- Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
- / ISBN・EAN: 9784092897762
作品紹介・あらすじ
万能の天才が残した子供たちへのメッセージ
「レオナルドは、少年・少女向きの短い童話をたくさん書き残しています。いずれも鳥獣や魚貝や草木を主人公にして、いくぶん皮肉をまじえ、ウィットとユーモアを織り交ぜた楽しい読み物となっています。自然の真理を探究し、自然の美を愛する精神のみが描けた、珠玉のような作品です」(「裾分一弘 序にかえて 万能の天才、レオナルド」より)。 1975年に発行された同名絵本を没後500年に際し、岸野衣里子さんの画で新たに編集した新版。レオナルド・ダ・ヴィンチが残した膨大なメモ書き、「手稿」の中に書かれていた童話から、イタリアの詩人ブルーノ・ナルディーニ氏が73編を選び、西村暢夫氏と渡辺和雄氏が共訳。裾分一弘氏が監修したもの。500年前に書き残していた貴重なメッセージが甦る。
「自分よりも強いものが、不幸になったのを見てからかっていると、自分も前より酷い目にあうのです」(「罠にかかったツグミ」より)
「一語、一語、厳密な言葉で主人公、話の内容、教訓といった、寓話の核心を表現している」(「ブルーノ・ナルディーニ まえがき」より)
【編集担当からのおすすめ情報】
500年前にレオナルド・ダ・ヴィンチが書き残していた童話&寓話集です。万能の天才は、果たして子供たちに何を伝えたかったのか、果たして本当に子供たちへのメッセージだったのか、など、その謎めいた人生と思考回路の一端に触れることができる貴重な資料です。大人が読んでもためになる一冊です。
感想・レビュー・書評
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「モナ・リザ」や「最後の晩餐」の絵は知られていても、童話作家という一面もあったことはあまり知られていない。
イタリア生まれのレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年~1519年)は、少年・少女向けの短い童話を約200篇ほど残している。
そのうちの73篇を、イタリアの現代詩人であるブルーノ‣ナルディーノ氏が原話の味わいを残しつつ書き換え、西村暢雄・渡辺和雄のふたりの日本人が翻訳したのが本書。
どのお話しにも挿絵が添えられている。時々カラー絵もあってなかなか綺麗だ。
少年・少女向けの形をとって日本で紹介されるのは、この本が最初らしい。
お話しはどれもごく短くあっさりとしている。
1ページ分か、あるいは2ページ分程度。
鳥獣や魚介・草木などが主人公で、どれもちょっとした皮肉とユーモアがある。
やや特殊なのは、レオナルド自身の意見と教訓を含んでいること。
例えば、今でもトスカーナ地方で感動的なお話しとして伝わっているものに、「さらわれたヒワ」という話があるのだが、箇条書きにしてみる。
・・・一羽のヒワが子どもたちのために餌を見つけて帰ってくると、皆さらわれてしまい鳥籠の中で鳴いている。翌日ヒワは毒の餌をとってきて子どもたちに食べさせる。
ヒワは言う。『自由を奪われるくらいなら死んだ方がましです』・・・。
こういった話を、非常に簡潔なメモで残し、ポケットに入るくらいのノートにいつも書き留めていたという。神秘的な「鏡像文字(逆文字)」で、右から左へ書かれる手短かなもの。
検索してみたらかなり不思議な文字で、謎だらけだった。。
それが後に有名な「手稿」と呼ばれるものになり、それを台本にして話す場所や聞き手によって自由に脚色しては語ったらしい。
当時の人々の話題の中心にいつもいたというレオナルドだが、よろしくない評判もあったという。仕事が遅すぎるとか、夢想家だとか。
ところがひとたび口を開いて何か語り始めると、たちまち周囲の人々を魅了したらしい。
黒い帽子に白い髭をたくわえた、自画像を思い出してみてね。
まるで「知の巨人」とでも言うようなあの風貌。あの眼差し。
一体どんな声で、どんな身振り手振りで話したのだろうと、想像は尽きない。
レオナルドが生きた時代からはすでに5世紀が過ぎている。
「人間は創造物の破壊者だ」と言った彼が、今の私たちの暮らしを見たらなんと言うだろうか。
75年に出たものを新たな挿画に変えて編集したという新版。
子どもの頃に読んだきりという方も、ぜひ手に取ってみて。
短いから、寝る前の読み聞かせにも向きそう。
死んでしまったり逃げたり壊れたりという結末が多いのに、不思議と嫌悪感は湧かない。
そこに、レオナルドの温かいメッセージを受け取れるからだろう。 -
メレコーフスキイ「レオナルド・ダ・ヴィンチ ー神々の復活」、カニグズバーグ「ジョコンダ夫人の肖像」に続きダ・ヴィンチもの、これはダ・ヴィンチ自身が子供たちに向けて書いた童話集。動物や鉱物を主体として、教訓を伝えようとしている。
ダ・ヴィンチの時代は、古代美術復活の時代でもあり、しかし残酷な魔女狩りや宗教裁判も行われ、王侯貴族の権力闘争や外国どの戦争もあった。
この童話の中には「人を笑いものにしたら自分のほうが脱落する」「自分が助けられることに気が付かずに慢心すると結局自分が滅びる」などといった教訓が含まれているが、これらは時代背景などを考えるとまさしく”身を滅ぼした”人はたくさんいたのだろう。
収録されている作品たちは、地域に伝わっている昔話などもともとの話があるものもあるし、おそらくダ・ヴィンチが独自に作ったであろうもものある。
科学者、芸術家のイメージが強いダ・ヴィンチだが、話もうまかったということ。おそらく多才のため一つの事柄から全く別の事柄を無理なく組み合わせて聞き手が思いもつかないような一つの話にしてしまうという才があったあるのではないだろうか。
