ヴァイタル・サイン

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866200

作品紹介・あらすじ

映画「いのちの停車場」著者、最新作!

二子玉川グレース病院で看護師として働く堤素野子は、31歳になり今後のキャリアについても悩みながら忙しい日々を過ごしていた。患者に感謝されるより罵られることの方が多い職場で、休日も気が休まらない過酷なシフトをこなすが、整形外科医である彼氏・翔平と束の間の時間を過ごすことでどうにかやり過ごしていた。
あるとき素野子は休憩室のPCで、看護師と思われる「天使ダカラ」さんのツイッターアカウントを見つける。そこにはプロとして決して口にしてはならないはずの、看護師たちの本音が赤裸々に投稿されていて……。心身ともに追い詰められていく看護師たちが、行き着いた果ての景色とは。
映画「いのちの停車場」やNHK連続ドラマ「ディア・ペイシェント」など、数々の話題作を送り出してきた、現役医師でもある著者の最新作!終末期の患者が多く入院する病棟で働く女性看護師の目を通して、医療現場の現実や限界をリアルに描いたエンタメ長編!
患者さんに、最期まで笑顔でいてほしいから--


【編集担当からのおすすめ情報】
推薦コメントも続々届いています!
「過酷な看護の現場に光を当てる緻密で鮮烈なカルテです」
――夏川草介(医師・作家)
「人の死を最も間近で見る仕事、それはナース。読んでいて叫びたくなる。切ないのに、ページをめくる手が止まらない」
――中山祐次郎(外科医・作家)
「生々しいまでに看護師の苦しさが伝わってきました。読み終えればわかります。この作品は医療従事者へのエールです」
――大塚篤司(近畿大学医学部皮膚科主任教授)

感想・レビュー・書評

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  • 南杏子さんの作品は初めて読みました。
    コロナ前の2018年4月から現在までの看護師の堤素野子29歳を巡る日常の職場、二子玉グレース病院での経験を描いた物語です。

    私事で恐縮ですが、私はあまり体が丈夫でなく持病もいくつかあり、病院には日常的に月に3回は通院しています。

    看護師さんというのは、私にとっては憧れの職業です。てきぱきとヴァイタルを診たり、病院内を駆け回っている姿をみると「私も今度健康な体に産まれたら看護師さんになりたいな」と憧れてしまうこともあります。

    看護師さんに夜勤はつきものですが、健康な人が看護師さんになっているから、夜勤ができるのではなく、看護師さんも人間だから夜勤前は懸命に睡眠をとろうと無理に眠ったりしていたのだということを初めて知り、頭が下がりました。

    看護師さんの仕事がとにかく大変なんだというストーリーでもちろん、並みの仕事ではないことは、私も常日頃から感謝の念を持っています。

    だけど、横暴にふるまう患者の家族に泣かされる看護師さんの様子が執拗に描かれているのには、ちょっとカチンときました。
    確かにそういうことは多いのだろうと推測はします。
    だけど私はそこまではいかないけれど、横暴な看護師さんに出会ったことが1度だけあります。

    夜間に食物アレルギーで呼吸困難になり、救急車は恥ずかしかったので車で救急外来に行き、私は苦しかったのですが側にいた看護師さんのような方に必死で「こんな夜遅くに申し訳ありません」と言ったら、その方は「全くそうですよ、こんな遅くに迷惑ですから来ないでくださいね」と言われました。

    通りすがりの外来だったし、周りに他の人が誰もいなかったので、口から出たのかもしれません。
    こっちは苦しくてたまらないのにあの時はその一言がショックでした。

    それ以前にも同じ状況で(その時は初めてだったのでアレルギーとわからず)別の病院に夜間に行った時も同じように「すいません」と私が謝ったら、その時は「謝ることないのよ、私たちはこれが仕事なんだから」と凄く優しく言われ、点滴もしてもらったのですが、病院によってここまで違うものなのかと思いました。

    この作品のように看護師ばかりを持ち上げて患者側を悪く描きすぎるのは、そういうことも多いのかもしれませんがフィクションでここまで患者をバカみたいに描くのは、自分の経験を思い出しこの作者意地が悪いのではないかと思ってしまいました。

