。

  • 5年生でオーストラリアに家族で渡ったあの「masato」の続編。
    人種の違いや生活習慣の違い、それ以上に第二次大戦後の民族間のすれ違いなど、同じ名前の『Matt』との軋轢を中心にストーリーは進むけれど真人はまだ高校生。子供ではないけれど大人でもない世代の友人関係や家族との関わり方もひとつひとつ重みのある大切にしたい文章があふれている。
    ストーリー的にはまだまだ続きがありそうなのでまた、続編を期待してしまう。

  • オーストラリアの名門校に合格し、新たな生活に入った真人。前作の「Masato」に続き、葛藤しながらも生活を楽しんで成長していく話 と思って読み始めたら、予測を上回るヘビーな内容だった。

    オーストラリアではジャップと嘲られ、日本にでは帰国子女と呼ばれ、日本人とは感覚が違うと退けられ、自らのアイデンティティに苦しむ。
    自国のコミュニティから脱することのできない親と、現地に馴染んでいく息子との広がっていくみぞ。
    悲惨な展開もあるけど、教育制度の違いも面白く、先が気になってやめられない一冊でした。

  • 1作目の『Masato』が面白かったので期待してたのですが、少し「読みにくい」と思う文章が多かったと感じました。

    オーストラリアに残ることを決めたマットでしたが、父親の生き方に反発したり、日本人を憎む転校生に突っかかられたりと、相変わらず過ごしやすいとは言えない生活を送っています。
    カノジョができたり、バイトをしたり、理解のある「ベストフレンド」と触れ合う中で、自分の生き方を考え、また人生の中で「どのような役を演じるか」と葛藤するマットの姿は印象に残ります。

    一方で、マットが葛藤し、悩む場面は表現が分かりにくい部分もあり、前作よりも感情移入しづらく感じました。
    彼のように悩みながら青春時代を送ると、深みのある人間になりそうだなぁとは思いつつ、苦労が多くて大変そうで、真似はしたいとは思えません(笑)
    まさに、小説で読むにふさわしい作品かもしれませんが、総じて「救い」が明確ではなかったので、読後感は少し暗いかもしれません。

  • 父親の転勤に伴い オーストラリアで暮らす少年 安藤真人 呼び名はMatt
    思春期を異国で過ごし、現地に馴染んでいるものの 転校生の同じ呼び名のMatt.w
    に目の敵にされ 過去の戦争の歴史に向き合っていく。
    思春期の腹立たしい自分との葛藤、
    そして 異国で落ちぶれていく 脱サラした父との関係

    高校生の青春物語とは一味違った 異国で暮らす主人公に
    読み進めるほど 気持ちが寄り添っていく。
    歴史をあまりにも浅くしか知らない私には、主人公と同じく苦しく感じる場面があった。

    読み終えてから この本が続編だということを知り 納得。
    お母さんのこと、お姉ちゃんのこと、お父さん、友だち、そして友達家族
    ちょっと わかっていなかったので、機会があったら読むことにしたい。

  • 思春期になって人生はますます複雑に!
    オーストラリアの教育システムも興味深い。

    日本とオーストラリアの歴史的関係もよく知らなかった。
    日本人は(私だけかもしれないけど)戦争について知らないことが多すぎる。

  • 「Masato」の続編。
    主人公は成長して、家族や学校やまわりの環境も変化して、前作よりもよりシリアスな内容だった。

    ロビーのことはショックだった。
    どうしてこんなことに、と思わずにはいられない。

    Matt自身だけでなく、父、母、姉それぞれにいろんな思いと困難を抱えてる。

    この先の主人公たちがどうやって成長し、自分の人生を生きていくのか、続編が楽しみ。

  • MasatoからMattになっても日本人であることから逃れられない。日本人だけじゃない。それぞれの出自の刻印から逃れられない。収容所にいた刻印も含めて。違いが生み出す暴力や自殺。和解を安易に導かない。安易な昇華は求めない。名作です。

  • いまいち。

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著者プロフィール

大阪生まれ。2013年『さようなら、オレンジ』で第29回太宰治賞を受賞し、デビュー。同作で第150回芥川賞候補・第8回大江健三郎賞受賞・2014年本屋大賞4位。2015年刊行の『Masato』(集英社文庫)で第32回坪田譲治文学賞受賞。他、『ジャパン・トリップ』(角川文庫)、『Matt』(集英社)、『サンクチュアリ』(筑摩書房)の著作がある。

「2022年 『サウンド・ポスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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