光の帝国 常野物語

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087742923

感想・レビュー・書評

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  • 前から読んで見たかった恩田陸さんの常野物語シリーズ。不思議な力を持つ一族の短編集だが、登場人物や物語の繋がりがある。

    手紙のやりとりから、徐々に奇妙な人物が浮かび上がってくる「手紙」が、よかった。じわりじわりと見えてくるところがよい。「光の帝国」は、力を持つものの日常と不幸が、「七瀬ふたたび」を思い出させた。
    登場人物達のそれぞれの将来を予感させる感じが、以降のシリーズの展開に期待させてくれる。

  • 常野の一族は代々不思議な力を持っていて…
    短編集ですがどこかリンクしています。SF?スケールの大きい話でした。私は「大きな引き出し」が感動しました。

  • 最初は一本の長編かと思っていたが、短編でまとめられていた。

    個人個人で違う能力を持つ人たち。内容としては違う内容で短編がかかれているが、それぞれの内容が少しずつリンクしていて内容としては短編だがまとまり長編になっているような感じがして面白かった。

    微妙な感度でリンクして描かれているのが好きだった。

  • 不思議な力を宿す「常野一族」・・・
    表題作を含む10編の短編集ですが、1冊すべてが次の大きななにかにつながる「序章」に思えます。

    同じ人物が出てくる短編もありましたが、まだ各話は細い糸でつながっているだけです。
    あとがきまで読み、これは続編があるのか、と腑に落ちました。
    まさに、続編が読みたくなる1冊です。

    お話それぞれは、霧につつまれたまま終わるようなものもあれば、哀しいお話、かすかな希望を感じるお話と、さまざまでした。

    読みながら、萩尾望都さんの「ポーの一族」を思い出しました。
    不思議な力を持つがゆえの戦い、かすかな喜びと同時に深い哀しみ・・・
    特に表題作「光の帝国」は本当に哀しいお話でした。 
    そんな中、最後の短編「国道を降りて・・・」の律と美咲のやりとりが、心をほっとさせてくれました。

    読み終えて、この先の不穏な未来を感じる一方、ひとすじの光、希望のようなものも感じました。
    光となるか、闇となるか、または別のなにかになるのか・・・

    続きをすぐ、探しにいきます。

  • 実は以前に恩田さんの本を読んだ時は、正直“SFホラー”という感じで、私には合わなかったんです。
    本書は“ 不思議な能力を持つ「常野」と呼ばれる一族〜穏やかで知的で、権力への思向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々”という内容に惹かれて読んでみました。
    連作短編なのですが、しょっぱなの「大きな引き出し」で思わず“うるっ”と来てしまってからは、私も「常野」の虜になりました(笑)。
    彼らの他の話も是非読みたいです。

  • 不思議な物語、それぞれの短編が繫がっていて、それぞれがいい話で、読み終わってほっと暖かい気持ちになりました。

  • 常野物語の始まり。
    友人に勧められたのは「蒲公英草子」という本だった。調べてみると、その本は常野物語の上中下の情感ともいえるプロローグ。

    「夜のピクニック」の作者である恩田さん。音楽関係のヒット作もあったはず。

    この作家さんが、描こうと企てたのはある異才を持つ部族の物語。この本は、全く違った主人公が物語を語る短編の語り口で構成されている。後書きにもあったように、その企てが作家本人を苦しめたようだ。

    だが、読者にとっては、何かの予兆ともいえる、小さな震えが、時代や地域を超えて、鳴り始めこれから大きなスケールの音楽を奏でるのではないか?という期待感が膨らんでいく。

    中巻ともいえる、次章が楽しみだ。

  • 高い知性と能力を有する 消えつつある人々に纏わる10編の短編集。最初の「大きな引き出し」がいちばん良かった かな。こういうストーリーは やはり日本を舞台に据えたら難しい面も出てくるので作者の意図が十分生かされたか否か.....

  • 何年も前にこのシリーズは一度読んだことがあり、面白かったということは覚えていたのですが…年を重ね、その頃とは価値観が少し変わっているであろう今読んでも、やっぱり面白かった。

    表題作でもある、光の帝国が一番好きです。哀しいお話ですが、読んでいて本当に、光に溢れた情景が目に浮かびます。そんな雰囲気がとても好きです。

  • 常野物語。と聞いてなにか暖かくかつもの悲しい気持ちになるのは、わたしがこの本を読んだからだろう。当たり前のことと思うかもしれないが、本を読んだときぜひ感じてほしい。タイトルを最初にみた時と最後に見た時とでは、感じ方がこんなにも違うものかと驚くだろう。

    この物語は、短編だが、それぞれの物語、主人公たちが、絶妙なバランスで重なっているのだ。だからそれぞれの物語は一つ一つ完結しているのだが、すべて読み終わったときになにか壮大な長編ものを読み終わったような気分になる。
    常野の人々は、みんなユニークな力をもっている。しかし、それを自慢しようとも、利用しようとも思っていない。みな人のためとひっそり生きている。
    その姿勢がまっすぐで、まぶしくてところどころ胸がつまった。
    また、大変興味をひかれたのは、常野の人々の特殊能力の表現のしかただ。「しまう」「うらがえす」「とおみみ」など、普段なにげなくつかっている言葉もあるが、なにかこの言葉たちを単体でつかうと不思議な感じがする。この物語の雰囲気は、この言葉たちがつくっているといっても過言ではない。そのくらい、この物語は、他の物語にない独自の世界をもっているのだ。
    ぜひ、多くの人にこの世界を旅してほしい。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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