紅蓮の雪

著者 :
  • 集英社
3.72
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本棚登録 : 273
感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717389

作品紹介・あらすじ

伊吹の双子の姉・朱里は20歳の誕生日を向かえた日、なんの前触れもなく自殺した。朱里の遺品の中から大衆演劇「鉢木座」の半券が見つかり、それが死ぬ前の最後の足取りであることを知った伊吹は、少しでも真相に迫るべく一座の公演に行った。公演後、座長に詰め寄る伊吹の姿を見た若座長の慈丹は、その容姿を見初め、入団を強く進めた。伊吹は何か手がかりが掴めるのではと入団を決意し、以降、訓練と舞台に追われながらも、「女形」としての人気も得始めていた。そんなある日、ひょんなことから両親と鉢木座との繋がりが露見することに。それは鉢木座の過去に秘められた禁断の事実だった……。血脈に刻まれた因縁、人間の最果てと再生を描いた問題作。

【著者略歴】
遠田潤子(とおだ・じゅんこ)
1966年、大阪府生まれ。関西大学文学部独逸文学科卒業。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。著書に『アンチェルの蝶』(第15回大藪春彦賞候補)『冬雷』『蓮の数式』『ドライブインまほろば』(第22回大藪春彦賞候補)『廃墟の白墨』『銀花の蔵』(第163回直木賞候補)『雨の中の涙のように』などがある。

感想・レビュー・書評

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  • 旅芸人一座の座長の子供だった兄妹の因果が双子の子供へと続く.愛を知らずに育った二人だけの世界を頼りに,普通の人の人生を希求する.本当に哀しい物語だった.
    ただ,若座長の慈丹の懐の広い優しさに溢れた人柄にこの物語は救われている.もう,その姿気風の良さ,実在の人物なら絶対舞台を見に行きます.

  • (図書館)

    近親相姦モノって全然共感出来ないんだけど(当たり前か笑)、このお話は、それがどうして起きたのか、アリにしてしまう遠田さんの筆力は凄いと思う。

    伊吹と朱里の両親の謎が明かされて、後は母と伊吹も死ぬしかない状況から(物語としても)救い出した慈丹がこの物語の主役だったんだなと思う。
    伊吹は暗くてイジイジしてるだけだから笑(まぁ、まだ若くて経験が足りなくて田舎の子だから世間が狭いんだろうけど)

    遠田作品は、初めて読んだときからいつも思うけど、出てくる女の子がめちゃくちゃ美形なんだよね。朱里なんてほとんど出てこないのに、凄い綺麗な女の子が想像できる。(お母さんも美人です。寧々ちゃんもめっちゃ可愛いんだろうな)
    文字で読んでるのに、女の子が可愛いって印象が本当に強くて凄い。

    (あらすじ)
    両親に疎まれて育った双子の伊吹と朱里。
    ある冬、朱里は地元の城の石垣から飛び降りてしまう。大学を辞め、朱里が死んだ原因を探すうちに大衆劇団鉢木座を観劇し、入団することになる。
    鉢木座は実は父母がいた劇団だった。父母の実兄である現座長から聞かされる真実。それを聞いて、実の兄弟を好きになってしまった母と同じ血を経つために朱里が飛び降りたと知る伊吹。
    疎まれて育ったが故に自己嫌悪で人に触れることも出来ない伊吹を、天真爛漫さで芝居の世界という現実に引き留めようとする若座長慈丹。

  • 内容が途中からぼんやりわかりそうかなー?と思ってたんですがそれを差し置いてもよかったです。全体に切ない感じがあってちょっと引き込まれてしまいました。

  • 親に愛された記憶もないまま双子の姉弟はお互い支えあい生きてきた。二十歳の誕生日、姉の朱里が自殺した。幼い頃、父に「汚い」と罵られてから自分を汚いと思い、他人に触れることができない伊吹は自殺した姉に導かれるように大衆演劇の女形の道を歩むことになる。少し倒錯的な雰囲気の作品。そこまでの決意で子供を産んだのなら愛してあげなさいよ!と母親に腹が立つ!

