パンと麺と日本人 小麦からの贈りもの

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087811414

感想・レビュー・書評

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  • 人間と小麦の切っても切れない関係!

    説明不要の大ベストセラー「サピエンス全史」を読んだ時に様々な気付きがあったのですが、中でも「農耕に出会って以降、人類は穀物に家畜化された」という視点がショッキングで頭に残りました。農耕により定住し面倒を見続けることが必須になり、食の大部分を穀物に頼った仕組みができあがってしまったと。この理論でいくと地球の覇者は小麦ということになります。そんな小麦がどのような形で人類と(特に日本人と)歴史を歩んできたかをより深く知りたいと思い、この本を手に取りました。

    ただの雑草のひとつだった小麦が人間に見つかり、栽培され加工され、今日では小麦食品が口にされない日はありませんが、世界で主食とされるものとしては小麦をふくむ穀類のほかにイモ類があります。穀類とイモ類をくらべた時に、穀類は同じ量のイモよりもカロリーが高く、そのままだと腐ってしまうイモにくらべて保存もきき(保存ができる=富・財力になる)、計画的・集中的な生産も可能であることから、栄養面、経済面そして社会的にも小麦は人間にとってとても都合の良い食物であり、ゆえにここまで世界的に繁栄したと本書で述べられています。

    しかし都合のいいことだけではありません。小麦はお米のように炊いて粒食することはありません。というのもお米の精米のように完全に胚乳のみにすることが困難なのです。ゆえに小麦粉にして加工することになったのですが、その苦労が人間の文明を進めたといえると本書は語ります。小麦が食品になるまでには、粉挽き、発酵、加熱、といった過程がありますが、粉挽きは技術的な発展(人間の手による粉挽き→風車→機械式ローラー)を、発酵は化学的な発展(酵母菌の発見)をもたらしたと言えます。今日のパンや麺など小麦食品の製造は、産業革命以前より多く、より安定した質で、よりはるかに効率的になっています。いつも立ち寄るコンビニのパンひとつとっても、そこに人類の発展が見て取れます。

    こういった人類史関連の書籍を読むにつけ、人類の進化・発展に感嘆しつつ「人間ってホントに恐ろしいほど欲深い生き物だなあ」と怖くなります。より便利になっていくこのレースはいつまで続くのかなあと漠然と不安になりながらも、私はパンをかじり、立ち食いうどんをすすり、ホワイトソースのパスタをフォークに巻きつけてこれからもお腹を満たしていきます。食後にケーキもあれば嬉しいと思っちゃいますね。

  • 食物とそれに内在する文化の関連を論じた本。なかなか興味深い内容であったと思う。

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著者プロフィール

1928年新潟県生まれ。大阪大学理学部卒業。米国ウースター生物学研究所研究員、東洋食品工業短期大学教授、武庫川女子大学教授を歴任。理学博士 ※2021年3月現在
【主要編著書】たべもの事始(淡交社、1984年)、味の文化史(朝日新聞社、1990年)、パンと?と日本人(集英社、1997年)、食育うんちく事典(建学社、2008年)

「2021年 『食の文化史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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