    レビューと言うより愚痴になってしまって申し訳ありません。

    • まことさん
      りまのさん。
      そうですよね!
      白衣の天使とよばれる人にそんなこと言われたら、びっくりして憤って当然です。
      いい人ももちろん多いから一概...
      りまのさん。
      そうですよね!
      白衣の天使とよばれる人にそんなこと言われたら、びっくりして憤って当然です。
      いい人ももちろん多いから一概には言えないけれど、この作品では、患者の家族と患者が凄い酷い人間として描かれていて、看護師はバカをみている的な描かれ方をしているのです。
      フィクションでも、なんか腑に落ちない感じでした。
      作者の南杏子さんは、略歴を見ると現場で働いていたらしいので、患者をそういう偏見たっぷりな目でみていらっしゃるのかと思うと悲しかったです。
      2021/09/25
    • りまのさん
      まことさん
      うう…作者の南杏子さん、そうなのですか。
      実は、私の姉は、看護師なのです。ひとの生き 死にを見てきたせいか、家族に優しくも、シビ...
      まことさん
      うう…作者の南杏子さん、そうなのですか。
      実は、私の姉は、看護師なのです。ひとの生き 死にを見てきたせいか、家族に優しくも、シビアな、しっかり者です。姉は良いのですが、私も、入院生活が、何度もあったので、いろんな看護師さんを、見てきました。悲しくて、書けないほどひどい、看護師さんも、いましたよ。どこの世界も、いろんな人が、いるものですね。
      めげずに、頑張って、生きていきましょう!
      心の綺麗な まことさん 
      ファイト!
      2021/09/25
    • まことさん
      りまのさん。
      お姉様が、看護師さんでいらっしゃるのですか。
      りまのさんのお姉様だったら、さぞかし優しくて、しっかりされた看護師さんなのでしょ...
      りまのさん。
      お姉様が、看護師さんでいらっしゃるのですか。
      りまのさんのお姉様だったら、さぞかし優しくて、しっかりされた看護師さんなのでしょうね。
      私は、五歳の時に、盲腸炎の手術で、入院したことがあるのですが、その時の看護師さんが、優しくて、私に編み物をプレゼントまでしてくれて、その時は、看護師さんに私も憧れました。
      でも、どこの世界でも、一定数の嫌な人はいるものなのですね。
      看護師イコール白衣の天使も、形を変えた偏見なのかもしれないと思いました。
      でも、入院生活というのは、とても不便で、もちろん体も弱っている状態ですから、そういう時の対応は、普段以上に気をつけて欲しいですよね。
      2021/09/25
  • ◆看護師の過酷な感情労働評[評]関口苑生(文芸評論家)
    ヴァイタル・サイン 南杏子(きょうこ)著 :東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/131679?rct=shohyo

    現役医師作家・南杏子が込めた過酷な現場での"ありがとう"の力 『ヴァイタル・サイン』インタビュー | ほんのひきだし
    https://hon-hikidashi.jp/enjoy/135322/

    看護師の現実。「『白衣の天使』なんて言葉は、好きではない」 『ヴァイタル・サイン』 | BOOKウォッチ
    https://books.j-cast.com/topics/2021/09/01015948.html

    南 杏子『ヴァイタル・サイン』 | 小説丸
    https://shosetsu-maru.com/yomimono/essay/vitalsign

    ヴァイタル・サイン | 小学館
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09386620

  • 看護師の仕事の大変さは並大抵じゃないと思うが、それにもまして勤務シフト(日勤ー深夜勤ー日勤ー準夜勤ー深夜勤ー準夜勤ー休日ー日勤)の過酷さに無理だわ〜と思ってしまう。

    こんなめちゃくちゃな勤務だと身体がついていかないし、実際眠れない…。体力ありきの仕事。

    わがままな患者や無茶苦茶なことを言う家族もいて辛いこともたくさんある。

    だが施設管理の望月さんの素敵な気遣いに心が温かくなった。
    何気ないところで見てくれてる人もいることに勇気をもらえたんじゃないかと思う。

    患者の立場からすると寄り添ってくれる看護師がいることはありがたいことで心強い。




  • 看護師さんの過酷な毎日、読んでいてずっと苦しかった。
    どこかで一線を超えてしまわないか、心が完全に壊れてしまわないか…

    これがリアルな医療現場なのかもしれないが、かなりキツイ患者さんが続いた日々を限定して描いたと思いたい。
    これが毎日何年も同じように続いたら、看護師さん自身が患者になってしまう。
    患者のヴァイタルサインに対して常に敏感であると同時に、自分自身のヴァイタルサインをなおざりにしないでほしいと思う。
    改めて、医療と介護の仕事をされている方への感謝を意識する作品になりました。

    ところでツイッターの「天使ダカラ」は、日付から想像して、実はあの人なのでは?
    まさか…ね?