  • とても難しいテーマだと思う、私には到底想像も出来ない、だから感想も書けない、そのくらい難しい。

  • 一気読み。
    でも、なんとなく、最後、しっくり、こない。
    最後のお母さんのセリフいらない気がする。
    子どもに罪は無い。
    全然憧れない世界でした。

  • 禁断、禁忌、この言葉が脳内を駆け巡る。

    真相が明らかになるに連れ絶望と怒りとやるせなさ、様々な感情が押し寄せ打ちのめされる。

    子を愛せない親がいる。
    物語に登場する双子の姉弟も父母、双方から愛情を受けず互いを唯一無二の存在だと信じ寄り添って生きて来た。

    けれども突然の姉の自死。
    死の真相を探る為、大衆演劇の世界に身を投じた伊吹を待ち構えていたのは驚愕の事実。

    『親の因果が子に報い』
    親の罪を子に背負わせるなんてそんな馬鹿げた話はない。

    猛火の炎の色を意味する紅蓮が鮮やかな血の色と重なり、妖艶で淫靡な遠田劇場に魅入られた。

  • いつもの遠田潤子じゃなくて驚きました(*_*)

    何故両親に愛されないんだろう…
    何故父親は子供達を汚いと拒絶するんだろう…

    主人公が辛いのは毎回の事なんで読み進めましたが。

    今作は最後まで、理由を知っても両親を許せなかったから少しイラッとしながらの読了です。

    大衆演劇と言う大きな家族に囲まれて伊吹が幸せになってほしいなぁ(/ _ ; )

    • しずくさん
      私も本作には★3つでレビューを残しています。重い双子の出自に暗くなりましたがエールを送りながら読みました。
      私も本作には★3つでレビューを残しています。重い双子の出自に暗くなりましたがエールを送りながら読みました。
      2023/02/24
    • みんみんさん
      しずくさんおはようございます♪
      暗い話覚悟で読んでるからそこはいいんですけどね
      応援しながらラストの救いをひたすら求めてます。
      何故かハマる...
      しずくさんおはようございます♪
      暗い話覚悟で読んでるからそこはいいんですけどね
      応援しながらラストの救いをひたすら求めてます。
      何故かハマる遠田潤子ですよ笑
      2023/02/24
  • 朱里と伊吹は男女の双子でありながら、仲良くというよりお互いを守り合うような、半身ずつ存在するような育ち方をする。
    料理屋を営む、片頬に傷を持つ美男の父親と美しい母親。そこに、どちらも両親の美しさを引き継いだ完璧な双子。そんな4人は周りからは、完全な家族と見えていたのだろう。外からは。
    実は家の中では、全く愛情を受けないどころか、存在を無視されているような双子だった。伊吹は、父親から汚いと罵られたことがトラウマになり、その後の人生に影を落とす。

    姉の朱里は20歳の誕生日を向かえた日、自殺した。
    遺品の中から大衆演劇「鉢木座」の半券が見つかり、最後の手がかりだと思った伊吹は、公演を見に行った。
    公演後、座長に姉の自殺の理由を執拗に聞く伊吹の姿を見た、若座長の慈丹は劇団に入るよう強く勧めた。

    いくつか違和感というか、むりやり話の筋道をつけた感じがあるのは、伊吹が大学をさっさと中退すること、劇団にその日のうちに入ることができたこと、都合よく、剣道と日本舞踊を習っていたこと。
    そして最後に朱里の自殺は、伊吹を自分の両親のようにさせないため、双子の因縁を自分で断ち切ってしまおうと思ったこと、とある。

    伊吹は若座長の慈丹と出逢ったところで、救われたと思うが、その救われの影に朱里が関わっているというのは、どうなんだろう。朱里は、あのようにするしか無かったのか。

    読んでよかったのか、読まないほうが良かったのか、わからない…

    最後は伊吹と慈丹の晴れ姿で終わる。
    今後、伊吹は気持ちをコントロールできるのかな。

  • 双子の姉弟・牧原朱里、伊吹は、両親に愛されず育った。"お互いを守る"と誓った二人だが、二十歳の誕生日に、姉・朱里は、自殺してしまう。

    伊吹は、朱里の遺品から大衆演劇「鉢木座」の 半券を見つけ、朱里の死の真相を探る為、大阪の劇場へ向かう。

    真相は分からずじまいだったが、鉢木座の若座長・鉢木慈丹からスカウトされ、劇団に入団する。
    伊吹は、稽古と雑用に追われ、やがて、女形として人気を得るようになる。

    舞台、稽古の明け暮れだったが、朱里と伊吹が背負った、禁忌の秘密が明らかになる。

    こんな運命を背負った人生もあるのだろうな。
    慈丹の愛により、辛い運命を乗り越え、伊吹が又、舞台に立つ勇気を得て、良かった。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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