レッドゾーン

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866477

作品紹介・あらすじ

病む人がいるなら我々は断るべきではない。 【第一話】レッドゾーン日進義信は長野県信濃山病院に勤務する内科医(肝臓専門医)だ。令和二年二月、院長の南郷は横浜港に停泊中のクルーズ船内で増加する新型コロナ患者の受け入れを決めた。呼吸器内科医も感染症医もいない地域病院に衝撃が走る。日進の妻・真智子は、夫がコロナ感染症の患者を診療することに強い拒否感を示していた。【第二話】パンデミック千歳一郎は五十二歳の外科医である。令和二年三月に入り、コロナの感染者は長野県でも急増していた。三月十四日、千歳は限界寸前の日進に変わり、スペイン帰りの32歳女性コロナ確定患者を診察し、涙を流される。翌日、コロナ診療チームに千歳が合流した。【第三話】ロックダウン敷島寛治は四十二歳の消化器内科医である。コロナ診療チームに加わって二月半が過ぎた。四月上旬、押し寄せる患者に対応し、信濃山病院が総力戦に突入するなか、保健所は感染症病床を六床から十六床に増床するよう要請する。医師たちはすべての責務を信濃山病院だけに負わせようとする要請に紛糾するが、「病める人がいるのなら、我々は断るべきでない」という三笠内科部長の発言により、増床を受け入れる。 【編集担当からのおすすめ情報】 報道ステーション、朝日新聞、NHKなど80以上のメディアに取り上げられ大反響を呼んだ『臨床の砦』続編!コロナ禍の最前線に立つ現役医師(作家)が自らの経験をもとに綴った、勇気と希望の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 「臨床の砦」は新型コロナ感染第3波を描いているが、この作品で主に取り上げられているのは、新型コロナウィルスにり患した乗客を乗せたクルーズ船が横浜港に寄港した令和2年2月からの第1波の期間が取り上げられている。長野県にある公立の感染症指定病院、信濃山病院に勤務する医師(肝臓専門医日清、外科医千歳、消化器内科医敷島)の視点から、当時の切迫した状況が描かれている…。

    まだ、ワクチンも治療法もなく何もかも手探り…新型コロナ感染症患者の受け入れに慎重となっている医療機関もあれば、信濃山病院のように「病む人がいるなら断るべきではない」と受け入れを行う医療機関もある…ただ一筋縄にはいかない、だって医師や看護師にだって自らも感染の危険に曝され、そこには守るべき家族もいる…。人的資源、物的支援の絶対的不足に陥りながらも新型コロナ感染症に立ち向かい、また一般診療も並行して行う…どれだけ大変だったか、本当に頭が下がります。肝臓外科医日清が父親のもとへ面会に行った場面と、消化器内科医の敷島と娘の桐子との会話する場面…涙が誘われました。

    昨日新型コロナ感染症が5類になり、たまたま立ち寄った飲食店では体温検知器の電源が抜かれていたりテーブル上のパーテーションが撤去され、なんかいいのかなぁ…とモヤモヤする自分がいたりします。やっぱり、まだ気が抜けない…色々が変わっても、みんなが感染すればまた医療がひっ迫する…私ができること、感染しないように気を付けること!それに尽きますよね。今回、夏川草介さんの作品を続けて読みましたが、代表作の「神様のカルテ」は、相変わらず積まれたまま…読めるのはいつになるのやら(^-^;

    • bmakiさん
      かなさん

      こんばんは!
      こんな本があったんですね。ちょっと興味を引かれました。

      神様のカルテ、私も最初は軽薄な軽い本なんじゃな...
      かなさん

      こんばんは!
      こんな本があったんですね。ちょっと興味を引かれました。

      神様のカルテ、私も最初は軽薄な軽い本なんじゃないか??なんて勝手に思い込んでいて、、、
      世の中のベストセラーって、読書好きの人には受けなかったりすることもありますよね?その手の本かと思っていたんです。

      でも読んでみたらびっくりです。
      本当に素敵な本でした。

      物語も、文章も、語彙も全てが心地良い本でした。

      読まないなんて本当に勿体無いです。
      是非とも読んでいただきたいですo(^o^)o
      2023/05/09
    • かなさん
      bmakiさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。

      もとはと言えば「神様のカルテ」が読みたかったんです。
      そして何とか手...
      bmakiさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。

      もとはと言えば「神様のカルテ」が読みたかったんです。
      そして何とか手に入れて積んでしまうと
      今度は図書館から借りてきた本ばかり読んでしまって…
      そうこうしているうちに、
      夏川草介さんのこの作品や「臨床の砦」が読みたくなって
      図書館で借りてしまい…そんな風になって
      積んでいる本が多くなってしまってます(^-^;

