こんなにも優しい、世界の終わりかた

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863513

感想・レビュー・書評

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  • 最後の時間を柔らかく受け止める。パニックとは程遠い終わり方。切ない。ブランコのシーンが好き。

  • 2016年5月29日読了。

    市川拓司さんの作品はどれも大好きなのですが、特にこの作品は、読んだ後涙がしばらく止まりませんでした。

    優しい光に包まれながら終末へと向かって行く世界で、愛する人のために進み続ける少年が主人公です。彼を主軸に多くの人が登場します。
    恋人のもとへ向かう男性や、家族を連れてひたすら安住の地を探す父親、そして小さな男の子。
    この男の子は、お母さんと一緒に旅をしていたのですが、お母さんだけが光に取り込まれてしまい、泣いていたところに主人公が通りかかりました。
    最後は寂しさのあまりお母さんのところへ戻ってしまうのですが、固まった二人の描写から、まるで聖母子像のような温もりを感じました。

    終末へと向かって行く世界の中で、人がこんなにもあたたかく、優しい感情を忘れずにいられるのならば、たとえそれが希望のない結末だとしても、悪くない結末ではないでしょうか。

  • 完全にファンタジーだと割り切れると面白いのかもしれない。けど過去の少女との出会いや絵画教室での友達との思い出はかなりリアルなものであるから少し齟齬を感じなくもない。言葉の表現が非常に綺麗なので全編世界観に浸りながら、没頭することができた。

  • 世界の時が止まっていき、滅びようとしている極限状態の中での、人間の愛を描いた作品です。
    不器用な性格で今までどうしても思いを告げられなかった男が、世界が終わるその前に彼女と話そうと旅をします。

    世界が終わるとき、人は自分の大切な人のために生きる。
    自分の行いを悔いたり、大切な人を後押ししたり支えたり。たとえ時が止まっても傍にいたり。

    世界の終焉を描きながらも市川さんらしい優しさが溢れた作品です。

  • いつもミステリーばかりでどんでん返しなどを好む自分としては、珍しい感じの本を読んだ感じがします。(息子が図書館から借りてきたもの)
    それでもなぜか引きつけられて、最後まで目を離せられなくなりました。そして、読んで、何だか心がキレイになったような、愛について真剣に考えたいような、そんな気分になりました。涙を流すまでには至りませんでしたが、優と彼女が最後に出会え、結ばれた辺りは、ホッとした気持ちに。好きな人と二人っきりでいられることほど幸せなことはないんですよね。

  • 終わろうとしている世界で、好きな人に会いに行く話。
    泣ける。

  • おっとりとした人しか読めない本かも。僕は、泣いた泣いた。

  • もうすぐ世界が終わるとしたら、きっとわたしたちは愛する人のもとへ行く。14歳から両想いなのに、24歳になるまで想いを伝えられなかった優と雪乃。そんな二人が少し羨ましくも思える。大人になったらこんな純愛、出来そうにないもの。

  • どこからともなく迫りくる美しく優しい青い光。この光に照らされると全ての物は凍りついたように動きを止めてしまう。それは少しずつ世界を侵食していく。こうして実感なく迫りくる世界の終り。実際の世の中も平和に見えていろんなところで破滅に向かっている。この小説は戦争も環境破壊でもなく、青い光によって平和的に破滅に向かっていく様を表していると思いました。

    主人公は遠く離れた恋人に会いに行きます。その道中で会う人々のストーリーはそれぞれ子供が親を思う愛、恋人を思う愛、長年連れ添った相手を思う愛が描かれていてどれも涙を誘うものばかりでした。

    主人公と恋人との回想シーンや再開後の二人の会話でたびたび出てくるコメント。
    『これは優しくないね』というもの。これも印象的でした。

    この本の中で読書についての気付きがあった。自分のことをちんぴらとよぶ、高校中退の人のセリフ。
    『高校も半年で辞めちまった。だからこういった作家が俺の教師なのさ。気のきいた言い回しや世の中の仕組み、何が本当なのかを見抜く力、そういったものを俺は小説から学んだんだ』
    小説とは、、、
    『まことしやかなでっち上げ、だが、注意深く読んでいくと、その嘘の中にこそ真実が隠されているってことに気付くんだ。これはいい訓練になる。世の中を見る目が鍛えられる』
    作家たちのことを、、、
    『たっぷりケツが痛くなるまで机に向かってお勉強してきたことの上澄みを、おれはこんな風に寝っ転がりながらいただくってわけさ。お手軽すぎて申し訳ないくらいだよ』
    これらのセリフから、読書からの学び方を学ぶことができたのは自分にとってはすごいプラスのできごとでした。ビジネス書以上の気付きを小説からいただきました。

  • 淡々と進んでいく終末の物語、
    捻りは少し弱いと感じるのかもしれないけど、
    人の心に焦点を当てていて、
    終末の意味など、どうでもいいのかもしれない。

    恋人、家族、親友、
    大事な人に会いたくなる、もっと優しくしたくなる、
    そんな気持ちを持たせてくれる本だった気がします。

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。獨協大学卒業。'97年からインターネット上で小説を発表。2002年1月、「Separation」で出版デビュー、いきなり同作がTVドラマ化される。次作「いま、会いにゆきます」は映画化され、100万部を超えるベストセラーに。他の著書に「恋愛寫眞――もうひとつの物語」「そのときは彼によろしく」「弘海――息子が海に還る朝」「世界中が雨だったら」がある。

「2009年 『きみはぼくの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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