日本語防衛論

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093881760

感想・レビュー・書評

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  •  グローバル社会の中で日本語の存在を守り抜くべきであるという立場である。内容には賛同すべき点が多い。日本語に限らず言語というものはその国の文化そのものであり、それを容易に他の言語に置き換えられるものではない。また、英語を中心としたヒエラルキーが現存するのも事実であり、日本がそのいみでディスアドバンテージをもっていることも事実だ。
     しかし、本書の言う文化的鎖国の提唱はセンチメンタルな印象しか持てない。非現実的な提案である。日本語を世界に広げるために国家的な政策を打ち出すべきだという提案の方が実効性があり、その方が意味があると思う。
     言いにくいことを言ってくれているのがこの本の面白さであり、大方の読者の期待するところなのだろう。ここまでの極論の実現は不可能だとして英語ができれば何でもできるといった幻想から立ち返るためには有効な一書である。

  • ユニクロや楽天が行なっている(たぶん、いつまでも続かないでしょうけど)英語の社内公用語化に象徴される英語支配の現状に警鐘を鳴らし、"日本語防衛"の方法を提言する本です。

    書名の"防衛"は比喩ではなく、文字通り国防の意味です。このままの趨勢が続くと日本が滅びるというほどの危機感に、著者は突き動かされています。なにしろ、最初の一文がこうです——。

    戦後、日本人は「愛国心」と「防衛意識」を完全に失ってしまいました。それを回復しようとして、私はこの「日本語防衛論」を書きました。日本語を愛すること、護ること。これが日本を愛する、護る第一歩です。日本の国防にはまず日本語の防衛が必須です。(序文。P.4)

    ついていけないかなと思いましたが、展開に説得力があり、いまの日本の言語状況は危険だと思うようになりました。とくに、「自己植民地化意識」の指摘は真剣に受け止めなくてはならない指摘だと思います。


    法律で日本語を護らなければならない(P.176)、という指摘は、この本を読む前なら突拍子もないと感じたでしょうが、英語社内公用化によって日本人が社内で日本語を使う言語権が奪われている現状を考えると、たしかにそういう必要もあるかもしれないと思えてきます。フランス、ポーランド、スウェーデンなどの例も紹介されています。

    2006年、EU首脳会議でフランス代表者が英語で演説したことに怒って退席したシラク大統領(当時)のことばが印象に残りました。

    一つの言語・文化による世界の支配など到底認められない。多くの言語があることはEUにとって確かに負担である。しかし、各国の存在意義はそこにあるのだ。(P.183)

    ちなみに、話者人口を見ると日本語は世界で第8位、1億2500万人(2.1%)。これだけの人口があるからこそ、すぐれた文学作品も生まれたし、さまざまな知見が日本語で発表されているわけです。そのことにもっと感謝し、自信を持ち、母語を護る必要があると思わされました。良い本に巡り会えました。

著者プロフィール

1950年神奈川県生まれ。筑波大学名誉教授。長崎大学助教授、
名古屋大学教授、筑波大学教授を歴任。南イリノイ大学大学院
スピーチコミュニケーション学科博士課程修了
(Ph.D. in Speech Communication, 1985)。
主な著書に、
Language Inequality and Distortion(1986, John Benjamins, オランダ)。
『英語支配の構造』(1986、第三書館)
『侵略する英語 反撃する日本語」(1996、PHP研究所)
『グローバル・コミュニケーション論』(共編著)(2002、ナカニシヤ出版)
『英語支配とは何か』(2003、明石書店)
『英語支配とことばの平等』(2006、慶応義塾大学出版会)
『日本語防衛論』(2011、小学館)
『日本語を護れ!』(2013、明治書院)
がある。

「2023年 『日本語肯定論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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