      この作品もその前作の「臨床の砦」もスゴイ作品でした。
      医療ひっ迫の状況が包み隠さず描かれており、
      改めて医療従事者に感謝の気持ちを持つことができました。

      bmakiさんのおかげで
      「神様のカルテ」も読むのが楽しみになってきました(^-^)
      今週末は図書館からは借りずに
      積んである本を読もうかなってちょっと思ってます。
      おすすめ、ありがとうございます。
      すぐにとはいかないけど、読んでみます♪
      2023/05/10
  • コロナが日本で確認された頃、当時はそこまで感染力はないものと楽観していたが、とんでもないことになる。
    緊急事態宣言が発令され、マスクも消毒液も医師の防護服までも無いという状態になっていた。
    医師や看護師の家族は、世間の目を気にしながら生活していたように思う。
    そんな大変な時に長野の病院が、コロナ患者を受け入れている。
    どこも自分の病院の患者が優先であり、コロナの疑いがあると受け入れ無い。
    それに文句を言えるはずもなく、患者はたらい回しに…。
    この長野の信濃山病院の医師たちもみんなが賛成だったわけでは無いが、疲弊していく医師たちを見て見ぬふりはできずに診療科を超えた医師までも協力する。

    文中で「ペストが優れた作品であるのは、感染症と戦った人々の勇気や行動力を讃えたからではない。人間の勇気や行動力など、なんの役にも立たない不条理で理不尽な世界を描いたからだよ」
    とある。
    医師のつとめと言うより人間のつとめだと思う。
    これこそが、誠実なものたちだからこそのことばだったのだろう。

    ちょうどコロナで世の中が未曾有の危機ともいえる時期に「ペスト」を読んだが、すっかり忘れていた。

    • メイさん
      こんばんは、湖永さん。
      いつも、いいねありがとうございます。

      私、医療従事者です。レビューで患者さんがたらい回しという言葉を見て、本当にそ...
      こんばんは、湖永さん。
      いつも、いいねありがとうございます。

      私、医療従事者です。レビューで患者さんがたらい回しという言葉を見て、本当にそうなんだよーと、第七波を思い出してしまいました。私が勤めてるクリニックは発熱の患者さんを受け入れているので、7月8月は大変でした。対応しきれなくてスタックはみんな疲弊してました。(>_>)患者さんも診てくれる病院を必死で探しているという感じでした。この状況を政府に見せたいですね。

      愚痴になってしまい、ごめんなさい。m(_ _)m
      2022/11/27
    • 湖永さん
      こんばんは、メイさん。

      こちらこそ、いつもいいねありがとうございます。
      たらい回しという言葉を安易に使ってしまい、ちょっと気分を害している...
      こんばんは、メイさん。

      こちらこそ、いつもいいねありがとうございます。
      たらい回しという言葉を安易に使ってしまい、ちょっと気分を害している方もいるかと思い反省してます。

      簡単に判断できることではないですし、とても難しいことですよね。

      しかしながら、逼迫した状況でほんとうに医療従事者の方は大変だったと今も思います。

      まったく愚痴だとは思いませんでしたよ。
      メイさん、これからもよろしくお願いします。



      2022/11/27
    • メイさん
      おはようございます。湖永さん。
      お返事、ありがとうございます。

      なんか、私の文章誤解を招いてしまいましたね。ごめんなさい。たらい回しは本当...
      おはようございます。湖永さん。
      お返事、ありがとうございます。

      なんか、私の文章誤解を招いてしまいましたね。ごめんなさい。たらい回しは本当の事ですし、ニュースとかでもよく言ってますし。気分は害してないです。

      これからもよろしくお願いします。
      朝早くからごめんなさい。
      2022/11/28
  • 「臨床の砦」が第3波の物語でしたが、続編はさらに過去のコロナスタート時の話でした。

    あの頃の異様な様子、今でも覚えているし忘れられるものではないですが、地域の中で最前線でコロナと対峙していた医療従事者は、感染の恐怖と疲労と世間のギャップと様々な面で苦しんでいたのだと感じました。

    大義名分があれば世間てあんなに酷くなれるんだなぁと連日医療従事者や感染者、それぞれの家族へのバッシングのニュースを見て、コロナ感染よりこわいなぁと思い出しました。

    今もコロナ対応について医療側と経済側の統合は取れていませんが、引き続き感染対策をして、それでも罹患した場合は大人しく療養しようと思います。

  • 肝臓内科の日進、消化器内科の敷島たちが勤務する、信濃山病院。
    長野県で初めて、新型コロナウイルスの患者を受け入れることになり……。

    コロナ禍初期を描いた、医療小説。

    治療薬もなく、どうやって感染するのかもはっきりしないまま、患者に当たらなければならない、専門外の医師たち。
    一般人はもちろん、医療機関でも危機感に大きな格差がある。
    徹底した感染予防に必要な物資は枯渇し、人材も不足していく。

