明日の空

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 650
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713541

作品紹介・あらすじ

両親は日本人ながらアメリカで生まれ育った栄美は、高校3年にして初めて日本で暮らすことに。「日本は集団を重んじる社会。極力目立つな」と父に言われ不安だったが、クラスメイトは明るく親切で、栄美は新しい生活を楽しみ始める。だが一つ奇妙なことが。気になる男子と距離が縮まり、デートの約束をするようになるが、なぜかいつも横槍が入ってすれ違いになるのだ。一体どうして-?栄美は、すべてが終わったあとに真相を知ることになる。

感想・レビュー・書評

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  • 青春ミステリー

    日本人でありながら、高校3年で初めて日本に住む帰国子女の主人公。

    主人公の不安いっぱいの気持ちがとてもよく出ていた。
    クラスになじんで楽しい学校生活を送りつつ、
    不思議な出来事が次々起きる。

    そして、パート2で、ガラッと内容が変わり、
    あれ、と思っていたら、

    最後に、ストーリーがやっとつながって、納得!

    差別問題、詐欺など、18歳成人の今の高校生に、
    是非、読んでほしい。

    アンディー、あなたは、素晴らしい人!
    バトンがどんどんつながっていくといい。

    明日の空は、晴れ!

  • 貫井さんの本にしては珍しく薄い・・・と手にして思いました。
    そして読んでいて青春小説だと知り、これも珍しいなと感じました。
    いつものような深刻な雰囲気でないだけにスイスイ読めて、2時間ほどで読み終えてしまいましたが、それが引きつけられて読んだというよりはスムーズに読めたからという印象でした。
    爽やかな読後感だけど、正直、いつもの作品ほどは読みごたえはなかったな・・・。

    この物語は大きく3つのパートに分かれています。
    パート1の主人公は帰国子女の女子高生。
    パート2の主人公は六本木でガイドをしている青年。
    パート3の主人公は再び帰国子女。
    となっています。

    アメリカ育ちの栄美は父親の仕事の都合で日本の高校に転入する事となる。
    日本の学校になじめるのか不安を抱えていた栄美だが、すぐにクラスメートと打ち解ける事ができる。
    そんな彼女のクラスには対照的な二人の少年がいる。
    イケメンで成績もよい飛鳥部という少年と皆の嫌われ者の小金井という少年。
    美少女の栄美に飛鳥部は接近してきて二人はすぐに仲良くなるが、小金井はそんな栄美に「飛鳥部とは親しくしない方がいい」と警告めいた事を言う。
    その後、栄美と飛鳥部がデートする際に行き違いがあったり、誰かが二人の仲を妨害しようとしているのでは?という事が相次ぎ、やがて飛鳥部は別の理由で栄美から離れていく。
    その合間に、栄美はクラスメートの少女から栄美のそっくりさんがいるという事を知らされる。

    これがパート1の内容で、謎がいっぱいあるままで終わってしまったのでどうなるんだろう?と思っていた所、パート2は違う主人公で全く別の内容になっているのでモヤモヤ感が募りました。
    それも作者の計算だったんだろうと思います。
    それでどうしてもパート1のはっきりしない事を知りたいという思いで次へと読み進めてしまう。

    疑問に思っていた事のいくつかはほぼ思っていた通りという内容でしたが、中には思いもしなかった事実があってちょっと驚きました。
    読者の思い込みを利用した、うまい設定だと思います。

    このお話は帰国子女が主人公になっていて他にも外国人が登場するので、彼らの目から見た日本人というのが読んでいて興味深いと思いました。
    日本人は社会主義国家ではないのに平等を重んじて集団主義だ、だから目立たないようにしないといけないだとか。
    自由の国から来た帰国子女の目線で見ると、普段から感じているこの国の閉塞感だとか、島国根性みたいなのが自然にうきぼりになります。

    まあ、自由の国っていうアメリカにも差別はある。
    それが集団主義、皆同じを好む日本ならなおさら、差別は生まれやすいし育ちやすいと言える。
    差別のない場所はこの世の中のどこにもない。
    だけど、その中で明日を見て明るく生きていこうとする事はできるのだ、とこの物語に出てくる少年の姿を見て思いました。

