本を守ろうとする猫の話 (小学館文庫 な 13-5)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094066845

作品紹介・あらすじ

「お前は、ただの物知りになりたいのか?」 夏木林太郎は、一介の高校生である。幼い頃に両親が離婚し、さらには母が若くして他界したため、小学校に上がる頃には祖父の家に引き取られた。以後はずっと祖父との二人暮らしだ。祖父は町の片隅で「夏木書店」という小さな古書店を営んでいる。その祖父が突然亡くなった。面識のなかった叔母に引き取られることになり本の整理をしていた林太郎は、書棚の奥で人間の言葉を話すトラネコと出会う。トラネコは、本を守るために林太郎の力を借りたいのだという。 お金の話はやめて、今日読んだ本の話をしよう--。 感涙の大ベストセラー『神様のカルテ』著者が贈る、21世紀版『銀河鉄道の夜』! 【編集担当からのおすすめ情報】 米国、英国をはじめ、世界35カ国以上で翻訳出版されているロングセラー、待ちに待たれた文庫化!「おじいさんは、ここですばらしい古書店を開いている。魅力ある書物をひとりでも多くの人に届けるためにな。そうすることで歪んだものが少しずつでも真っ当な姿に戻るのだという信念がある。それがすなわち、おじいさんが選んだ新しいやり方だ。華々しい道のりではないが、おじいさんらしい気概にあふれた選択ではないかね」--本文より

