パパイヤ・ママイヤ

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 434
感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866446

作品紹介・あらすじ

わたしたちの、奇跡のような一夏の物語 17歳の夏、SNSで知り合ったパパイヤとママイヤは木更津の小櫃川河口の干潟で待ち合わせをして、初めて会った。アル中の父親が大嫌いなバレーボール部のパパイヤと、芸術家の母親に振り回されて育った、写真が好きなママイヤ。二人は流木が折り重なる”木の墓場”で週に一回会うようになり、心を通わせる。そして、奇跡のような出会いは、二人の夏を特別なものに変えていく――「なりたい自分だって気がするんだよね、あんたといる時だけ」少女たちの儚くも輝かしい一夏を瑞々しい筆致で描く、新時代のガールミーツガール小説。 【編集担当からのおすすめ情報】 芥川賞候補作となった『最高の任務』『旅する練習』『皆のあらばしり』などで、いま最も注目を集める実力派の新作です。

感想・レビュー・書評

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  • SNSで知り合った、アル中の父が嫌いなパパイヤと、自分を一人きり日本に残し外国で男性と暮らす母が嫌いなママイヤ。17歳の少女たちが一緒に過ごす、ひと夏の物語。
    なんだか不穏なものを感じながら読み始めたこのお話。でも、いい意味で裏切られました。
    とても爽やかで心温まる友情の物語。
    学校にいる時のしょーもない自分よりも、ママイヤと一緒にいる時の自分が好きだと思うパパイヤ。
    自分の知らないところで、自分のことを自分以上に考えたり汗を流してくれる友だちを見つけたママイヤ。
    お互いに影響を与え合って、強い大人になっていく。
    爽やかな夏のお話でした。

    作中、「きいれえもん(黄色い物)」を拾い集めるホームレスが出てきます。なんか、分かります。私も黄色が大好き。元気が出る色ですよね。このブクログの本棚も黄色なので、『パパイヤ・ママイヤ』の表紙がよく見えなくなっちゃってるし笑。
    その「きいれえもん」コレクションを見てママイヤが「失くしたら泣いちゃう?」と聞くとホームレスは「泣かねえよ。失くしたらまた集めるだけよ。そしたら失くすことにはならねえだろ」と。うん!そうですね!

  • パパが嫌いなパパイヤと、ママが嫌いなママイヤの一夏の青春。
    ミステリーとか読みすぎて、もっと最悪な家庭環境を想像しちゃったけど、等身大の女子高生な2人に爽やかさしか感じられずサクッと読めました。
    表紙の色も素敵。

  • 木更津周辺の描写がリアル。パパイヤ、ママイヤってなるほどそういうことだったのか。女子二人の風変わりな一夏の出来事。日常の延長にある非日常と実際の地理が結び付いて不思議な感覚。

  • SNSで知り合ったパパイヤとママイヤ、そしてホームレスの所ジョンの物語。
    ある夏のちょっと変わった日常が描かれているのだけど…ちょっと私には面白さがわからなかったかも。
    個人的に、こういう起伏の少ないストーリーや、会話の調子が苦手なのかもしれない。

  • 時間だけが途方もなくあったあの頃。
    学校でも親の前でも見せない、ここだけの自分。 17歳の彼女たちの夏が、まるで自分の記憶のように立ち昇ってきました。

    ああ、私にも、誰にもきっと、こんな永遠みたいな夏があった。
    大人になる前に越えていかないといけない、自分を知る時間。
    美しい小櫃川河口干潟を背景にした、青春としか言いようのない2人のやりとり。
    その可笑しさに、まぶしさに、懐かしさに、涙が出た。


    子供の頃、毎日遊んだ(というか時間をつぶした)長居公園の郷土の森に、木が密集して家みたいになってるところがあって、そこにホームレスのおっちゃんが住んでいた。
    私はそのおっちゃんと仲良くなって、遊びに行ってチョコレートをもらってた。
    この本でもホームレスのおっちゃんとやりとりするシーンがあって、まだ自分だけの世界で生きていた頃のいろんな記憶が蘇った。

  • ママが嫌だから「ママイヤ」
    パパが嫌だから「パパイヤ」
    そういうSNSのハンドルネームの2人。
    自転車に乗れるようになったママイヤ。
    高校に行っていない?
    レアな親ガチャ?
    パパイヤはバレー部。
    約束をしなくても会える2人。
    出会いって不思議。
    謎は色々あるけれど、話しているうちにどんどん親しくなって、
    過ごした時間は宝物のようになった。
    JKってキラキラしているよね。

  • 美しい。著者の作品はこれで2作目。前に読んだ「旅する練習」の芥川賞候補の選評で「〜この形式への固執にナルシシズムが感じられてしまう。」と書かれていたが、その通りだと思うと同時に、その批評した方の嫉妬も混じっているのでは?と思った。それくらい美しい形式で物語を創っていると思う。
    景色を文で丁寧に描写しているが、興味で "小櫃川河口干潟"とGoogle mapで検索すると想像と同じ写真が出てきて驚いた。あまり本を読まない私だが、現代のザ・純文学と感じる。読後感と本の装丁がバッチリ。きいれいもんマイブーム到来。

  • 六月の終わり、私たちは現実で出会った

    父親が嫌いなパパイヤと母親に愛憎半ばする感情を持つママイヤのひと夏のガールミーツガール物語

    すごくどうでもいい!ことに一生懸命なのが羨ましかったー!!どうでもいいことで朝からあちこち行ってみたい(いや、本人にとっては大切なことなんですが)。パパイヤがすごくいい子でママイヤはパパイヤに出会えて一生の宝物になったと思う。

    小櫃川の干潟が舞台で地元の人が読むとまた全然違った感想になりそうです。SNSで知り合ってから現実で初めまして、というのは今の女子にはよくあること?読み始めは少しヒヤッとしましたが、後からおおよその住所が分かるということ以外は昔の文通と似てるかな(笑)

  • 初めの方は、セリフがどちらのセリフなのか分からず戸惑いました。
    こういう文章に慣れていなかったからかも知れません。話をつかむのに苦労しました。

    中盤以降、ママイヤとパパイヤの背景が分かり、関係性が深まっていく様子は見ていて嬉しかったです。ママイヤが受け入れられて支えられているのかな?と思っていたら、まさかのラストでした。
    海辺でのダンスは、美しい情景とパパイヤの躍動感が目に浮かぶようでした。

  • パパイヤとママイヤの2人を中心に描かれているところから、2人の関係性をじっくり追うことができた。
    性格としては相反するところがあったが互いに惹かれ合う部分があり仲良くなったのが頷けた。

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著者プロフィール

1986年北海道生まれ。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。2015年『十七八より』で「群像新人賞」を受賞し、デビュー。18年『本物の読書家』で「野間文芸新人賞」を受賞する。23年『それは誠』が「芥川賞」候補作となる。その他著書に、『十七八より』『本物の読書家』『最高の任務』『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』等がある。

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