サラバ! (下)

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  • 小学館
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感想 : 928
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863933

感想・レビュー・書評

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  • 自分は一体なんなのか。
    誰でも一度は陥る悩みだとは思うけど、お姉さんや歩のようにここまで真っ当に正面からぶつかる人もそういないだろう。
    歩は傷つきやすく皮肉屋で臆病で放漫で純粋。
    コンプレックスを持ち、悩み、些細なことで落ち込み、人を愛し、孤独感と戦い無力感と戦い、救いを求め、また傷ついて、しかし感じやすいが故に鈍感であろうとした。結果自分が何だかわからなくなるという…
    いわゆる、普通の人である。
    読みながら何度、こいつ私か?と思ったことか。
    この本はどこにでもいる人間の本質をちょっとだけ美化して、でも限りなく衒わず書いたものだと思う。
    30年以上にわたりもがき苦しんだお姉さんの「信じるものを誰かに決めさせてはいけない」という言葉。胸に迫るものがある。
    生きていることそのものに意味があり、生きてきたことこそが私が私であるという紛れもない証明である。
    この、私は私であるという信念(あえて神様と言ってもいい。歩にとってはサラバだが)が自分を楽にしてくれる。
    なんだかカウンセラーでも受けたような気分だ。自分を見つめ直す定番の一冊になるかもしれない。

    • komoroさん
      自分を見つめ直す一冊と思わせる本に出会えて幸せですね。僕も読んでみたいです。9nanokaさんは普通の人のようであって僕にとってはとても素敵...
      自分を見つめ直す一冊と思わせる本に出会えて幸せですね。僕も読んでみたいです。9nanokaさんは普通の人のようであって僕にとってはとても素敵な感性をもった人ですよ。
      2016/11/13
    • 9nanokaさん
      komoroさんありがとうございます(^^)
      読み終わって何日も考えてしまう本、久しぶりでした。感想を聞きたくて…常州に送りたいくらいです...
      komoroさんありがとうございます(^^)
      読み終わって何日も考えてしまう本、久しぶりでした。感想を聞きたくて…常州に送りたいくらいです!
      2016/11/14
    • komoroさん
      今度必ず読んでみます。そうしたらまたお互いに感想言い合いたいですね。^_^
      今度必ず読んでみます。そうしたらまたお互いに感想言い合いたいですね。^_^
      2016/11/15
  • 自分の好みとしてはどう考えても、自分のブクログ本棚に設定してあるカテゴリのひとつ、「読み続けられなかった本」または「積読」行きになってもおかしくない本だった。
    それなのに、一言一句読み飛ばすことなく、ゆっくりとだが読み終えられたのが不思議だ。

    図書館の予約状況から見ても、上巻でやめた読者も多かったようだし、私自身もよく下巻まで進んだものだと思う。

    でも読了後は、上巻でやめなくて良かったと思うようにはなった。
    やはりヤコブとのサラバはぐっとくるものがある。

    だけどだけど、貴子の手紙の内容に一理あるとは思うものの、貴子の奇行の数々を「でもそれは私のことよ。歩のことじゃない。」「私がやっていることは、歩がやっていることじゃないのよ。」(P245)なんて言われたら、歩同様にやっぱり腹が立つ。

  • 放蕩を続け、友だちや彼女にもなんとなく恵まれていたはずの歩を待ち受けていたのは、何も得ていない空虚な自分。それに引き替え姉 貴子は安らかな自分を得ていた。焦る歩。親友の須玖はビッチだった鴻上とつきあうようになり、自分の居場所を失い、父に会い、エジプトへと旅立つ。歩は機能不全家族の中で育ったアダルトチルドレンの見本?のような人だけれど、周りにいた人はみんな歩を愛している。それに気づいたことがこの話の救い。みんなやり方は違っているけど必死に自分を生きている。「自分の幹」を見つけるために。今、私にとってタイムリーな本だった。きっと今読んだから良かったと思う。騒がれていたころだったら、歩って・・・で終わった作品のような気がする。良かったです。

  • はじめは、おねえちゃんわがままだなとか僕(あゆむ)の視点で考えてた。
    けど、だんだん圷家とか今橋家とかの境界がなくなってきて。
    いったい誰の生き方が幸せなの。
    貴子は自分勝手に生きてるようで自分軸で生きてて歩はいいこでいるけど他人の目ばっかり気にして人をいいわるいと裁いて・・・
    で、あんなにかっこよくモテモテで生きてたはずの歩がはげで無職の30代になって・・・

    本をよんでいないときも「サラバ」のことを考え続けた。稀な本だった。

  • 波乱万丈な四人家族を弟の視点で描いた物語。精緻でボリュームのある描写で物語に引きずり込まれた。半自伝的な小説らしいので空想だけで全てを書いたのでないと思うが、凄まじいエネルギーが込められているのを感じた。
    暴力的な描写は少なくで、性的な描写はあったがマイルドで読みやすいと思う。精神的な描写が多いが、説教臭くなくて良かった。
    日々の生活に飽きている人に特にオススメです。

  • 破天荒な姉のせいで周りの大人の顔色を窺いながら生きてきた弟が語り部。そうすることが処世術だった弟を思うと後半の展開は、見てられない。受け身でいること、逃げること、見ないフリをすることは自分を守る方法なんだけどな…。
    だって信じることは怖いことだ。世の中に「絶対」を約束されたものなんてないんだから。信じる何かが見つかれば、救われるってのはわかるんだけど!
    本を読む中、自分のためだ!と思える言葉に出会えたときの気持ちを味わって欲しい。

  • 後半は家族がそれぞれの道を歩み始めた。
    最後の最後、姉が何かを見つけて帰国してきてホッとした。
    1番の問題児だとみたいだったのに、母親や弟に影響を与えるほどになって帰ってきたんだ。
    自分の芯のようなものがわかったということか。
    「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。」そう、ほんとそうだと思う。

  • 上巻でなんとなく歩に対して感じていた違和感は
    これだったんだなぁと、下巻を読み進めるうちに分かっていった。自分の軸がないということ、だけどこれはそうなってしまう環境(特に姉、そして母)だったよなぁと思う。二十代前半までの歩は、それに気が付かないほど自分の容姿にも、人にも、運にも恵まれていたんだもの。
    自分の容姿が年齢と共に変わり、新しい展開が始まってからのラストまでは、まさに又吉さんが言っていた本の中に頭が入り込む感覚で読み進めました。
    神出鬼没の巻貝アーティスト…かなり衝撃を受けたし大笑いした!エジプトで家族が崩壊した理由、父の選択、どんな理由があれ自分で選んで進んできた道を戻っちゃだめだよと思った。独り身ならまだしも、巻き込む可能性のある家族がいるなら尚更。すごく長いけど、どのエピソードも必要なものだったんだなと、ラストの収まり方でスッキリしました。

  • 歩…剥げちゃったのね…

    圷家の家族が幸せになれてよかった

  • 上を読んだ時は,下も読むのを迷うようなぐらいだった。
    が,下は上巻よりも面白くなりました。
    最後,主人公が立ち直っていく姿を
    もう少し見たいなと思えたのが良かった。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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