本を守ろうとする猫の話

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 3555
感想 : 385
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864633

作品紹介・あらすじ

『神様のカルテ』シリーズ外、初の長編!

「お前は、ただの物知りになりたいのか?」
夏木林太郎は、一介の高校生である。夏木書店を営む祖父と二人暮らしをしてきた。生活が一変したのは、祖父が突然亡くなってからだ。面識のなかった伯母に引き取られることになり本の整理をしていた林太郎は、書棚の奥で人間の言葉を話すトラネコと出会う。トラネコは、本を守るため林太郎の力を借りたいのだという。
痛烈痛快! センス・オブ・ワンダーに満ちた夏川版『銀河鉄道の夜』!

【編集担当からのおすすめ情報】
300万部超のベストセラー『神様のカルテ』著者、
初のファンタジー長編!

感想・レビュー・書評

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  • 難しい本はチャンスだ。にハッとさせられた。読書について考えさせられる。

  • 「おじいちゃんが言っていました、お金の話を始めると際限がなくなってしまう。百万あれば二百万がほしくなる。一億あれば二億がほしくなる。だからお金の話はやめて、今日読んだ本の話をしようって」
    そんなおじいちゃんと暮らした夏木林太郎。
    素敵なおじいちゃん。

  • 夏川草介さんらしい、やさしさが感じられる話で、ハッとさせられる言葉があちこちに。

    「ただがむしゃらに本を読めば、その分だけ見える世界が広がるわけではない。どれほど多くの知識を詰め込んでも、お前が自分の頭で考え、自分の足で歩かなければ、すべては空虚な借り物でしかないのだよ』
    47ページ

    「たいしたことではない。ただ当たり前のことを伝えようとしただけなのだ。嘘をついてはいけない。弱い者いじめはいけない。困っている人がいたら手を貸してあげなければならない。(中略)今の世の中は、色々な当たり前のことが逆さまになってしまっている。巧妙に嘘をつき、弱い者を踏み台にし、困っている人に付けこむことに、皆が夢中になってしまっている』
    61ページ

    「ただただ刺激を欲しているだけの読者には、暴力か性行為の露骨な描写が一番。想像力のない人向けには'本当にあった話'なんて一言添えれば、それだけで発行部数は数割アップ」(略)「どうしても本に手が伸びない人のためには、もう単純な情報を箇条書きにすればいいだけ。成功するための五つの条件とか、出世するための八か条なんてね。」
    140ページ

    小学校で「本当にあった話」系が人気なのが不思議だったけど、言われてみれば、と納得(残念ながら)。

    子どもが本を読まない、または反対に本ばかり読んで外に出ない、と悩んでいる親にもおすすめしたい。

    最近出た続編も楽しみ。

  • 神様のカルテが大好きで手に取った本。

    その名の通り、本を守ろうとする猫が、書店を営む祖父を亡くした高校生の前に現れ協力を求めるファンタジー。
    物語の読後感としては一般的だったけど、現代の本に対する警告や皮肉が存分に込められていて、世の中を勝ち抜くために“正論"のように聞こえる理屈を語る“敵"が出てくる。
    本を1回読んだだけで大量のコレクションする男、早く読むために本を切り刻んで要約する男、売れるということだけを重要視した男、など。

    「みんな生きることにくたびれていて、ただ刺激と癒しだけを求めている」
    「安っぽい要約やあらすじがバカみたいに売れる」
    「世の中にはたくさんの本があり、読書も効率化が求められている」
    「1冊の本を深く読むより、たくさん読んだ数で尊敬され地位が気付かれる」

    でも、彼らはみんな本が好きということは共通。
    「人を思う心」が本の力。

    作者は本当に本が好きなんだろうなと思った。

  • 読書ってそうだよな
    まさに現代社会にメスを入れる作品だった。仕事やネットの普及やらで失いかけてる人が人を思いやる事、時間。昔の人よりかは欠けてると自分でも思う。時代が変化しても大切なことは変わらないのだと。分かってても…そんな時に力になってくれる物語。いい読書時間ができた。

