- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094064223
作品紹介・あらすじ
みずみずしい感性が光る永遠の恋愛小説集
「ひとつ例にとると、『傘を探す』という作品。僕はこの、失われた雨傘を探して夜の街を、人から人へとめぐり歩くストーリーをいまでも面白いと思います。
もし若い佐藤正午がこれを書いていなければ、いま僕の手で新たに挑戦してみたいくらいです。
短編集『夏の情婦』を読み返して、この五編がいずれも、書くべきときに書かれた小説である、と三十年後のいま思える、それが僕の率直な感想です」
(本書「三十年後のあとがき」より)
「鳩の撃退法」、「月の満ち欠け」と、次々に小説読みたちを唸らせる傑作を発表し続けている著者が、「永遠の1/2」でのデビュー直後に執筆した恋愛小説五編を収録。
「傘を探す」の他には、小説賞を受賞した三十一歳のぼくがネクタイを介して大学生の自分と年上女性との恋愛を追憶する「二十歳」、男と女のフラジャイルな関係を気だるい夏の残暑のなかに再現してみせた「夏の情婦」など。
いずれも恋愛をテーマにしているものの、その語り口は変幻自在で、すでに「小説巧者」の片鱗をうかがわせる作品ばかりだ。
解説は著者の長年の熱烈な読者である中江有里さん(女優・作家)が執筆している。
【編集担当からのおすすめ情報】
佐藤正午氏ほど同業者や編集者に隠れファンが多い作家を知りません。
それは彼がずっと小説に対して技巧的な挑戦を続けてきたからに他なりません。
そんな佐藤正午氏と小説に関して話すときいつも話題に上っていたのがこの小説集です。
寡作な作家であるため、近年あまり短編小説を発表する機会は少なくなりましたが、実は小説に対するテクニカルな試みは、この初期短編の頃から続けられています。
そして、この小説集の再刊行は、佐藤正午氏のたっての希望でもありました。
後世に残る永遠のスタンダードともいうべきこの一冊、ぜひご一読ください。
感想・レビュー・書評
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短編5
二十歳
札幌での怠惰な学生生活
ネクタイ、年上の彼女と写真館へ、
夏の情婦
家庭教師、バッティングセンターの彼女
片恋
高校時代の片思い、未熟だった自分
傘を探す
義兄の借りた傘 妊娠
恋人
過去交際60人のモテ男、最後は猫好きの美容部員と事件詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
やや寡黙な青年が主人公の短編5編。とてもリアルに感じられ、また、作者が同年齢の頃に書いた小説でもあることで、本人の自伝ではないかと思いながら読んだ。
男目線での恋愛小説は主人公が寡黙な人であるならある程度モテなければ物語にならないと思うが、そんな願望も含めて楽しく読めました。傘を探して出会いを重ねる「傘を探す」が一番印象に残る。 -
恋愛って、とことん自分勝手なものなのかもしれない。
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社会的には、そしておそらく女性から見たらダメな部類に入る男の恋愛を描く短編集。
みんなどことなく投げやりで、でも不思議と女性にモテて、だけど最後まで思い通りにはいかないところが良いなあ。デビューした頃に何冊か読んで以来久しぶりの佐藤正午さんだったけど、若い時には感じなかった味わいがあるかも。
もう少し別の作品も読んでみようかな。 -
f.2022/1/3
p.2021/4/12 -
良すぎるというか好みの人だった。
遠野さんと似ているなと思ったら「恋人」に出てくる、面倒さ、鬱陶しさを覚える女も同じように書かれていると思った。そしてやはり主人公は身体を鍛えている。客観的で理論的で、ある人から見れば冷酷な、そういう考え方が好きだと再認識した。そうして感情的な女の部分に迷う。 -
1988年刊行の恋愛短編集。登場する2〜30歳代の男たちは、2020年現在だと…
一括りにできるものでもありませんが、この世代の男性たちの、女性へ向ける熱量には、現実世界でも驚かされています。
今なら「ズルイ」「ひどい」「倫理観が…」と言われてしまうだろう男たちの振る舞いが、身近にいないタイプなのに不思議と鮮明に、生々しく浮かびました。
主導権が自分にあると思っているのに、結局女性に振り回されているところには愛しさも感じました。
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著者:佐藤正午(1955-、佐世保市、小説家)
解説:中江有里(1973-、大阪市、俳優) -
どれも面白かったけど、特に「傘を探す」が秀逸。姉への近親相姦を思わせる秘めた思慕と、そんな姉を奪い取った義兄への憎しみ。そんな複雑な思いを相変わらずのシニカルなタッチで描いていく。それから巻末に収録された著者自身による「30年後のあとがき」もよかった。作家はいつも「今、この瞬間」を書くのだ、という強い決意。彼の文体に惹かれるのはその緊迫感が滲み出ているからだ。世に溢れる凡百の流行作家とは隔絶している。この点では作風は全く異なるが、村上春樹と通じるものがある。
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1作目のネクタイ結べない男の話は最初からめんどくさくて読むのをやめ、本のタイトルの作品は全部読んだけど、全くおとしろくなかった。
他の作品は読まずに図書館に返却。