逆説の日本史6 中世神風編(小学館文庫): 鎌倉仏教と元寇の謎 (小学館文庫 R い- 1-6)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094020069

感想・レビュー・書評

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  • (「BOOK」データベースより)
    「神国」ニッポンは元冦勝利の“奇蹟”により何を失ったのか?!鎌倉幕府滅亡の背景を掘り起こしながら、責任の所在が曖昧で、危機管理能力が欠落しているという現代日本の病巣の淵源を明らかにする。昨今の有事論争をまつまでもなく、この国の今を生きるものにとって示唆的な警世の書、待望の文庫化。

  • 鎌倉仏教と元の謎

  • あとがきで、井沢氏が書いている、宗教に対する謙虚な姿勢には好感がもてる。
    元寇を分析する事で、現代の有事に備える視点でも大事だと思う。

  • 井沢節のさえ渡る逆説の日本史シリーズ第6巻。
    この巻では、鎌倉仏教の勃興~元寇~鎌倉幕府の崩壊まで。
    前回読んだのは学生時代で、あれから7年経つが
    前はまったく分からなかった鎌倉仏教が案外スラスラ読めた。



    井沢氏の言うように
    従来の歴史学の宗教無視は酷いと思う。
    自分が宗教を信じないのは自由だが、昔の人は信じていたし、だから宗教は歴史にも大きな影響を与えた。これを忘れてはいけない。



    この巻の前半を読めば宗教に関する基礎知識が身に付く。
    例えば、仏教とは輪廻からの解脱を目的にしたものであり、決して他者を救済するものでは無かったが、時代は下って南無阿弥陀仏で有名な浄土宗となると、阿弥陀仏は誰をも救ってくれるという事が決められている。


    このように、仏教思想の変遷を辿る上で非常に勉強になる一冊。

  • ご本人とその政治的主張は非常にクセがあり(マイルドに言って)、好き嫌いが別れそうですが、彼の通史は本当に面白い。「怨霊信仰+コトダマ+ケガレ忌避+和の精神」という日本人の宗教観をベースに古代史から現代までを新たな視点で考察しています。粗い・甘い箇所もあるけど掛け値なしに面白く、目から鱗。考えさせられます。

  • 第六巻。
    鎌倉新仏教の読み解き、
    元寇、そして後醍醐天皇と倒幕の動きを
    「なぜそうなったか」というところを焦点を当てて
    描く。

    とりわけ、鎌倉新仏教、というより、仏教、それも
    そのルーツから日本に入ってきてどうなったか、
    というところが非常にわかりやすく、納得いくかたちで
    提示してくれている。

    釈迦の修行にはじまった仏教が、大乗仏教と上座部仏教に
    分かれ、それが日本に入ってきて
    「造り變へる力」が働いた結果、どうなったか。
    浄土宗の法然ののち、浄土真宗(一向宗)の親鸞にいたっては妻帯を公然と
    おこなった。
    著者は、これはキリスト教に近い慈悲・平等になっているものの、
    あくまでキリスト教と違うのは「造物主」ではなく「縁起説」に基づく
    ところであるとする。
    そして、組織化した活動とすることに、親鸞は否定的であり、
    すなわち、それは社会の中で放っておけば埋もれる運命にあった。
    だが、のちに蓮如という敏腕宗教組織マネジャーが現れることで、
    この運命が変わっていく。

    一方、このような思想は実力本位の武士たちにはなじむものではなく、
    彼らに受け入れられるようになったものが禅である。
    栄西の臨済宗は、この武士・権力とうまく付き合うことを選び、
    根付いていった。
    だが、それは仏教本来の修行道に反すると思った道元の曹洞宗は
    坐禅主体の自己修行スタイルを求めていく。
    これもまた、浄土真宗と似た、というか、スタイルはまるで違うのだが、
    放っておいたら組織化はされず、朽ちる運命にあったというところがある。
    それを、瑩山が、こちらも敏腕マネジャーとして寺を作り、布教に
    努めたために、のちのちにまで組織拡大が達成される。

    単純化した解釈、あるいは特定の思想に依拠する歴史観では
    「この宗教は人々に受け入れられ、発展しました」
    となってしまうが、
    大局的、かつ時代特殊性をよく考えて歴史を見てみれば
    「ほっといたら消えそうな元祖流を、別の敏腕組織マネジャーが
     見事に組織化させることに成功した」
    という構造が見えてくる。

