東京輪舞

著者 :
  • 小学館
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感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093801065

作品紹介・あらすじ

日本裏面史を「貫通」する公安警察小説!

昭和・平成の日本裏面史を「貫通」する公安警察小説!

かつて田中角栄邸を警備していた警察官・砂田修作は、公安へと異動し、時代を賑わす数々の事件と関わっていくことになる。
ロッキード、東芝COCOM、ソ連崩壊、地下鉄サリン、長官狙撃……。
それらの事件には、警察内の様々な思惑、腐敗、外部からの圧力などが複雑に絡み合っていた――。

圧倒的スケールで激動の時代の暗闘を炙り出す、前人未踏の警察大河ミステリー!

感想・レビュー・書評

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  • 読みごたえあり。
    大好きな警察小説なので、ちょっと僕の評価も甘いかも。

  • どの社会でも内部での意見の対立は有るものなんですね。
    警察内でも例外ではないという事が分かります。
    忘れられない事件が多く、この時代を思い出しながら読みました。
    田中角栄、注目され本屋に並んだ本を読んだ事も思い出しました。

  • 月村作品らしい、日本で発生した事件を追う公安刑事を通して見た昭和・平成裏面史小説。公安刑事とKGBの美人スパイとの騙しあいの中に生まれる愛情を縦糸に、次々と発生する事件・事故・天災に立ち向かい浮かび上がる、一般市民には計り知れない驚愕の真実を横糸に、公安刑事の一代を通じてあの時代を振り返る体裁。プロットもよく練られていて、とても週刊誌連載とは思えない完成度。唯一気に食わないのはタイトル。「輪舞」はいいとは思うが「東京輪舞」ではない気がする。

  • 昭和平成に起きた実際の事件が題材ということでどこまでが事実なのかという興味をもって読み始めました。読後感としては非常に骨太な作品で実直な主人公の不遇な半生に唸りました。一連の事件を通して一人の警察官の視点で激動の時代を再構成する着想はすばらしいと思います。個人的には阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が立て続けに起きたという事実に驚きを感じました。

  • 著者初読み。
    砂田と言う一人の公安刑事を通じて、昭和から平成にかけての重大事件を振り返る作品。
    田中角栄のロッキード事件、東芝COCOM事件、オウム真理教の起こした数々の事件など、史実とフィクションが入り混じっているので、時代を振り返りつつ、懐かしさと境目の不自然さにもやもやした感じが常につきまとう。
    そして公安や外事を舞台にした作品にしては、主人公・砂田の詰めの甘さが目立ち、その部分が悪く目立っていたのが残念。
    平成と言う時代が終わり、昨年、オウムの死刑囚全員に死刑が執行されたことまで描かれており、自分の心の中で感じていた「一つの時代が終わる」と言う感覚を代弁してくれているかのような作品であったことは間違いない。

  • 月村了衛『東京輪踊』、最高だった。ノンキャリアの公安警察員から見た、昭和・平成事件史……というと、NHKスペシャル的な小説をイメージするかもしれない。確かにそういうノリもあるんだけど、どちらかというと自分は山田風太郎の明治物を連想した。

    実在の人物が登場し、主人公と絡む感じ。組織の論理に抵抗するが、決して勝てない個人。その組織の思惑すら、歴史の流れの中にむなしく飲み込まれていくというテーマ性。もう、「警視庁草紙」じゃないか!

    劇中で突発的に起きる「ある事件」は、史実なのでそれが起きるのはわかっているんだけど、それでも衝撃的だった。思わず「うお」と、声が出るレベル。同じ年に起きたもう一つの事件を話の中心にしつつも、この事件に触れたことに、著者の時代認識の正しさを感じる。本当に、底が抜けた年だった。

    また、主人公の妻を通して、女性の社会進出にそれとなく触れているのがすばらしい。主人公の妻は、男女雇用機会均等法の第一世代にあたる。古い価値観をひきずった不器用な男性。家庭に収まるか、いわゆる「バリキャリ」になるかという二択しかモデルケースがなかったころの女性。両者のすれちがいが、悲しい。

    ぼくたちが知っている(なんなら体験している)事件でも、物語というフィルターを通して語り直されることで「こういう事がありえたかもしれない」という別の意味づけがされ、現実の新たな可能性が提示されていく。その新たな可能性が、いま・ここの現実を逆照射する。その感覚を味わえるのが、こういう小説を読む醍醐味なんだな。

    主人公の平成という時代への回顧はしみる。タイトルに関連する「仕掛け」も、ぐっときたな。こういう小説が、現代を舞台に書けるのはすばらしい。ベタな感想だけど、NetflixやAmazonで予算をたっぷりかけて、当時の街並みとか再現した上でドラマ化してほしいな。

