罪喰い (P+D BOOKS)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 76
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093522779

作品紹介・あらすじ

夢幻が彷徨い時空を超える赤江瀑珠玉の6編

週刊誌の告知板に、建築家・秋村黒人が<罪喰い>という死者儀礼についての問合せを出していた。

それを見た京都の精神科医・水野は、2年ほど前に奈良・高畑の新薬師寺本堂前で出会った青年を思い出す。水野が持っていた伐折羅大将とよく似た木彫像裏の「都美波美黒人」の字を「罪食み黒人」と読めると話した青年が、その建築家だと思った彼は手紙を送る。

しかし、突然訪ねてきた秋村はあの時の青年とは全くの別人だった……。<罪喰い>という魔の言葉に取り憑かれた新進建築家の混迷を描く表題作は、第69回直木賞候補となっている。

「花夜叉殺し」は、主人公の亡き母の記憶と重なる物語。月明かりの夜にこそ幽玄の魅力を秘めた銀閣寺の庭と、一方、香花木で埋め尽くされた屋敷の絢爛たる庭とを対比しながら、庭の魔性に惑わされた若い庭師の惨劇が描かれている。ほかに赤江瀑初期の代表的短編「獣林寺妖変」「ライオンの中庭」「赤姫」「サーカスの花鎮」を収録。

解説は幻想文学研究の第一人者・東雅夫氏。

感想・レビュー・書評

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  • 短篇集『罪喰い』に『獣林寺妖変』を加えた濃い一冊。
    愛憎のどろりとした世界なのに醜悪さよりも美しさが勝る、独自の世界を堪能できました。
    短篇集『罪喰い』が未読だったのでこの本の出版は有難かったです。赤江作品がもっと出ると嬉しい。

    『獣林寺妖変』の出だしは何度読んでも強く惹き込まれます。世界に一気に引きずり込まれる感覚がたまりません…。

  • 芸道に生きるものたちがその途上で魔に呑まれ、過去の因縁に翻弄されていく。積み上げてきたものを振り捨て、あるいは一変せしめる抗いがたい衝動みたいなものが、読んでいてこちらにまで滲み出してきて昂ぶってくる。舞台の美しさに対する登場人物たちの背徳的な行いが、くっきりと陰翳を浮かび上がらせるかのようだった。
    どの作品においても男性同士の絡み、あるいはそれをほのかに匂わせるような描写が出てくるのが印象的。この点はやや読んでいて気恥ずかしくなってしまうのと、オチでスンッと呆気なく終わる点も物足りなく感じてしまった。

  • 赤江瀑の妖美で端麗な幻想的ワードセンスが目眩する程に耀く短編集。表題作「罪喰い」や電子版のみ追加された「獣林寺妖変」も勿論名作だが、それ以上に花香ただよう庭の魔力に翻弄される「花夜叉殺し」が酔わされる大傑作。

  • 赤江瀑は読みたいなと思ったときにはすでにほとんどの本が入手困難になっていて残念に思っていたところP+D BOOKSからこれが!ただ紙の本派にとっては買える書店が限られてるのがちょっと面倒なんですけどね。かさばるので持ち歩けないのもネックだけど、良心的価格でいろんな絶版本が読めるのは嬉しい。

    さて本書は短編集。基本的には耽美な伝奇ミステリーみたいな雰囲気の作品が多かったけれど、謎解き部分はたぶんそんなに重要視されていなくて、どちらかというと人間の情念とか官能とかドロドロしたものがクローズアップされていた印象。「獣林寺妖変」と「赤姫」は歌舞伎役者、「ライオンの中庭」はバレエダンサー、「サーカス花鎮」はタイトル通りサーカスのぶらんこ乗りが登場し、芸能に関わる世界の話が多いのも特徴。あとは近親相姦と男色モチーフ。

    どれも面白かったけど、奇妙な庭に取りつかれた庭師の異母兄弟の「花夜叉殺し」が、本当に花の匂いがしてきそうで好きでした。「罪喰い」と「獣林寺妖変」もインパクト強かったけど、この素材ならもっと長編で読みたかったかも。

    ※収録作品
    「罪喰い」「花夜叉殺し」「獣林寺妖変」「ライオンの中庭」「赤姫」「サーカス花鎮」

  • 何気にマニアックなタイトルを出しているP+D BOOKSだが、まさか出るとは思わなかった、赤江瀑。
    第2短編集『罪喰い』に『獣林寺妖変』を加えた、かなり『濃い』構成になっている。どちらもかなり初期の短編だが、当時から著者が題材にしていた事柄は一貫していて、特に歌舞伎を扱ったものは独特の魅力があると思う。
    赤江瀑に関しては復刊して欲しいものが多すぎるので、P+D BOOKSがせっせと出してくれるといいのだが……。

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著者プロフィール

1933年下関生。日本大学芸術学部中退。70年「ニジンスキーの手」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。74年『オイディプスの刃』で角川小説賞、84年『海峡』『八雲が殺した』で泉鏡花文学賞。2012年没。

「2019年 『オイディプスの刃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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