剛心

著者 :
  • 集英社
3.92
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087717594

作品紹介・あらすじ

日本近代建築の雄、妻木頼黄(よりなか)。
幼くして幕臣の父を疫病で亡くし、維新後に天涯孤独の身となり、17歳で単身渡米。
のちにコーネル大学で学んだ異才は、帰国後にその力量を買われ、井上馨の「官庁集中計画」に参加。
以来、官吏として圧倒的な才能と情熱で走り続ける妻木の胸には常に、幼い日に目にした、美しい江戸の町並みへの愛情があふれていた。
闇雲に欧化するのではなく、西欧の技術を用いた江戸の再興を。
そう心に誓う妻木は、大審院、広島臨時仮議院、日本勧業銀行、日本橋の装飾意匠をはじめ、数多くの国の礎となる建築に挑み続ける。
やがて、数々の批判や難局を乗り越え、この国の未来を討議する場、国会議事堂の建設へと心血を注ぎこんでいくが……。
外務大臣・井上馨、大工の鎗田作造、助手を務めた建築家の武田五一、妻のミナをはじめ、彼と交わった人々の眼差しから多面的に描き出す、妻木頼黄という孤高の存在。
その強く折れない矜持と信念が胸を熱くする渾身作、誕生!

【プロフィール】
木内 昇 きうち・のぼり
一九六七年生まれ。東京都出身。出版社勤務を経て、二〇〇四年、『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。二〇〇九年、早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。二〇一一年、『漂砂のうたう』で直木賞を受賞。二〇一四年、『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。『茗荷谷の猫』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』『光炎の人(上・下)』『球道恋々』『化物蝋燭』『万波を翔る』『火影に咲く』『占』など著書多数。

感想・レビュー・書評

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  • 限られた情報の中での苦労は、想像すらできません。

  • 知り合いの幼馴染ということでこの作家さんのことを知り、幕末の青嵐に続いてこの本を拝読。歴史小説は好きなジャンルということもあり、楽しく読めた。実在の人物が出ると、読んでる時の妄想がフィクション以上に捗る感じがする。木内昇さんの上手さのおかげかもしれないけど。
    歴史的建造物や高いビルを愛でるのは好きだけど、技法には詳しくないので、作中の細かい描写にはついていけなかったところもあった。でも、妻木頼黄やその友人?弟子?意志を継ぐ者達の熱意が文字から伝わってきた。時代に翻弄されつつも自分の意思を持って突き進む男達の話は、シンプルにカッコいいな、と。
    辰野金吾(東京駅の建築家)がすごい自己主張の激しい人扱い(からの悪役?っぽい感じ)されてたのが意外だったけど、国会議事堂と比べると確かに同じ時代に設計された建物とは思えない趣の違いを感じる。建物による主張か、土壌との調和か。どっちが良いってわけでもないとは思うけど、改めて明治大正昭和初期の建築を見たくなった一冊でした。

  • ある時代に生きた男の伝記的な要素もあるヒューマンドラマでしたが、木内昇さんの類稀な文学の才能が発揮された文字通りの文学作品でした。私が現代作家随一の才能と豪語する木内昇作品を、今後とも皆さまどうか評価していただきたいと思います

  • 建築に関わる者として、初心にかえるような気持ちになった。

  • 建築を生業としていながら近代建築の興隆期については全く無知で、教科書の知識しかなかったが、これを読んで明治時代の建築にかける人々の熱い想いが感じられて非常に面白かった。

    明治の近代建築の三巨匠として、辰野金吾、片山東熊、妻木頼黄が挙げられるが、この物語は妻木にスポットを当てている。妻木は在野の建築家ではなく役人建築家であるため、この中では一番知名度が低い気がするが、代表作としては横浜正金銀行本店(現在の神奈川県立歴史博物館)、横浜赤レンガ倉庫、日本橋など現存する建築がいくつかある。
    コスト・工期を守り、なおかつデザインも優れた建築をつくり出す、役人としてプロフェッショナルに徹する姿に感銘を受けた。広島臨時仮議事堂の設計・施工などは神業としか思えない。
    思想的に相容れない辰野金吾とのバトルも熱い!

    設計者にしか分からないであろう微妙の感覚を作者が的確に表現していて、「なんで建築関係者でもないのにそんなことが分かるのか。」と驚いた。

  • 妻木頼黄
    つまきよりなか
    Center of Rigidity 剛心
    17歳で単身貨物船に乗り込んで渡米した後にコーネル大学建築科を卒業し、日本橋の建築や国会議事堂の建築のベースに携わる、信念のある日本の建築家の物語。西洋かぶれで個人のエゴが強い建築家が増えるなか、最新の技術を常に学びつつ、日本人の良さ、江戸の美しさを残しつつアップデートしようしとした、男の話。

  • 良かった〜!建築に詳しい訳では無いけど明治時代の近代化遺産等は見るとテンションあがるので、読んでいて楽しかった♡
    妻木頼黄(つまきよりなか)という名前は知らずに読み始めたが、明治時代のものすごいエネルギーが感じられた。
    天涯孤独の身で17歳で単身渡米、建築を学ぶ為、日本に戻り、工部大学校に入るが、卒業1年前に、再度アメリカのコーネル大学に留学する。江戸の美しい町並みを愛した妻木は、欧化一辺倒の風潮に反発。西欧の技術を取り入れながらも日本の風景に溶け込む建築を目指す。それこそが江戸の再興、さまざまな建物をつくりながら、国の大事を決める国会議事堂の建設を目指す。
    建築家というものがまだまだ認知されていなかった時代に留学しながら学ぶ若き才能たち。辰野金吾をはじめ、さまざまな有名建築家が登場する。
    妻木は職人たちにも気を配り、彼らと共にいい仕事をする事に心掛ける。職人たちにも敬語を使い、情報交換を重ねて、その力を引き出していく。
    独立する才能がありながらも大蔵省のお抱え建築家として奮闘する妻木には夢があった。その夢が何十年もたってようやく再び姿を見せた時、妻木には時間がなかった。最後を託す技術者の事も考える妻木。
    読んでいる間、次々と出てくる有名な建物や橋の名前にワクワク、関東大震災にドキドキ、国会議事堂はどうなるのかハラハラ、などなど。読み終えるのがもったいなかった。

  • 2022.10 まっとうな小説で正攻法。妻木頼黄という建築家の名前は初めて聞いたけれど、永田町・日本橋を通った時に建物をしっかり見てみようと思う。

  • 妻木頼黄は孤高のスーパーマンで、すごすぎて直接感情移入することは難しいのだが、「剛心」たる妻木のまわりで、巻き込まれてがんばる俗な凡人たちが、心を込めてものを作る話。
    しかし、そうやってこそ、「景色」はつくられるのだった。

    今も昔も、業界の大御所による「俺にやらせろ問題」はあるのだし、コンペに良い案が来なくてグズグズになったり、準備が政治的にパァになったりしながら、建築は進むのだ。

  • 主人公妻木について初めて知ったが、こんなにも後世に残る建築を数々も残している人物だったとは。木内さんらしさ全開の作品で、文章が綺麗でとても読みやすく暖かい気持ちになる一冊だった。
    明治建築について、もっと実物や文献で学びたくなった。

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著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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