印象に残った話をいくつか。
インクに汚された紙は文句を言った。しかし人間が残しておいたのは、ただ真っ白な紙ではなく、大切な言葉が書いてる紙だった/紙とインク
愛は悪いことや汚いものを見つめません。正しいことや美しいことを見つめて、それらが苦しんでいるときにこを燃え上がります。/王様とヒバリ
ヒワの雛たちが人間に捕まり鳥籠に入れられた。母鳥は自分の子供達に毒入りの餌を食べさせる。そして言う。「自由を奪われるくらいなら、死んだほうがましです」/さらわれたヒワ
美しい木は、自分を支える汚い棒や自分の周りに生えている棘のある茨が気に入りません。しかしトカゲは「支え棒や茨があるからあんたはまっすぐたっていられるんだぜ。そんなこともわからないのかい」というのでした。/トカゲの忠告
漁師の網に捕まってしまう魚たち。生き残った魚たちは協力しあい網と戦う。それは自分たちの自由と平和を取り戻すための戦いだった。/戦う魚
一話の蝶が美しい炎に近づきます。まさかこんなに美しいものが自分の羽を焼き、蝋で自分を溶かすなんて!けれどランプは言います。「お馬鹿さんはあなたよ。何も知らずに近づくからよ」/蝶とランプ
オオワシは太陽から目をそらさず真っ直ぐ飛ぶ。死を悟ったら空高く舞い上がり、羽を焼きつくして水に落ちて再生する。これがオオワシの定めであり、だからこそ尊敬されるのだ。/オオワシが教えたこと -
マルチな才能を持つ天才、レオナルド・ダ・ヴィンチが書いた童話。
たくさんの短い童話が綴られてます。
装丁と。
丁寧な訳と選ばれた言葉たちが全部美しい。
マザーグースやグリム童話を思わせるような、風刺やニヤっとしてしまうような辛口の童話が多め。
トスカーナの自然に溶け込んで子供時代を過ごしたレオナルドに少し寄り添える気持ちになります。著者の観察眼や自然を愛する心が印象的な本。 -
図書館で目にとまり迷わず借りて読みました。
ダヴィンチって本当に多才ですね。
1話1話がかなり短く、すぐに読めて幼児から理解できるけど、内容は深く哲学的ですね。
装丁も美しく、飾っておくのにもピッタリ(笑)
子どもが思わず手を伸ばしたら、しめたもの。
どの話も「あなたはどう思う?」と哲学的会話が生まれるんじゃないでしょうか。 -
3.5
2023.06.16 -
素敵な装丁に惹かれて手にとった本。ダ・ヴィンチといえば「モナ・リザ」で画家のイメージくらいしかなかったけど、こんなにたくさんの童話を残しているとは驚きました。解説も興味深く読んだ。勉強になります。
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「え? ダヴィンチって、童話なんか書いてるの?」
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レオナルド・ダ・ヴィンチの童話』大人のイソップ的な。皮肉とユーモアで真理をついてくる。ハッとしたりギクっとしたりニヤっとしたり。それでいてなんだかおしゃれな本。時々開いて確認したい。自分は大丈夫かなって。戒めに、遊び心に。
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童話の内容は短く、お子さんにでも簡単に読むことのできるお話でした。
登場してくるものは動物や植物、物が多く、人が出てくるシーンはありますが、あまり、表には出てこない印象です。
お話の内容は淡々としているのにオチまで読み終わったときに色々と考えさせられるものが多かったです。
翻訳、監修された方の話も載っており、なぜレオナルドが童話を残したのか?などの考察も少しですが、載っていました。
おお、童話がお好きであればそれだけでOKです!
辛口の評をたまにお見かけするので、つい
心配してし...
おお、童話がお好きであればそれだけでOKです!
辛口の評をたまにお見かけするので、つい
心配してしまいました(^^;
私は、どうにも褒められない本はそもそも載せません。
載せると決めたら、良い点を褒めることにしています。
なので、私が☆五つでも、他の方にはどうかなぁと考えてしまいました。
スマホでメモは私もやっていますよ。
スケジュールが入った段階ですぐ入れて、半年分くらいいつも入っています。
ただ、持ち歩く習慣がないのです。荷物は殆ど持たないので。
小さなノートを買って、メモする癖をつけようかと考え中です。
こちらも読みました!
レオナルド・ダ・ヴィンチは自然や人を見てメモ取りながら、そのメモの隅にちょこちょこっと...
こちらも読みました!
レオナルド・ダ・ヴィンチは自然や人を見てメモ取りながら、そのメモの隅にちょこちょこっとお話も記していたのかななんて考えますね。
ダ・ヴィンチのメモ方法な「神々の復活」でも書かれていました。(それを読んだ梅棹忠夫さんがメモ術を考えてゆき「知的生産の技術」で書かれてる)
でもダ・ヴィンチ生前には、彼が書いたものは印刷されなかったということ。それを今我々が読んでいるんですね。
おお、こちらも読まれたのですね!なんと素晴らしい!(^^)!
この本もレビュー数がとても少ないので、お仲...
おお、こちらも読まれたのですね!なんと素晴らしい!(^^)!
この本もレビュー数がとても少ないので、お仲間が増えたようで嬉しいです。
これで淳水堂さんはダ・ヴィンチ検定一級取得ではないでしょうか・笑
そうなんですよ、生前には何一つ世に出なかったのです。
それをこんなに時を経てから私たちが読んでるということに、不思議な気がしてきます。
私の小さい頃は、お年寄りがああいう話をいっぱいしてくれました。
私もストックをたくさん抱えて、自在に引き出せたらと思います。
淳水堂さん、ありがとうございました!