    同じ著者の昭和史裏面物である『悪の五輪』(すばらしいタイトル!)も読んでみよう。

  • 日本を揺るがした、さまざまな事件。
    公安は何を知り、どう動いていたのか?
    昭和から平成の事件をえがく、警察小説。
    最初は、歴史上の出来事、という感じだけれど、だんだんとリアルタイムで見聞きした事件に。
    当時を思い出す、生々しい感覚がある。
    フィクションだけど、ノンフィクションのような臨場感。

  • 週刊ポスト2017年21号〜2018年30号連載のものに大幅な加筆修正をして、2018年10月小学館から刊行。1976年から2018年に渡る砂田修作とスパイのクラーラの大河小説です。大河だなぁと感心しました。

  •  著者作品は二作目。
     世代が近いので(著者は1963年生)、昭和から平成にかけて起こった事件、それぞれの感慨が近しい気がする。なにより、本書で、“昭和平成裏面史を「貫通」”(本書帯より)して描いたことで、主人公に述懐させている気持ちが、非常にしっくり来たのには驚いた。曰く、

    「なぜだろう。平成が終わるというより、昭和という時代の残照がいよいよ薄れ、真に終わろうとしているかのような気分がある。」
    「自分が体感する答えはただ一つ ― 平成などなかったということだ。」

     社会人として過ごした時代でもあり、平成生まが25%を超えた今、「なかった」などと言っては”平成”に失礼とは思うが、本書の主人公(つまり著者)の感慨に触れて、そうだよなあ、と思わず心の中で呟いた。

     警察官からやがて公安警察となる主人公砂田修作は、著者や自分たちより一つ上の世代だ(団塊の世代と言っていいのかな?)。
     警察官になって5年目に、田中角栄宅の警護にあたっている時代(1974年)から物語は始まり、以下の事件を現場で体験していく。どれもが、覚えのある出来事であり、自分自身も、少なからぬ影響を受けた事件もある。

    1976年 ロッキード事件
    1986年 東芝COCOM事件
    1991年 ソ連崩壊
    1994年 オウム真理教(地下鉄サリン事件ほか)
    1995年 圀松警察庁長官狙撃事件
    2001年 金正男訪日事件

     主人公は、事件の当事者ーというには語弊があるがー公安の職員としての立場から各事件に濃密に絡んでいくのだが、所詮は、狂言回し的な役割に過ぎず、また砂田ら公安が解決してくわけでもなく(迷宮入りの事件もある)、彼らの奮闘は徒労に終わることが多い。
     故に、各事件、その時代背景を懐かしく振り返るには格好の読み物だが、サスペンスとしては、どの章も尻切れトンボで終わってしまう感が否めず。ヒッチコック的な「巻き込まれ型」でもないが、砂田ら、および終生の敵として相対するKGBのクラーラの存在も、事件の真相の周りで空転しているに過ぎない(結果論としてだけど)。 2,3章で、それに気づけたので、あとは、それなりに当時の時代感を楽しむことにしたけどね。

     その中で、1995年の圀松長官狙撃事件は、いわゆる刑事と公安の確執がうまく描かれていて、また、それまでに主人公に絡んできた登場人物の存在がきちんと回収されていて面白かった。この1995年編が本書のハイポイントだ(という点では、以降の2001年あたりは、もう蛇足っぽい話だ)。

     そんなこんなで、なんとか平成の最後まで事件を繋ぎ(苦し紛れの感は大いにあり)、上述の感慨を吐露するに至る。それなりのカタルシスは味わえた。

     初っ端の1976年のロッキード事件から、暗躍するKGBクラーラ・ルシノーワが、常に砂田のダンスのお相手だ。故に、要所要所で、ロシアの格言や、古典からの名言の引用があるのだが、それ、ロシア人でもあまり使わない(知らない)だろうというものが引っ張り出されている感があり(物語の進行上、使いたかったのだろう)、素人臭いのはタマニキズ。
     ま、そもそも、事件ありきで、そこに一警察官を、いかに「巻き込んでいくか」という後付け方式で構想されたであろう物語なので、筋立てそのものに深みも乏しく、思い付きが目立つ。
     角栄ではじまり、真紀子で〆たと作者として得心してそうなところも見て取れるようで、なんだかな感もあった。いわゆる大衆小説の域か。
     ま、十分、楽しめたけどね。

  • 個人的には大ヒット。とても面白かった。
    昭和から平成、そして令和に変わるまでの間にあった大きな事件を、防諜の視点から公安や警察組織、日本社会や国際情勢まで絡めて見ていくので、1つ1つのエピソードがとても濃い内容になっていて、重厚感があります。

    とにかく主人公が負け続けます。ですが、とてもカッコいいです。
    必死で戦い、あと一歩という所でどうしようもない大きな力に叩きのめされる主人公の姿を通じて、現在の社会の無力感を表現しているのだと思います。

    昭和生まれの人は感じているのではないでしょうか。「令和」に変わるとなった時、「平成」という時代はなかったと。「昭和」のエネルギーをただ消費していくだけで、不燃物だけが溜まり続けた時代だと。この「令和」はその社会の転換期にしなければならないと。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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