  • 私も仕事でミスが続くと、寝ていても追い詰められてる感じがして、わーっとなってドキドキしながら目が覚める事がある。看護師の仕事は命が関わるのでいつも気がぬけないし、夜勤や患者さんの家族との関わりもあって、神経がすり減る仕事だなと改めて感じた。段々と追い詰められる主人公にドキドキしたし、エンゼルケアで爪を切る場面では、このままではやらかすんじゃあないか…と思ったらやっぱり(泣)。失敗も乗り越えてベテランの域に達するのかもしれないけど、このままでは過労死するか鬱になっちゃうとのではと心配になった。現実でも看護師あるあるをSNSとかで見かけると、看護師さんってすごいなーと思います。ありがとうございます。

  • 2021年8月小学館刊。書き下ろし。激務な看護師さんのお話。ところどころに挟まれる医療従事者ヒエラルキーや、看護師キャリアの話が興味深い。命がかかわる現場は厳しいとあらためて認識しました。

  • ❇︎
    医療の現場で働く看護師の実情と苦悩の
    姿を描いた成長の物語。

    肉体労働、頭脳労働に加えて、
    第三の労働と呼ばれる感情労働という言葉と
    その意味の深さに衝撃を受けました。

    医療現場で日々、感染や汚染、人の生と死に
    携わって看護を仕事にしている方を改めて
    有難いと感じました。

    いつか患者としてお世話になる終末期がきたら
    『ありがとう』と伝えられる患者になりたい。

  • 待っていた南さんの新刊。過酷な勤務の状況が息苦しくなるほどリアルに描写されています。さすがの長年リアルな医療現場で闘ってこられた経験が、これでもかと綴られており、寝る間も惜しんで一気に読みました。

    ここに出てくる上から目線で派手な後輩看護師が、憎らしいけど話の展開としては何とも良い役割を担っており、そして現実にたくさんいそうで?読みごたえを増しています。
    適度に恋愛や主人公自身の介護事情が仕事へのモチベーションと相まって綴られるのも奥行きがあってストーリーが深まっています。
    章立てが勤務シフトとリンクしているのもわかりやすい。それにしても1日の勤務内容の、何と多彩で深刻なことか…。看護師さんってこんな仕事を毎日してるのか?と思うともう尊敬しかありません。

    自分の父の余命が僅かと知った後、遠いけれど看護体制がしっかりした専門病院と、毎日通えるけど看護体制に疑問を感じる地元の病院とを選ばなくてはならなくなった時、患者である父が例え意識がなくなり痛いも苦しいもわからなくなったとしても最後まできちんと信頼できるケアをしてもらえる遠いところの病院を自分は選びました。
    きっと最期は看取れないだろうと覚悟し、実際その通りとなってしまいましたが後悔はありませんし、その病院のスタッフの皆さんには今も感謝しかないです。
    その後、選択肢の一つだった地元の病院で母を亡くした友人がその病院のケアのひどさを切々と話しているのを聴いて、お二人は本当に気の毒だったけれども父をきちんと看護してもらえる病院を選んで本当に良かったと改めてしみじみ思いました。

    父が亡くなるまでの間、2日程病院に泊まる機会がありましたが、看護師や医師の皆さんには感謝と同時に二十四時間患者に気を配ることの過酷さを感じさせられました。つっけんどんだったり感じの悪い人もいて当時は憤慨もしましたが、本書を読むと「こんなに過酷なら笑顔で働けと言う方が無理だろう」と思ってしまいました。
    感情労働という言葉が本書に出てきますが、医療現場の方々の感情労働はもっと評価されたりケアされなくてはならないのではないかと思います。

    コロナ禍においては実際の対応の過酷さの激増や言われなき批判や差別など、あってはならない状況が起き、もっと現場の方々が報われるような体制にしてほしいと心から感じました。
    本書に出てくるような、感謝を言葉に現すのはとても大事な支えになるとは思いますが、具体的な報奨や補償がないと本当には心身が救われないと考えます。
    今のそこここの医療現場が、ここまでブラックな勤務体制でないことを願います。

  • 初めて読んだ作家さん。
    きれいごとではなく、とてもリアルに描かれた看護の現場。

  •  苦しい時間が続く生活は、どんな行動を生むのか。
    看護師の日常を淡々と、そして切々と繰り出していく文章にページをめくる手は止まらなくなる。
    しかし、外側から眺めている読者としての自分は「大変なのは、わかる。でも、あなただけ苦しいのではない。」と、冷たい心で眺めてしまうところがあった。
     けれども、それは他院で起こった事件に対する、テレビコメンテーターのセリフで気づいた。
    体験していないことを、とやかく言うのは無責任なのだと。
    看護師の辛さ、患者の辛さ、家族の辛さ、それぞれあり、それは当事者にしかわからない。
    それに良いも悪いもないのだ。
    足掻きながら、進んでいくしかないのだと。

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著者プロフィール

1961年徳島県生まれ。日本女子大学卒。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入。卒業後、慶応大学病院老年内科などで勤務したのち、スイスへ転居。スイス医療福祉互助会顧問医などを務める。帰国後、都内の高齢者向け病院に内科医として勤務するかたわら『サイレント・ブレス』で作家デビュー。『いのちの停車場』は吉永小百合主演で映画化され話題となった。他の著書に『ヴァイタル・サイン』『ディア・ペイシェント』などがある。


「2022年 『アルツ村』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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