偽りの歓喜に満ちた世界の滅びが始まった36巻である。いよいよこの長大なシリーズのクライマックスだ。
シンドバッドを含めた聖宮に集う彼らの中で「別次元の神々との同盟」というプランが本格化する中、そうした運命を認めないダビデの反撃から世界はルフへの回帰に向かう。
ここでの描写は、おそらくはキリスト教における黙示録などを模したものだろうが、偽りの歓喜に踊らされる人々と、そんな人々の魂を刈り取る天使と、その両者と対峙せざるを得ないアリババとアラジン。聖宮ではシンドバッドとダビデが相争う中、アラジンをダビデの本体へと送り出したアリババは国際同盟の金属器使いに包囲される。
そんな佳境で物語はクローズしている。世界が滅びの淵に立つ36巻である。
ここでの急激な物語は、これまでの観念的な物語よりはずいぶんと理解しやすいだろう。世界を滅ぼそうというダビデと対決する物語である。
物語次第ではもう二、三巻は続いてもおかしくない展開であるが、この展開から次巻で完結させるところなどは大高さんの手並みの凄みだろうか。と、これはいささか勇み足の感想だろう。
佳境の物語であり、星五つで評価している。