- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093801065
作品紹介・あらすじ
日本裏面史を「貫通」する公安警察小説!
昭和・平成の日本裏面史を「貫通」する公安警察小説!
かつて田中角栄邸を警備していた警察官・砂田修作は、公安へと異動し、時代を賑わす数々の事件と関わっていくことになる。
ロッキード、東芝COCOM、ソ連崩壊、地下鉄サリン、長官狙撃……。
それらの事件には、警察内の様々な思惑、腐敗、外部からの圧力などが複雑に絡み合っていた――。
圧倒的スケールで激動の時代の暗闘を炙り出す、前人未踏の警察大河ミステリー!
感想・レビュー・書評
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読みごたえあり。
大好きな警察小説なので、ちょっと僕の評価も甘いかも。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どの社会でも内部での意見の対立は有るものなんですね。
警察内でも例外ではないという事が分かります。
忘れられない事件が多く、この時代を思い出しながら読みました。
田中角栄、注目され本屋に並んだ本を読んだ事も思い出しました。 -
月村作品らしい、日本で発生した事件を追う公安刑事を通して見た昭和・平成裏面史小説。公安刑事とKGBの美人スパイとの騙しあいの中に生まれる愛情を縦糸に、次々と発生する事件・事故・天災に立ち向かい浮かび上がる、一般市民には計り知れない驚愕の真実を横糸に、公安刑事の一代を通じてあの時代を振り返る体裁。プロットもよく練られていて、とても週刊誌連載とは思えない完成度。唯一気に食わないのはタイトル。「輪舞」はいいとは思うが「東京輪舞」ではない気がする。
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昭和平成に起きた実際の事件が題材ということでどこまでが事実なのかという興味をもって読み始めました。読後感としては非常に骨太な作品で実直な主人公の不遇な半生に唸りました。一連の事件を通して一人の警察官の視点で激動の時代を再構成する着想はすばらしいと思います。個人的には阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が立て続けに起きたという事実に驚きを感じました。
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著者初読み。
砂田と言う一人の公安刑事を通じて、昭和から平成にかけての重大事件を振り返る作品。
田中角栄のロッキード事件、東芝COCOM事件、オウム真理教の起こした数々の事件など、史実とフィクションが入り混じっているので、時代を振り返りつつ、懐かしさと境目の不自然さにもやもやした感じが常につきまとう。
そして公安や外事を舞台にした作品にしては、主人公・砂田の詰めの甘さが目立ち、その部分が悪く目立っていたのが残念。
平成と言う時代が終わり、昨年、オウムの死刑囚全員に死刑が執行されたことまで描かれており、自分の心の中で感じていた「一つの時代が終わる」と言う感覚を代弁してくれているかのような作品であったことは間違いない。 -
月村了衛『東京輪踊』、最高だった。ノンキャリアの公安警察員から見た、昭和・平成事件史……というと、NHKスペシャル的な小説をイメージするかもしれない。確かにそういうノリもあるんだけど、どちらかというと自分は山田風太郎の明治物を連想した。
実在の人物が登場し、主人公と絡む感じ。組織の論理に抵抗するが、決して勝てない個人。その組織の思惑すら、歴史の流れの中にむなしく飲み込まれていくというテーマ性。もう、「警視庁草紙」じゃないか!
劇中で突発的に起きる「ある事件」は、史実なのでそれが起きるのはわかっているんだけど、それでも衝撃的だった。思わず「うお」と、声が出るレベル。同じ年に起きたもう一つの事件を話の中心にしつつも、この事件に触れたことに、著者の時代認識の正しさを感じる。本当に、底が抜けた年だった。
また、主人公の妻を通して、女性の社会進出にそれとなく触れているのがすばらしい。主人公の妻は、男女雇用機会均等法の第一世代にあたる。古い価値観をひきずった不器用な男性。家庭に収まるか、いわゆる「バリキャリ」になるかという二択しかモデルケースがなかったころの女性。両者のすれちがいが、悲しい。
ぼくたちが知っている(なんなら体験している)事件でも、物語というフィルターを通して語り直されることで「こういう事がありえたかもしれない」という別の意味づけがされ、現実の新たな可能性が提示されていく。その新たな可能性が、いま・ここの現実を逆照射する。その感覚を味わえるのが、こういう小説を読む醍醐味なんだな。
主人公の平成という時代への回顧はしみる。タイトルに関連する「仕掛け」も、ぐっときたな。こういう小説が、現代を舞台に書けるのはすばらしい。ベタな感想だけど、NetflixやAmazonで予算をたっぷりかけて、当時の街並みとか再現した上でドラマ化してほしいな。
同じ著者の昭和史裏面物である『悪の五輪』(すばらしいタイトル!)も読んでみよう。 -
日本を揺るがした、さまざまな事件。
公安は何を知り、どう動いていたのか?
昭和から平成の事件をえがく、警察小説。
最初は、歴史上の出来事、という感じだけれど、だんだんとリアルタイムで見聞きした事件に。
当時を思い出す、生々しい感覚がある。
フィクションだけど、ノンフィクションのような臨場感。 -
週刊ポスト2017年21号〜2018年30号連載のものに大幅な加筆修正をして、2018年10月小学館から刊行。1976年から2018年に渡る砂田修作とスパイのクラーラの大河小説です。大河だなぁと感心しました。
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個人的には大ヒット。とても面白かった。
昭和から平成、そして令和に変わるまでの間にあった大きな事件を、防諜の視点から公安や警察組織、日本社会や国際情勢まで絡めて見ていくので、1つ1つのエピソードがとても濃い内容になっていて、重厚感があります。
とにかく主人公が負け続けます。ですが、とてもカッコいいです。
必死で戦い、あと一歩という所でどうしようもない大きな力に叩きのめされる主人公の姿を通じて、現在の社会の無力感を表現しているのだと思います。
昭和生まれの人は感じているのではないでしょうか。「令和」に変わるとなった時、「平成」という時代はなかったと。「昭和」のエネルギーをただ消費していくだけで、不燃物だけが溜まり続けた時代だと。この「令和」はその社会の転換期にしなければならないと。