- Amazon.co.jp ・本 (554ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087734263
作品紹介・あらすじ
『ユリシーズ』へとつながる、ジョイスの半自伝的小説。彼の主人公は神話の発明家ダイダロスの末裔である。あるいはすくなくともダイダロスの末裔であらうとする。鳥でも天使でもない者が飛ぶことができるのは、言葉によつて思考し、表現するからである。ジョイスはイギリスの属国アイルランドの一人の男の子が言葉に執着しながら育ち、やがてキリスト教の信仰から離反し、イギリスの帝国主義からもアイルランドのナショナリズムからも独立し、言葉によつて立つ文学者にならうと決意するまでを、言葉をめぐる問題を中心に言葉で書いた。自由と脱出は飛びかける者の特性である(訳者解説「空を飛ぶのは血筋のせいさ」より)。
感想・レビュー・書評
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難しかったなー!でも自分にとって、難解な作品読んでる感じ、やっぱり好き・・・!
難解だったけども、主人公の青年がいて、宗教とか生活が絡んで芸術について考えていく姿を描いた作品って、個人的にはタイプだと思うので、またいつか読んでみたい!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古典に関しても、キリスト教の教義に関しても、アイルランドの歴史に関しても、聞きかじり程度の知識しかない私のような読者にとって、丸谷才一氏の詳細な訳注は、大変ありがたい。
まずは註を参照することなしに、物語の流れに身を任せようと思ったのだけれど、ついつい下(註)を読んでしまうのであえなく挫折。
19世紀末のアイルランドで、カトリック教徒として成長することは、どのようなものであったのか。
延々と続けられる、地獄の有様に関する説教もだけれど、性欲を満たすことも、そもそも性欲を抱くことすらも重罪とされるなかで、主人公スティーブン・ディーダラスが味わう葛藤の激しさには圧倒される。
原題に込められたジョイスの思いの読み解き、自作のヴィネラル(定型詩)が挿入された意味、そして本書を“言葉による考える若者”の発現であるとする訳者の指摘に、なるほどな~と納得。
A Portrait of the Artist as a Young Man by James Joyce