ジヴェルニーの食卓

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715057

感想・レビュー・書評

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  • それぞれの短編のはじめに引用文がありまして。それをひとつの話が終わったあとに振り返って読むとすごく…すとんとくる。とても良い体験でした。

    短編が4つ、ほぼ同時代に活躍した巨匠たちの話。それぞれの話とはいえ、ほんのり繋がりが感じられる。

    登場人物や作品について逐一調べながら読むのが醍醐味。何冊かこの手の小説を読んでるが、やっとアカデミズムと印象派について理解してしっくりきた。

  • マティス、ドガ、セザンヌ、モネ。4人の愛と友情、芸術との格闘の日々を描いた短編集。
    巨匠ではなく一人の画家としての4人を垣間見ることができて、新鮮な視点でとても楽しめた。

  • 画家の絵を検索しながら、読みました。あの画家はこんな風だったのかなと思うだけでワクワク。
    とても楽しい時間を過ごせました。

  • 一冊の本の中に数々の絵画が散りばめられた、まさに美術館のような本だった。フィクションなのに、本当にそのような場面があったのではないかと思えるような描写がなされており、読者としての自分もその時代に迷い込んだような感覚にとらわれた。絵画については詳しくないので、実際に見たことない絵も多い。もっと絵を学んでからもう一度読みたいなと思う。特に、モネの大きな睡蓮の絵画は生きている間にこの眼で見てみたいと思う。すさんだ現代に心地よい風を吹き込んでくれるいい本だった。

  • モネやドガなどの絵をインターネットで観ながら読むと面白い。

  • 美術に関する史実に基づくフィクションを読んだのは初めて。面白かったし、知らなかったことも満載。マハさんのこのシリーズ他にも次々読んでみよう。4つの短編集だけど、このタイトルの「ジヴェルニーの食卓」が一番引き込まれた。モネに私淑する主人公にとても共感したし、モネを取り巻く美しい世界を堪能した。モネの画はふわふわし過ぎて三半規管が弱い私は好きじゃないけど、もう一度ちゃんとこの小説の視点から本物を見てみたい。

  • うつくしい墓(マティス)
    エトワール(ドガ)
    タンギー爺さん(セザンヌ)
    ジヴェルニーの食卓(モネ)

    それぞれの画家に魅せられた女性の視点から語られるそれぞれの画家の生き方。
    フィクションだけど、本当にこんなことがあったんじゃないかなぁって思う。

    マティスの切り絵は大好きで、いつか行ってみたいと思っていたロザリオ礼拝堂。
    それが目の前にあるような気がした。
    床に散らばる色を踏まないように、部屋のすべてものに意味があるように、
    自分がその部屋の中にいるような感覚になれた。

    実は、私は印象派の画家には興味がない。
    マティスも切り絵は好きだけど、油彩画には興味がない。
    それでも、それぞれの画家が何を想って描いていたかが作品から伝わるような気がした。

    ここに描かれている絵を、本物を見たことがある。
    でも興味があるかないかで、意識が変わってくると思う。
    もしもう一度見る機会があれば、また違う見方が出来るかもしれない。


    (図書館)

  • 緻密な調査と、読み終わって、知っている絵を思い浮かべてしばらくじっとしていたくなるような余韻が両立していてすごいなと。好み。絵を描くことをただ神聖なものとして美化していないし、有名になればついて回るお金の問題や、女性関係なんかにもふれている。その上で根底には画家としての目を持った人に対する憧憬(敬意)がある感じがいいなと思う。今までもこういう小説はあったのかもしれないけれど私は知らなかった。同じ作者の小説で同じく画家を題材にしている『楽園のカンヴァス』も読んでみたい。



     (個人的に目指したいことを書き留めた感想 http://d.hatena.ne.jp/fuka54/20140110#1389336062) 14.1.8~10 

    ◇引用

    ・「うつくしい墓」P30
    世の中が難しい時期にあって、画家にできることは、ただ調和を表現すること。もしも、完璧な調和を表現できれば、それが私の勝利なんだ。
     先生は、そうおっしゃっていたそうです。


