いのちの姿

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 158
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715880

作品紹介・あらすじ

人間の「生」の深淵を見つめて書き続ける宮本輝による随筆集。異父兄との邂逅を描く「兄」、シルクロードへの旅にまつわる回想「星雲」など、著者が白秋のときを迎えて命を想う、珠玉の14篇。

感想・レビュー・書評

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  • エッセイですが、密度が濃くて頭の中に映像が浮かびながら楽しく読めました。

    宮本輝先生の文体が大好きです。
    人々のつながりを大切にして、善いことをのこせる生き方をしたくなりました!

    ぜひ〜

  • とってもよかったです。パニック障害の話、お父さんの一言、心に残ります。

  • 久々の宮本輝。知人の料亭の女将が顧客に配る無料エッセイ誌上での連載ということで肩の力が抜けたざっくばらんな語り口調作品の背景や人生体験などが綴られる。氏の世代の日本語の良さ、謙遜する中で滲み出る読書量、「いのち」に対する意思の力を感じさせる文章が続く。加藤静允氏の挿画がとても素敵。完全版もあるとのことなのでそちらも読みたい。

  • タイトルがいい。宮本輝って三島と同じでいいタイトルつける作家なんだなあ

  • 「流転の海」と併読したの正解だった。こんなドラマチックな「流転の海」で創作部分も多いのではないかと思ったが、意外と事実に基づいている。

    『父は大阪市内で最も大きな貸し駐車場の管理を託されていて、その事務所は運転手たちや近所の商店主たちが暇つぶしに遊びに来る場所にもなっていたのだ。』

    『大阪での事業に失敗し、知人と新しい商売を起ち上げるために富山へと引っ越したのだ。』

    『母が突然、喘息の発作に襲われた』

    『なにがどうなろうと、たしたことはありゃあせん』
    『父が死に、母と私は取り立て屋と称される男たちから逃げて、大阪と奈良の県境の町で隠れるように暮らしていた』

    とあるから、物語と現実は違うようだ。もしくはその後借金が出てきたのかもしれない。

    他に一浪する、テニスに没頭するなどもそうだ。

    宮本輝は長いことパニック障害に襲われていたという話も面白い。それから結核なんだからかなりつらい人生をおくっている。それが小説に結実しているのだろう。

    井上靖の「崑崙の玉」を推薦している。井上靖という世界もあるなと思う。

    『通りすがりの名もない人ではなく、私がその小説に必要として名前をつけた人間は、たとえ一回だけ登場し、わずかひとこと喋っただけにしても、その瞬間、私はその人になっている。女であろが子供であろうが老人であろうが、私はその人に憑依する。努力してなり切ろうとしているのではなく、ごく自然にそうなってしまうのだ。』

    という言葉が印象的。

  • 実は宮本さんの新しい小説だと思って手にとったのだけど、実はエッセイ集だということに気づいたのは最初のページを繰ってからのことであった…

    そんなわけで、ややテンション低く読み始めたのだけど、最終的には、落ち着いて考えを巡らせるきっかけになるいい本だった。

    近刊で一番良かった「水のかたち」のとあるプロットにはこんなモデルがあったのか、、、とあの作品に読み取った偶然の連鎖が現実にも起きていたメタ構造にも気付いたり。

  • 1947年生まれ、宮本輝氏の「いのちの姿」、2014.12発行です。自伝であり、また書いた作品の紹介、思い出(思い入れ)のようでもあります。ジャンルとしては「エッセイ」になるのでしょうね!4歳~9歳は大阪・中之島の西側で水上生活を。25歳のときパニック障害に、27歳で会社勤めを辞めて小説を書き始め、32歳、肺結核で入院。33歳から夏は軽井沢で仕事だそうです。いのちある作品をこれからも書き続けていただきたいです!

  • 宮本輝さんが人生の中で出会った人の回想録であったり、自身の生い立ちであったり、どちらかというと人生の「影」の部分に焦点をあてたエッセイ本。

    数々の作品が生み出された時の作者の背景(舞台裏)を知りたい性分なので、かなり興味深かった。

    特に印象深かったことは、広告代理店で勤めていた時に、重度のパニック障害を患い、それを機に小説家に転身したこと。小説を執筆しながらも尚、病気と闘っていたこと。

    他には、種違いの兄の存在の話や、殺し馬券の話。

    自身の人生に起こりうることは、ひとつとして無駄なものはないのだと思う。きっと私も、ただ道の途中なだけで。

  • とても薄くて文字も大きなエッセイなので、一気に読もうと思えば読めますが、丁寧にゆっくりと読みたいと思わせてくれるエッセイです。
    久々に宮本輝さんの書いたものを目にしましたが、「あ~、ちゃんとしてるな~」「きちんとしたプロの文章だ」と実感しました。
    偉そうだけど・・・。

    内容としては、近況というよりは昔の事を思いだして書かれたエッセイでした。
    昔の出来事や昔書かれた作品にまつわる話など。

    最も印象深かったのは最初の「兄」という話です。
    宮本輝さんには父親の違うお兄さんがいるそうです。
    お母さんが前夫との間にもうけた男の子。
    生涯二度と会わないと約束をして前夫の家に子供を置いて出たお母さん。
    その人に会いたいなら会って来たらどうか、と宮本輝さんがお母さんに言ったところ、生涯会わないと約束したし、会いたいという心が生じたことがないとお母さんは言った。
    そのお兄さんに宮本輝さんは広告代理店に就職したころ、会いに行ったことがある。
    そのエピソードが書かれた話で、何となくほろ苦い後味を残すような話でした。

    宮本輝さんの書かれる文章は魂をこめて書かれているというのが伝わってきて、こんな薄くて大きな文字のエッセイでも軽々しく読むという感じにならない。
    そういうのって、文章だけでなく色んな面でこの世の中から減っていっている、と感じます。

  • 宮田さんの作家になるまでのことが書いてあり次回も
    みやたさんの本を借りようと思っています

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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