  • 1部、2部とどう繋がるのかわからず不安なまま3部に入り、後半一気に流れが変わった。
    読後は、ホッとして、温かい気持ちが湧いてきた。

    アンディのように敏感で繊細で傷つきやすい感覚を持つ人がいる。たくさん傷ついてきたから人の痛みもわかる。
    普通に接してくれたということが、本当に嬉しくて、闇の中の一筋の光だったんだと思うと同時に、想像以上の辛く寂しい日々を過ごしてきたのだろうと思うと、せつない。

    アンディのその気持ちを受け止めることができたユージもまた、繊細で敏感な人。
    それもまた嬉しく感じた。

    このような話を描ける貫井さんに感謝です。

  • 貫井さんの小説を読むのは、今回が初めて。
    本書は図書館で見かけて、タイトルと装丁の印象が良く、冒頭を読んで帰国子女の物語に興味を持ったから。
    どういう方向に行くか分からないまま、二章で主人公が交代し、最終の三章で再び一章と話が繋がる構成。

    どんでん返しがあるサスペンスとも言えなくはないけど、文章の読み易さがある反面、分量が物足りなかった。
    それでも癖のない文章で、作者の他の作品も読んでみたいと思った。

  • 栄美(エイミー)は両親の仕事の都合で、アメリカ生まれのアメリカ育ち。父親の転勤で日本へ戻ってきた帰国子女である。そんな彼女がとある普通高校へ編入した日からこの物語は始まる。

    3部構成ですが、軽やかな文章と、栄美に次々と起こる不思議な出来事に惹きこまれ、2時間ほどで読み終えました。
    不思議なアクシデントが引き起こされた原因はあまり気持ちのいいものではなかったけれど、だからこそ起こったアクシデントとその動機はむしろ清廉。
    読後感もよかったです。

    謎が明かされる行では「はぁ、なるほどね……」と納得。活字本ならでは、ともいえます。
    が、映像として仕上げられたものを観るのも、面白そうな作品です。

  • 気になる男の子とデートの約束をすると何故か邪魔が入り行けなくなってしまう帰国子女の栄美。
    今まで打算的な付き合いしかしてこなかったユージとアンディの友情。
    彼らがどう関わるのか、第三部のIn the Universityで謎が明らかになります。
    爽やかな読みごこち。
    だけど、根底には差別という深い問題もあって考えさせられた。
    アンディが呟く、
    「差別意識のない人なんて、いないんじゃないかな。」という言葉が悲しい。
    アンディが今までに受けた悲しみや苦しみを考えたらこの世界を憎んでもいいはずなのに、彼はあまりにも優しくて大きい。
    彼からバトンを渡されたら、そりゃ精一杯次へと繋げようと思うだろう。

    明日は晴れるよ。間違いなく。

  • サラリと一気に読めた。山崎の登場に少し違和感があり、欲を言えは繋げて欲しかったけど、後味は良くタイトルの意味がストンと落ちてくる。

  • 実家にあった本を拝借。お風呂につかりながら小一時間でさらっと読めました。
    帯の「驚愕必至!」というほどの驚愕ではなかったです。
    青春ミステリー、といった様相。ちょっと偶然が過ぎる気もします。
    世の中には怖い人がたくさんいますね。

  • 前半はなんてことはない、高校生の恋愛と邪魔者が入って失恋するという展開で、何がそんなに評価が高いんだろう?と思っていたのですが…。
    ラストでうなりました!
    そうかー、そうだったんだーー。
    騙されていたというか、気がつかなかったというか、やられた感が強いですね。
    こういう、絶対に絶対に映像化できない作品というのは乾くるみの「イニシエーションラブ」とかもそうですが、読書好きにはたまりません。
    だから読書が好きなんだ!って思わせてくれます。

  • うーん。山崎がアンディと出会うシーンはしっくりこないし、ユージ=飛鳥部というミスリードも見え見え。
    登場人物に気持ちが共感できる人がいなくて、さらっと読んでしまった。

    山崎が栄美にアンディの話を説明して、明日を晴れにするためには、このバトンを渡し続けていけばいいと言う。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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