    好きなフレーズ引用
    どれほど多くの知識を詰め込んでもお前が自分の頭で考え自分の足で歩かなければすべては空虚な借り物でしかないのだよ
    孤独に屈するなかれ
    お前の友を助けに行く旅だ
    悩む者とともに悩み苦しむ者とともに苦しみときにはともに歩む態度を言うのだ
    春の日差しはどこまでもまばゆくて身軽な制服の背中は光の中ひ溶けていくようだ

  • なんとなく本屋で見かけて購入。知らなかったけど、『神様のカルテ』の人なのね。

    作者の本に対する愛情に溢れた一冊。ちょっと説教臭い部分はあるけど。それだけ真っすぐな思いがあるってことで悪くない気分だったかな。

    ストリーラインは王道で、塞ぎ込んだ少年がある出会いを経て成長し、やがて大切なものを見つけて別れる…という『ブレイブ・ストーリー』とか『はてしない物語』みたいな流れ。どこか懐かしく、けれど決して飽きないからこそ王道と呼ばれるわけで。ケレン味を足さない作者の心意気が気持ちよかった。

  • 本の中に本が出てくるのはとても良い

  • 本とは何か?
    それを問い、答えるための本。
    という感じだった。
    とてもリズムが良い文調でとても読みやすい。
    冒険小説をあまり読まないけれど、これは冒険しながらも「本についての真理」を問いていて面白かったな。
    と、言いながらも、「本についての真理」など、自分はほとんど持ち合わせていない。
    迷宮の中の人たちのように、「読むこと」が目的になり、後から後から新しい本を求めて図書館や本屋に向かい、読んだあとは手元に残すことがあまりない。
    「読みやすい本」を求め、難解と思われる古典文学には手を出さない。
    「何万人が読んだ、感動のストーリー」などというコピーに惹かれ、読んだ本は数知れず。
    解決を求め、要約のように書かれたビジネス本や、自己実現本を読む。
    そんな、迷宮の中の者たちと同じような読書を続ける自分に真理などない。

    けれど、一つだけあるもの。
    「本を読めば、自分以外の者になれ、自分の人生とは違う人生を体験することができる」こと。
    その体験を通して、自分の幅が広がること。
    知識だけではなく、心が広がること。
    (本作で夏木が別の言葉で似たようなことを言っていたが)

    自分は、やっぱり本が好きだな。
    そして、自分が好きな医療ストーリーだけではなく、こんな風なお話も書ける夏川さんが好きだな。
    大好きな夏川さんの「始まりの木」をまた読みたくなった。

  • 読みやすい。
    あっという間に読めます。
    描写から映像も立ちやすく、世界観は素敵…
    本好きな林太郎、クラス委員長の沙夜、
    翡翠の瞳を持つトラネコ…
    表紙のイラストにも補われて、イメージ通り。

    まだ、大学を辞めた祖父の謎も明かされず、
    続編ありだよね。

    迷宮の1、ガラス張りのケースに本を閉じ込める者
    迷宮の2は読書研究所の所長、本を切り刻むように速読やあらすじという読み方を推奨する者
    迷宮の3は、本は消耗品として売れる本を売る者

    誰に対しても、林太郎は正面を切って読書の、本の大切さを訴える。
    どの迷宮も、一理あるかも〜と私も思う。
    最後の迷宮で、林太郎に出してもらった答えは
    「本はもしかしたら”人を思う心”を教えてくれるんじゃないか」
    本にはたくさんの人の思いが描かれていて、その人の物語や言葉に触れ、一緒になって感じることで、自分以外の人の心を知ることができる。

    これには、私も納得、同意!
    本の中に自分の感じた思いを探すように読んでいる。
    なかなかに、落とし所の難しいテーマを
    結末に持ってきて、納得させてくれるというのは
    すごいね。
    次作を楽しみにしてます♪

  • 読みやすい本でした。
    でも内容は、本の存在価値、人との関わりと生き方への影響など、私としては深く感じました。
    続編もあるようなので読んでみようと思います。、

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著者プロフィール

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作は10年に本屋大賞第2位となり、11年には映画化もされた。著書に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『新章 神様のカルテ』『本を守ろうとする猫の話』『始まりの木』『臨床の砦』『レッドゾーン』など。

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