    ・「エトワール」P90
    少女たちがチュチュ姿であられもないポーズを取らされているのを見るのは忍びなく、帰ろうとするメアリーをドガは引きとめた。どうして目を逸らすんだい?彼女のとっているポーズを、舞台の上でなら君だって平気で見るだろう?
    (略)
    ドガは、踊り子の生み出す瞬間的なポーズのリアリティをとことん追求した。片足で立つアラベスク・パンシェなどは、生身の踊り子に長時間ポーズさせるのは無理だ。しかし、マケットならば不均衡な一瞬のかたちを永遠に閉じ込めることができる。そして、踊り子という窮極のかたちを「自分のもの」にすることも。


    ・「タンギー爺さん」P138
     ポールは、いま、ようやくつかみかけている。これが自分の表現だといえる何かを、見つけ出すところなんだ。
     彼は、負けない決意なんだよ。貧しさにも、周囲の無理解にも、友人の心ない仕打ちにも。
    世間の冷ややかな目にも、時代の激流にも。
     わしは、いつも思うんだ。新しい芸術を生み出すためには、技術も、センスも、縁故も、後ろ盾も必要だろう。志を同じくする仲間や、資金的な援助や、発表する場も必要だろう。けれど、ほんとうのところは、芸術家自身の精神力が、いちばん重要なんじゃないかって。
     ポールには、ほかの誰にもないような強い精神力がある。絶対に、ほかには追随しない。唯一無二の、自分だけの表現を見つけたしたいんだという、強烈な欲求がある――祈りがある。
     ポール・セザンヌは、ドラクロワでも、モネでもドガでもルノワールでもない。ポールはな……いいかい、ポール・セザンヌはな。結局、ポール・セザンヌでしかないんだ。
     わしは、信じているんだよ。彼が、「自分はポール・セザンヌである」と気がつく日が、そう遠くないことを。


    ・「ジヴェルニーの食卓」
    P182
    作品制作のために、ノルマンディーやルーアン、遠くはイタリアのヴェニスにまで数え切れないほど旅をし続けたのがモネの人生だったのだが、アリスとジャンを失ってから、めっきり出かけなくなってしまった。そのかわりに、この世の森羅万象のすべてを持ちこもうと決意したかのように、ジヴェルニーの庭作りに精魂を傾けていた。心に憂いのあるとき、老いた巨匠を救ってくれるのは、庭の日だまりと、風に吹かれて揺れる花々と、ブランシュとともに囲む食卓だった。

    P206
    「時間によって風景は変わるんだ。今見ているこの景色だけがすべてじゃないんだ。ああ、なんでそんな単純なことに気づかなかったんだろう。なんでそんな当たり前のことが……こんなに、こんなにうれしいんだろう」
     ブランシュは、息を止めてそのつぶやきを聞いていた。
    いま、自分が見つめているのは、くたびれたマントを着た後ろ姿。いろんなものを背負いこんでしまった貧しい画家の背中。
     けれど、ブランシュの目には、日の光にきらめく氷塊よりも、その背中のほうがいっそうまぶしく映っていた。

  • 「楽園のカンヴァス」に続いての原田マハ作品。
    ‘読む美術館’と謳ってあるように、時代を開いた巨匠たちの人生の沸点を描いて、まるで画集を見ているような。
    上品で、温かく、そして静穏な、いつまでもこの世界に浸っていたい、そんな読後感。

  • 4人の画家について書かれている短編集。
    それぞれの画家の作品を調べながら、
    ゆっくり読みました。
    最後のモネの文が、特に好きです。

    キリスト関連の絵しか価値をなさなかった時代から、
    新しい絵画の歴史を0から作り上げていった印象派の画家たち。
    どれだけの苦難を乗り越えていったのかが、よくわかりました。
    彼らの絵の良さを確信して支援した人々がいたからこそ、
    私たちはそれを鑑賞する幸せを味わうことができるんだな、と感じました。
    中学校以来の、絵画鑑賞をさせてくれたマハさんに感謝です。
    著作を読むたびにいろんな世界に私を連れて行ってくれるマハさんが、
    私は大好きです。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

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