金米糖の降るところ

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863100

感想・レビュー・書評

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  • 江國さんは何かの記事で、
    人の中にある孤独感をかききりたい
    的なことを言っていた。

    これがとても印象的だった。
    読んだ時、私が知っている孤独感は、今のそれとはずいぶん浅いものだったし、孤独って嫌だなと思っていた私も、嫌な部分も全て受け止めて生きていくんだなぁ・・・と、孤独を自分の中に取り入れて始めた実感がある。

    せっかく孤独を自分の中に取り入れるんだったら、江國さんのように美しく取り入れたいと願う。

    佐和子は達也との間に彼女自身が抱えていた孤独感を、田淵とは抱えていなかったのかな。
    メインの男(この場合達也)との孤独を美しく見せつつ、次の男(実はこちらがメイン)との時間を描きながら、孤独も見れたらよかったけど。
    じゃないと、孤独を感じない男によりそってる?ってことになっちゃう気がして。

    人は多分、誰といても孤独を感じるんだと思う。
    私はそれが嫌で嫌で仕方がなかった。
    けれど。
    孤独を感じる一方で、孤独が埋まった時の充実感、孤独が孤独のままでいる潔さを少し知ることができた今、それを自分が弱ってしまわない程度に感じて生きていきたいと思っている。

    孤独を感じたいと思いながらも、同時にそれは少し悲しいよな・・・って思う時に、江國さんの小説は効き目大なの。

  • ブエノスアイレスで育った姉妹、佐和子とカミエラは男を共有することをルールに二人の世界を構築してきた。
    でも、本当は自分だけを見つめてくれる男を探していたのかもしれない…。ある日、日本に住む佐和子が旦那でない男を連れ帰る。不確かな気持ちを抱えながら…

    という話。
    生々しいの内容なのになぜかファンタジックという不思議なストーリーだった。
    面白く読んだが、再読しないし、読んだことを忘れそうな話だった。

  • 現実には、まぁあり得ない話ですが、江國さんの小説だと、雰囲気や間や、文章がすごく素敵で、続きが気になりあっという間に読み終えました。大人の恋愛小説。
    最後があいまいな終わりかただったので、どうなったんだろ…。ミカエラは達也を追って日本に行ったのだろうか。こんな関係で、よく姉妹仲良くしていられるなぁ。とか、佐和子とたぶちんは、どうも長続きしそうにないよなぁ。とか色々読後思いふけってしまった。

  • 途中までおもしろかったんだけど、最後の一ページで一人の男を二人で共有するということと、好きなのに妹のための手放すというのが急に理解できなくなって、気持ち悪くなった。
    多分わたしは達哉が気に入っていたんだと思う。

  • なんかすごいなぁ
    どこもかしこも三角関係だらけ。
    でも、ドロドロした感じはみじんも見せず、物語は優雅に、華麗に進んでいく。

    赤身のステーキに赤ワイン、アルゼンチンの情熱的な音楽と、野性的な描写が多いけど、読後感は不思議と静かで、瑠璃色の世界を見つめているよう。

    アルゼンチンで金平糖を土に埋めたら、地球の裏側の日本で満点の星空になる、ってなんか素敵。

  • ある程度あらすじを理解してから読み始めないと、いろんな人がいろんなこと言って全然わかんなかった。

    姉妹のルールは好きな人を<共有すること>

    ブエノスアイレス近郊の日系コロニアで育った佐和子とミカエラの姉妹は、少女の頃からボーイフレンドを<共有すること>をルールにしていた。留学のため来日した二人だったが、誰からも好かれる笑顔の男、達哉と知り合う。達哉は佐和子との交際を望み、彼女は初めて姉妹のルールを破り、日本で達哉と結婚する。同じく達哉に好意を抱いていたミカエラは父親がはっきりとしない命を宿してアルゼンチンに帰国する。20年後、佐和子は突然、達哉に離婚届を残して、語学学校の教え子であった田渕ともに故国に戻る。一方、ミカエラは成長した娘アジェレンと暮らしていたが、達哉が佐和子を追いかけてアルゼンチンにやってくると……。

    いや、江国さんはこういうちょっと変わった恋、愛、不倫、とか、そういうのの表現がほんとにすごい。シャワーが好き、紅茶好き、あまり感情を出さない女の人もよく書くと思うし、この世に彼がいなければ私は私でなくなる的な没頭愛の表現もすごいなぁと。東京タワーみたいなさらりとした文章の中に、いっぱい共感・説得させられるものがある。

    どうやって完結するんだろう?と思っていたけど、うまく終わったのか、何一つ片付いてないのかよくわからないが、これがうまい落とし所なのかもしれない。

  • 久々の江國さん。
    たびたび思うのだけど、江國さんの作品は、時々、タイトル負けしてるように思います(私の主観です)。この作品も、タイトルに惹かれて手にしました。

    姉妹で男を共有するという、なんともありえないことをさらりと書いてしまう江國さん。この人が書くと、非現実的なことも、なんだか現実的に思えてしまいます。でも、よくよく考えるとやっぱりありえないですよね。

    共有することを拒んでまで結婚したたっちゃんより、たぶちんを選んだ理由が、最後までわかりませんでした。読む限り、たぶちんがそんな良い男にも思えなかったし。まぁ、たっちゃんも浮気ばかりの男ですが(佐和子を迎えに来たのに、ミカちゃんと寝ちゃうし)。

    印象深かったのは、佐和子とお友だちになった小さい女の子。お母さんが、「この子はちょっと・・他の子と違うんです」というところ。達哉が眉を上げたとき、私は思わず笑ってしまいました。私も同じことを思ったからです。今の日本社会をうまく表現しているようで、なんだかおもしろかったです。

    それから、かわいかったのはアジェレン。あの頃特有の恋をしていて、なんだか懐かしかったです。離れていても同じ本を読むというのは、とても素敵だなと思いました。私も彼と遠距離恋愛をしていたことがありますが、本の趣味が違うので同じ本を読むことはありませんでした。でも、私の一番好きな本(江國香織さんの『神様のボート』)を、絶対読まないであろう彼に貸し、彼の本棚の片隅に置いておいたりしたのは、ファクンドとアジェレンが同じ本を読むことと、同等の意味を成していたように感じます。アジェレンが達哉の言葉を聞き流しているところも好きでした。ファクンドのずるさが見えないアジェレンの若さが、とてもうらやましいです。

    ラストはこの前読んだ『真昼なのに昏い部屋』と似たような印象を受けました。ずっと執着していたのに、最後には手放してしまっているような感じ。そのあっさり加減が最近の江國さんらしく、また、わたしが心から恐れるものです。

  • 江國香織の文章が大好き。そして描く世界観が好き。なんだけど、今回に限っては全然理解ができなかった。主人公(佐和子?)にまったく共感できず、ブエノスアイレスを舞台にする意味も見いだせず。なんとなーく、素敵な時間を過ごせたものの、それだけで終わってしまった。なんでも共有する姉妹の絆? そんなのおかしいし、到底理解できるものではない。なんだか雰囲気な小説だと思ってしまう。

  • 夫が迎えにくる所が素敵だった。
    「一番好きなのは夫で、でも他の人と関係を持つ」、という構図は江國さんの他の作品と同じなんだけど、すごく妻に主導権があるところが他の作品とは違うように感じた。

    あと所沢の豪邸エリアの描写がすごくピンときて、「あー」ってなった。反面、アルゼンチンは行った事がないので、きっと肝の部分は分からなかったのだろうな、と想像。

  • 旅に意義を見出してくれる本でした。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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