    筆者はコロナ対応もされている現役医師だけあって、当時の現場の困惑と苦労が、伝わってくる。

    初期にはほとんど陽性の患者が現れなかった長野県で、この大変さ。
    最初から陽性者が増え続け、最初に緊急事態宣言がなされた地域の病院では、これ以上の過酷さだったのだろう。

    改めて、医療機関の献身的な活動に、頭が下がる。

    『臨床の砦』の続編ということだが、時系列的にはさかのぼる。

  • 帯には「臨床の砦」続編とあるが、第三波を描いた「臨床の砦」の前の長野県でクルーズ船の患者の受入、発熱外来やコロナ病床の設置をいち早く決めた、信濃山病院の葛藤を描く。
    大変申し訳ないのだが、「臨床の砦」が文庫化され、そのあとがきを立ち読みで読んだ(購入せずにすいません)。
    そこには、都内で呼吸器内科として働く作者の姉が、消化器内科の作者(本作では多分敷島のことだと思う)に対して、「専門医もおらず、未知のウイルスを受け入れるのは反対だ」のようなことが書かれていた。
    どうやらお姉さんは呼吸器内科の専門医。その専門医でさえも、初期のコロナを受け入れようとする病院はなかった。
    素人が見ても、そこまで専門医のいな公立病院ばかりが都道府県の要請を受け入れ、ある程度陰圧室などの設備がある大学病院が受けれいないことに不満を持っていた。
    大概の人がクルーズ船内の患者だけで治まると言う、客観的な考えだったのだろう。
    その中でコロナ陽性患者と向き合わなければいけなかった信濃山病院の内科の3人。弱い部分を皮肉屋の日進先生が一手に引き受けていたが、他の先生の恐怖もマックスだったと思う。
    内科の3人以外、どこか他人事だった外科の千歳などの協力を得て、信濃山病院はコロナ病床を16床まで広げることが出来た。
    でも、そこまでたどり着く、医師ではなく人間としての葛藤は2年以上たった今でも自分の心を揺り動かす。
    「臨床の砦」以降、安曇野の救急はどうなったのか、気になっていたが、プロローグに書かれている2022年5月時点では、かなり診療にも慣れて落ち着いているように見える。
    本の発売された8月下旬も、第7波が収束傾向。
    しかし、本当に減ったのか、全数を止めたことによる現象なのかは分からない。
    8月上旬には薬剤が足りないことも、問題になっていた。
    作者は私たちにコロナの最前線を伝えながらも、今も医者として前線で闘っているのだろうか?
    私たちの為に、身を削って働いてくれている作者に心より敬意を払いたい。

  • 新型コロナが第5類になった今、少し落ち着いて過去を振り替えらる作品。報道で知ったいたハズが、実は全く知らなかった医療現場の現実が分かる。
    後半、敷島医師と娘とのやりとりに感動。

  • 感想
    それぞれの視点は異なるが、内容は臨床の砦と同じ?読んでいて既視感が拭えない。

    現場で頑張る医療関係者が社会から避けられるなんて異常事態。

    周りの病院も大学病院も患者を受け入れない。医師だから患者を見なければいけないのか?医師に逃げる権利はないのか?最後は個々人とトップの決断に委ねられてしまう。色々考えさせられる。

    あらすじ
    臨床の砦と同じシリーズ。肝臓内科医である日進が気が進まないながらもコロナ患者に立ち向かう様が書かれている。他には外科の千歳、消化器内科の敷島の目線から語られる。

  • 【収録作品】プロローグ/第一話 レッドゾーン/第二話 パンデミック/第三話 ロックダウン/エピローグ

    『臨床の砦』続編。第一波を振り返る形で書かれている。視点人物は、肝臓内科の日進、消化器内科の敷島、外科医の千歳。
    現場とそれ以外の場所での緊張感の乖離。これは現実。今も終息したとは思えないけれど、慣れは恐ろしいというべきか。第一線で戦ってくれている人たちのことをもっと考えないといけないと思わされる。想像力の欠如が怖い。

    これらの新型コロナ小説は、時代の証言である。

  • 感染者数を聞くにしても、現場で闘っている人たちと、外の人とでは、数字の温度感が違う。中身を知らないのに知った気になっている人もいる。

    困っている人を助けるのは、医師だからではなく人として。
    こうやって誠実に、日々闘ってくれている人たちがいるんだと。

  • 臨床の砦の続編。
    どちらかというと、本当にコロナの始まりのころ。
    本当に、医療機関当事者とそれ以外の意識差は本当に大きかったと思います。
    感染するよりも、批評の方が怖かったことも、今のように言えなかったことを思い出しました。
    お話しとしても、医師たちが本当に素敵です。

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著者プロフィール

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作は10年に本屋大賞第2位となり、11年には映画化もされた。著書に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『新章 神様のカルテ』『本を守ろうとする猫の話』『始まりの木』『臨床の砦』『レッドゾーン』など。

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