    なるほど、宗教とは、「カミ・ホトケ」的なところに始まるのに
    現実社会の組織の話と非常に深く関係するということが理解できた。

  • チクチク作業邁進の煽りを食らって(?)、ちょっと時間がかかってしまった「逆説の日本史」読書。  ようやく第6巻を読了しました。

    冒頭で KiKi は「チクチク作業邁進の煽りを食らって(?)、ちょっと時間がかかってしまった『逆説の日本史』読書。」と書いたけれど、今回の読書に時間がかかってしまったのにはそれ以外にも理由があります。  それは冒頭3章の仏教の歴史を俯瞰した部分で、ここの内容が仮に著者が言うように「表層的」であったにしても実に読み応えのある部分だったからです。  著者が歴史学会のお歴々をメッタギリにして悦に入っている感もあるこのシリーズの中で、それらのちょっと過激な(に見えなくもない)権威筋に対する攻撃性がなりをひそめ、KiKi には極めて読みやすい文体(要するに著者の自己主張の薄い文体)で要約してあり、読み飛ばす余地がほとんどなかったんですよね~。

    対して後半3章は「逆説の日本史スタイル」に戻ろうと抗っている感がそこかしこに見られ、文章自体もかなり粗雑な印象を受けます。  そうであるだけに、後半3章に入って「斜め読み体制」と言うか「読み飛ばし体制」に逆戻りし、そこからは一気に読了した・・・・・そんな雰囲気がなきにしもあらず・・・・です。



    元寇の話題に関しては、我々は「元寇」と呼びあたかも元国の正規軍が攻めてきたかのような印象を持ちがちなあの戦役において、元が遣わした軍団が今日で言う「多国籍軍」であり(要するに史上最強軍団そのものではなかった)というあたりがちょっぴり「へぇ!!」で、それ以外の部分はさほど目新しい話、「逆説的なアプローチ」はないのかなぁ・・・・・と。  

    そして後醍醐天皇の登場と同時に久々に「言霊信仰」だの「ケガレ」だのという著者の論旨の骨子たる部分が復活(笑)。  まあ、そのあたりもそういう展開になるだろうということは想像に難くもなかったりしたわけで、尚更、飛ばし読みモードに拍車がかかりました。

    ここまで読み進めてきて痛切に感じるのは、ことさらに「逆説」を強調し、学会等の権威筋に喧嘩を売り、時に感情が赴くままに「自己陶酔型文章」を書く彼のスタイルにある種の「ファッション」というか「ポーズ」のようなものが漂っている・・・・・ということでしょうか。  彼の描く歴史観及び目の付け所は面白いだけにそのポーズが何となく「受け狙い」「売れ狙い」という感じがしちゃうんですよね~。

    この巻の最初の3章では「へぇ、井沢元彦ってこんな文章も書ける人だったんだ」と感じただけに、ちょっと意地悪な見方かもしれないけれど、この逆説シリーズの基本基調に対してKiKi にはある種の不自然さ・・・・みたいなものがあるように思えてしまいました。  

    もっとも・・・・・・

    逆に言えば最初の3章に関しては「井沢元彦なりの考察が書かれているか?」と問えば、「否。  先達の教えを整理してまとめたもの」という感じもなきにしもあらず・・・・・(苦笑)  でも、「整理してまとめる」という作業にしろ、そこそこの知性と忍耐力がなければこれだけの内容のものはそう簡単には書けないんじゃないかと思わせてくれるあたりは、さすがとしか言いようがありません。

    さて次は「太平記」の世界を扱う第7巻です。

  • 宗教って元もと難しいものだと思うけどそれを一般の人に広めていく過程で受け入れやすい形に変質していく様がよく描かれていた。

  • この巻では前半を使って、仏教の歴史とそれが日本に入ってくる過程を解説しており、勉強になった。

    目次
    第1章 鎌倉以前の仏教編
    第2章 浄土門の聖者たち編
    第3章 道元と日蓮編
    第4章 元寇と日本人編
    第5章 後醍醐天皇の野望編
    第6章 後醍醐天皇の新政編

  • 禅宗が近代化に及ぼした影響や、神風が日本の防衛意識に及ぼした影響など、興味深い。

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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