ガリバーのむすこ

  • 小学館
3.86
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本棚登録 : 99
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784092906464

作品紹介・あらすじ

難民少年が見つけた幸せとは? もうだめだ。刻一刻とボートは海に沈んでいく。ひとり、またひとりと、ボートから海に投げ出されて、まもなく自分の番が来る。―――海に投げ出された難民少年オマールが、目をさましてみるとそこは、ガリバーが流れついた小人の国リリパット国でした。リリパット国の住人は、少年をガリバーの息子と思い歓待します。時間が経つにつれ、少年オマールはリリパット国で、友情をはぐくみます。一方で、オマールは、離ればなれになってしまった家族が恋しく、毎晩、夜空に浮かぶ星を見ながら、お母さんに話しかけていました。少年オマールは、このままリリパット国で、平和に暮らすことができるのでしょうか?お母さんとは再会できるのでしょうか・・・。 【編集担当からのおすすめ情報】 戦争を描いてきたモーパーゴの新作。今回も、難民問題や、平和についてが、物語の根底にテーマとして流れています。しかし、「少年が流れ付いた島は小人の国リリパットだった」という設定で、ユーモラスかつユニークに描かれた冒険物語です。

感想・レビュー・書評

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  • 母さんと別れ、アフガニスタンをボートで出国しイギリスに向かうはずだった少年オマール。
    海に投げ出され気がつけば、リリパット国にいた。
    ガリバー旅行記と現代の難民移民の話をミックスさせたような物語。リリパット国とブレフスキュの争いに関する章では、現代世界の風刺が書かれている。

    少年の目で冒険を楽しみつつ、問題提起しているところがイイ。

    #小学生

  • 母さんと別れ、ボートに乗り込んだ難民の少年オマールがたどり着いたのは小人の国だった。そこは、300年前に「ガリバー」が訪れたリリパット国で……。とびきり楽しいお話の中に平和を実現するための鍵を閉じ込めた、今読んでおきたい作品。子どもたちにぜひ手にとってほしい。

    「まるで病原菌のように、戦争はあらゆる人間をほろぼす。その病気を治療する薬は善意と思いやりと理解しかないと、ガリバーはいっていました。」

    ーーーーーーーーーー

    奇想天外な設定で面白さを出した賑やかな話なのかなぁと思いながら手にとったが、さすがマイケル・モーパーゴさん。面白さの中に心にズシリと響くものを描いている。特に、リリパット国とブレフスキュ国の間に平和の橋をかけたガリバーの力の込もった言葉と行動は、今まさに世界が直面している問題と重ねながら読まざるをえず、ぐいぐい引き込まれた。

    「難民」であるアフガニスタン人の主人公オマールが抱える寂しさや困難も身に沁みる。だからこそ、「帰る家のある幸せ」や「家族と共に暮らせる幸せ」を確かに実感することもできた。母と同じボートに乗れずに別れなければいけない序盤の場面は胸が痛むが、それがクライマックスの幸せにしっかり結びついていくところもいい。

    手こぎボートで単独世界一周に挑戦するジェイジェイに助けられたオマールと小人たちが、摩訶不思議な体験を後日談としてジェイジェイに語る構成もとても楽しい。第4章までが後日談。そしていよいよ第5章で、ジェイジェイとともに、オマールのこれからの人生を切り拓いていく場面に立ち合うことができたのは嬉しい体験だった。

    「わたしたちは、おたがいのことを思って生活しなくちゃいけない、そうですよね?」とジェイジェイが語る場面は、そこまで読み進めてきた読者にしかわからない重みがあった。

  • アフガニスタンに住んでいる少年オマール。平和な毎日は戦争によって破壊され、オマーンと母さんは、イギリスに住んでいるおじさんのところへ行こうと決意する。しかし、なけなしのお金でボートに乗れたのはオマールだけ。母さんと離れ離れになって海に出て、そのボートは転覆。気がつくと、オマールの周りにいたのはたくさんの小さな人たちだった……。

    モーパーゴの現在の関心が前面に出た作品だなと思った。戦争にまつわる作品を多く書いているモーパーゴは、近年アフガニスタンの難民が登場する作品をいくつか書いている。本作のきっかけになったのは、『ガリバー旅行記』の語り直しを依頼されたからということだが、過去には『オズの魔法使い』の語り直しもしている。

    戦争の物語は読んでいてつらすぎることもあるが、名作と合わさることでとても読みやすく、それでいて感動的な物語になっている。

    かつてリリパット国に平和をもたらしたガリバー。再び戦争が起こりそうになったときに、オマールが現れたのは運命としかいいようがないし、それが戦争のひどさを身をもって体験しているオマールだったからよかったと言える。
    体の大きさがちがっていたって、お互いを大切にしていっしょに暮らすことができるのに、どうして小さな違いばかりを気にして戦わなくてはいけないのか?そんなふうに考えさせられる作品。

  •  アフガニスタンで家族で幸せに暮らしていた10歳の少年オマール。戦争が始まり、父を失い、妹の行方もわからなくなる。そして母と二人でイギリスに住むサイードおじさんを頼るために海を渡る決意をする。しかし二人一緒にはボートに乗ることができず、オマールがまず先に出発することになった。嵐がやって来てボートを激しく揺さぶり、人々はどんどん海中に投げ出されてしまう。
     気が付いた時には、オマールは砂浜に寝かされて体の自由が奪われていた。ガリバーのように。そこは「リリパット国」、本当にガリバーが流れ着いた小人の国だったのだ。
     面白い発想と展開で、最後まで楽しく読むことができた。マイケル・モーパーゴの作品なので安心感もあった。この作品は「ガリバー旅行記」の語り直しを頼まれたことにより生まれたというが、私も是非読み直そうと思った。

  • 普通の人間と小人が仲良く暮らしているなんて、夢みたいな話だったけれど、小人の説明が詳しかったり、現実の話(難民キャンプなど)と空想が組み合わされたりしていて、話が伝わりやすく、まるで本当にあったお話のように感じました。

  • 主人公が流れ着いたのはかのガリバー王国で有名な小人の国。小人たちは少年をガリバーの息子だと思いもてなす。主人公は小人の国で楽しく暮らすのか、元の暮らしを選ぶのか。

  • 5.6年。ガリバー旅行記からの、現実アフガニスタンに住んでいた僕が戦争によって難民になり、ガリバーのむすこに勘違いされる話。表紙の絵の展開も最後も素敵。
    戦争を絡めたモーパーゴさんの話は本当にさらりと深い。

  • アフガニスタンから命からがら逃れてきた少年が辿り着いたのは、ガリバー伝説が伝わる小人の島。

    海上で出会った女性に向けて、今までに起きたことを語る形で物語が進められるせいか、臨場感が足りないような気がしてしまいました。

    「最後のオオカミ」
    「アーニャは、きっとくる」
    が素晴らしかったので楽しみにしていたのですが...

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著者プロフィール

1943年英国ハートフォードシャー生まれ。ウィットブレッド賞、スマーティーズ賞、チルドレンズ・ブック賞など、数々の賞を受賞。作品に『ゾウと旅した戦争の冬』『シャングリラをあとにして』『ミミとまいごの赤ちゃんドラゴン』『図書館にいたユニコーン』(以上、徳間書店)、『戦火の馬』『走れ、風のように』(ともに評論社)他多数。

「2023年 『西の果ての白馬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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