悪者見参: ユーゴスラビアサッカー戦記

著者 :
  • 集英社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087803044

感想・レビュー・書評

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  • ★切り口・熱量とも卓越★前著の「誇り」もストイコビッチの知られざる側面からユーゴの話を導き極めて印象的だったが、本書はさらに上を行く。戦地の混乱を実際に取材した迫力と、そこにサッカー選手の偶像劇という斬新な切り口を組み合わせることで、読んだことのないほど面白い本だった。サッカーを通して民族と国家の曖昧さがひしひしと伝わってきた。

     混乱が起きる前はある選手がどこの民族かは知らなかったケースがある一方で、紛争後はどの国の代表となるかを迫られる。セルビア寄りの書きぶりではあるが、ユーゴの混乱と相互関係が身に染みて理解できた。これだけの仕事を残せると幸せだろうな。

     我が身を振り返ると、ユーゴの混乱について同時代の記憶が完全に欠落しているのが本当に情けない。サッカーは見ていたはずなのに、海外への関心が乏しかったのだろう。

  • 旧ユーゴスラビアが、コソヴォで問題が起こる前から、筆者が現地でその状況を追っている。

    国際的には、「セルビア人=悪」という図式がなりたったが、それほど簡単でもないのが実情であり、筆者がユーゴのサッカーを追っていくうちに、国の民族主義などと自然と相対するところが素晴らしい。

    今となれば、日本語としてのユーゴの歴史的取材文献になるような気がする。民族やサッカーとは?ということを深く考えさせられた。

  • サッカーを通じてユーゴスラビアにおける紛争に翻弄される選手や市民の状況が細かく書かれている。メディアの情報操作が戦争を引き起こす種になることを心に留めておかなければならない。

  • 00年春、サラエボから帰ってきた直後に書店で見つけて、一気に読んだ本。徐々に国家が崩壊して行く様子を、翻弄される1人のサッカー選手を通して描く。

  • (図書館本)「オシムの言葉」でユーゴのサッカーに興味を持ち読みました。背景が複雑だし、選手名やチーム名も全く知らない状態だとややこしく、十分読み込めなかったけれど(なので星マイナス1)、それでも、よくぞ書いてくれた、よくぞ取材してくれた、と著者に敬意を感じたルポルタージュです。読んでいる私でさえも胸が痛くなるような民族問題がサッカーに落とす影の大きさやNATOの空爆の理不尽さに苦しみつつも意地と人としての誇りを失わない選手たちそして関係者たちの姿が感動的。

  • 「俺たちのために踊ってくれ。
    俺たち全員は君らの味方だ。
    ユーゴスラビアよ。いま、唄おう、君たちを」

  • "絶対的な悪者は生まれない。絶対的な悪者は作られるのだ"

    複雑に民族が絡み合っているユーゴスラビアで起こった数々のこと(NATO空爆など)をサッカー選手の視点を通じて書いたルポルタージュ。
    世の中に起こること・人間の営みは、善悪の二元論では片付けられないよなぁと深く考えさせられる1冊。
    家族が空爆の危険にさらされている中、それでもピッチにたってイナット(意地)を見せた、ピクシーやペトロビッチのことを思うと、胸が締め付けられる。

  • 『絶対的な悪者は生まれない 絶対的な悪者は作られるのだ』

  • 絶対的な悪者は作られるのだ。

    アツいです。僕の全てはここから始まったわけです。
    木村さんは今イラク。帰ってきたらいろいろ聞きに行きます。

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著者プロフィール

1962年愛知県生まれ。中央大学卒。ノンフィクションライター。東欧やアジアの民族問題を中心に取材、執筆活動を続ける。おもな著書に『オシムの言葉』(集英社文庫)、『蹴る群れ』(集英社文庫)、『無冠、されど至強 東京朝鮮高校サッカー部と金明植の時代』(ころから)、共著に『さらば、ヘイト本!』(ころから)など。

「2019年 『13坪の本屋の奇跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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