- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093864633
作品紹介・あらすじ
『神様のカルテ』シリーズ外、初の長編!
「お前は、ただの物知りになりたいのか?」
夏木林太郎は、一介の高校生である。夏木書店を営む祖父と二人暮らしをしてきた。生活が一変したのは、祖父が突然亡くなってからだ。面識のなかった伯母に引き取られることになり本の整理をしていた林太郎は、書棚の奥で人間の言葉を話すトラネコと出会う。トラネコは、本を守るため林太郎の力を借りたいのだという。
痛烈痛快! センス・オブ・ワンダーに満ちた夏川版『銀河鉄道の夜』!
【編集担当からのおすすめ情報】
300万部超のベストセラー『神様のカルテ』著者、
初のファンタジー長編!
感想・レビュー・書評
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難しい本はチャンスだ。にハッとさせられた。読書について考えさせられる。
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「おじいちゃんが言っていました、お金の話を始めると際限がなくなってしまう。百万あれば二百万がほしくなる。一億あれば二億がほしくなる。だからお金の話はやめて、今日読んだ本の話をしようって」
そんなおじいちゃんと暮らした夏木林太郎。
素敵なおじいちゃん。
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夏川草介さんらしい、やさしさが感じられる話で、ハッとさせられる言葉があちこちに。
「ただがむしゃらに本を読めば、その分だけ見える世界が広がるわけではない。どれほど多くの知識を詰め込んでも、お前が自分の頭で考え、自分の足で歩かなければ、すべては空虚な借り物でしかないのだよ』
47ページ
「たいしたことではない。ただ当たり前のことを伝えようとしただけなのだ。嘘をついてはいけない。弱い者いじめはいけない。困っている人がいたら手を貸してあげなければならない。(中略)今の世の中は、色々な当たり前のことが逆さまになってしまっている。巧妙に嘘をつき、弱い者を踏み台にし、困っている人に付けこむことに、皆が夢中になってしまっている』
61ページ
「ただただ刺激を欲しているだけの読者には、暴力か性行為の露骨な描写が一番。想像力のない人向けには'本当にあった話'なんて一言添えれば、それだけで発行部数は数割アップ」(略)「どうしても本に手が伸びない人のためには、もう単純な情報を箇条書きにすればいいだけ。成功するための五つの条件とか、出世するための八か条なんてね。」
140ページ
小学校で「本当にあった話」系が人気なのが不思議だったけど、言われてみれば、と納得(残念ながら)。
子どもが本を読まない、または反対に本ばかり読んで外に出ない、と悩んでいる親にもおすすめしたい。
最近出た続編も楽しみ。 -
読書ってそうだよな
まさに現代社会にメスを入れる作品だった。仕事やネットの普及やらで失いかけてる人が人を思いやる事、時間。昔の人よりかは欠けてると自分でも思う。時代が変化しても大切なことは変わらないのだと。分かってても…そんな時に力になってくれる物語。いい読書時間ができた。
好きなフレーズ引用
どれほど多くの知識を詰め込んでもお前が自分の頭で考え自分の足で歩かなければすべては空虚な借り物でしかないのだよ
孤独に屈するなかれ
お前の友を助けに行く旅だ
悩む者とともに悩み苦しむ者とともに苦しみときにはともに歩む態度を言うのだ
春の日差しはどこまでもまばゆくて身軽な制服の背中は光の中ひ溶けていくようだ
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本の中に本が出てくるのはとても良い
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本とは何か?
それを問い、答えるための本。
という感じだった。
とてもリズムが良い文調でとても読みやすい。
冒険小説をあまり読まないけれど、これは冒険しながらも「本についての真理」を問いていて面白かったな。
と、言いながらも、「本についての真理」など、自分はほとんど持ち合わせていない。
迷宮の中の人たちのように、「読むこと」が目的になり、後から後から新しい本を求めて図書館や本屋に向かい、読んだあとは手元に残すことがあまりない。
「読みやすい本」を求め、難解と思われる古典文学には手を出さない。
「何万人が読んだ、感動のストーリー」などというコピーに惹かれ、読んだ本は数知れず。
解決を求め、要約のように書かれたビジネス本や、自己実現本を読む。
そんな、迷宮の中の者たちと同じような読書を続ける自分に真理などない。
けれど、一つだけあるもの。
「本を読めば、自分以外の者になれ、自分の人生とは違う人生を体験することができる」こと。
その体験を通して、自分の幅が広がること。
知識だけではなく、心が広がること。
(本作で夏木が別の言葉で似たようなことを言っていたが)
自分は、やっぱり本が好きだな。
そして、自分が好きな医療ストーリーだけではなく、こんな風なお話も書ける夏川さんが好きだな。
大好きな夏川さんの「始まりの木」をまた読みたくなった。
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読みやすい本でした。
でも内容は、本の存在価値、人との関わりと生き方への影響など、私としては深く感じました。
続編もあるようなので読んでみようと思います。、