感想・レビュー・書評

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  • 「まず第一に、祖父はもういない」
     小説は冒頭の掴みの一文が重要であると思う。この一文で引き込まれるか、引き込まれないか、この先を読もうと思うか思わないかが分かれると思う。
     凄いセンスのある冒頭の一文に多く出会ってきた。町田その子さんや川上未映子さん、柚木麻子さん、村上春樹さんの小説。それからトルストイの「アンナ・カレーニナ」や夏目漱石の「吾輩は猫である」。
     夏川草介さんのこの小説のこの「まず第一に、祖父はもういない」という冒頭の一文はシンプルで飾り気がない。けれど、その一文で主人公が祖父を亡くしたという事実と失望と悲しさと諦めとその事実に向き合おうとする強さとそして、何より主人公とこの作家の「誠実さ」が伝わってくる。 
     そして、もう一箇所とても好きな文がある。それは主人公夏木林太郎が亡くなった祖父を送り出したあとに残されていた
    「負債と言うには当たらないが、遺産と言うほどの価値もない。
    『夏木書店』という名のそれは、町の片隅にある一軒の古書店であった。」
    遺産ってそういうものなのだろうなと思う。金額ではなくて、亡くなった人が心をこめて生涯をかけて築いて守ってきたもの。他人から見たら「負債」というほどではないが「遺産」とも呼べないそれを真正面から受け止めているこの文にも誠実さが感じられる。
     夏木林太郎の両親は林太郎が幼い頃に離婚し、さらには母親が若くして他界したので、林太郎は古書店を営む祖父に引き取られた。そしてその祖父も林太郎が高校生の時に突然亡くなった。
    もともと、冴えないルックスで勉強も嫌いで、運動神経も悪く、無口で友達も少なかった林太郎は祖父の古書店に引き籠もって本ばかり読んでいた。
     だけどそんな林太郎を心配してくれる友もいた。一人はバスケ部のエースで3年生で成績トップでルックスもよく、生徒会長も務め、読書家でもある、秋葉先輩。そんな人気者のスーパーマンなのに彼は世間の流行り廃りを全く無視した林太郎の祖父のこだわりの古書のラインアップを見て「本当にここにはいい本が並べてある」と褒めてくれる。そしてその古書店の本に詳しい林太郎にも一目おいている。
     そして、もう一人林太郎のことを心配しているのが学級委員の柚木冴夜で、彼女は不登校の林太郎の下へ学校からのプリントなどを届け、厳しくも爽やかな口調で林太郎のことを励まし続ける。
    ある日、林太郎が落ち込んでいる時、言葉を喋る猫がやってきて、「本を助け出すために力を貸してほしい」と言った。
    猫について店の奥に行くと、本当になら突き当りの壁があるはずのとこに奥深く通路があり、光が溢れ、ファンタジーの世界に来た。
    第一の迷宮は本を「閉じこめる」暴君から本を開放すること。世界一本を読む忙しい人で、一ヶ月に100冊というノルマを達成し、読んだ本を次々にショーケースに閉じ込めていた。そんな暴君に林太郎は勇気を持って「本当に本が好きな人はそんなことはしないものです」「あなたは自分を愛しているだけで本を愛しているわけではない」と論破する。
     二つ目の迷宮には「本を切り刻む」暴君がいた。大好きだというベートーヴェンの第九を大音量で流しながら、リズミカルに挟みを動かしていた。その本の内容が「要約された」一文だけを切り取ればいいのだと。そうすれば沢山の人が沢山の本を「読んだことに出来る」のだと。そこで林太郎は彼の聴いている「ベートーヴェンの第九」を早送りし、「こうすれば沢山聴けるけれどこれでいいのですか」と言う。本をゆっくり読むことの大切さを説得できたのだ。
     第三の迷宮には「本を売りさばく」暴君がいた。「売れる本」を売らなければ、本屋や出版社は潰れる。売れる本を作ってどんどん売りさばいて、利益をあげるのが良い。「本は消耗品」だと言って、売れなくなった本をどんどん窓から放り投げていた。そんな暴君に林太郎は「あなたはいくら儲かれば満足するんですか。祖父が言ってました。お金の話を始めると際限なくなる。だからお金の話はやめて今日は本の話をしようって。本当に本が好きな人は本が消耗品だなんて言ってはいけないんです」と論破した。
     三つの迷宮の暴君は林太郎に論破されて、心を入れ替えるが、読んでいるとモヤモヤした気持ちも残る。
     何故って、どの迷宮の暴君も正しくはないが、間違ってもいないと思えるからだ。
     本が好きな人は世界中の本を読みたいと思うし、一冊丸ごと読むことが時間的に無理なら部分的にでも読みたい、そして美術品のように美しい本を飾りたいと思うから第一の迷宮の暴君の気持ちは分かる。また、流石に本を「切り刻む」ことはいけないが、色んな本のダイジェストを集めた本もあり、それらを読んだことをきっかけにして、一冊の本を読む人もいるから、第二の暴君も間違ってはいない。
     また、実際に本が売れなくて出版社や本屋が潰れたら、結局本好きの人が困るので「売れる本」も作ってほしいと思う。それに、「売れる」ライトや本をきっかけに読書にはまって、次第に難しい本を読むようになる人も多い。だから、売れる本ばかりをつくる第三の迷宮の暴君も本を残すことに貢献している。
     ではこの三つの迷宮の暴君が「間違ってない」のに不愉快なのはどうしてか。
     その秘密は最後の迷宮で明かされる。最後の迷宮では本ではなく、柚木冴夜という友達を助けに行く。目立たない、パッとした取り柄もない、ただの無口で本ばかり読んでいる引きこもりの高校生、林太郎。こんなに自分に自信のない林太郎のことを本気で心配してくれる学級委員の冴夜。人の地味な長所を褒めてくれる人には本当に心がある。その冴夜を林太郎は助けに行ったのだ。
     この本に出てくる世界の歴史に残るような名著を殆ど私は読んでいないのだが、夏川さんによるとそれらには立派なことではなく、人間の普遍的なことが書かれているのだそうだ。昔からの普遍的なことが書かれているからこそ、後世に残さねばならない。とここまで書いて、残すならお金のかかる紙媒体でなくても「電子書籍」や「オーディブル」があるではないか。となる。大いに歓迎。「オーディブル」をきっかけに文学に目覚める人もいるであろうし、「保存」するには紙媒体よりも電子媒体のほうが安全で場所も取らない。
     けれど、電子書籍やオーディブルで済ます現代人は、食べることを我慢して、古本屋で本を買って読んでいた林芙美子のように読書が血肉となっているだろうか。
     林太郎の祖父は「本を読むことは山を登ることと似ている」と言った。「読書はただ愉快であったり、わくわくしたりするだけではない。ときに一行一行を吟味し、何度も同じ文章を往復して読み返し、頭をかかえながらゆっくり進めていく読書もある。その苦しい作業の結果、ふいに視界が開ける。長い長い登山道を登りつめた先に視界が開けるように」
    そういう読書はやっぱり、紙の本だなと私は思う。そして、林太郎の祖父はそんな富士山やエベレストやヒマラヤ級登山に似た読書感を得られる「売れない本」を売る古書店を大切に守ってきた。
     世界の普遍的なことを書いてきた先人達が亡くなってもその言葉が「本」という形で遺っているように、林太郎の祖父が毎日掃除し、地味に大切にしてきた古書店も祖父という人そのものとして遺った。その古書店を林太郎が受け継いでいくことにして良かった。




  • 全世界に出版されてんねんな。
    「神様のカルテ」の作家さんやけど、部類の本好きなんやな。

    「"人を思う心"、それを教えてくれる力が、本の力だと思うんです。…」

    そういう私はどうか?
    まず、古典とか昔の名作も読まんし…
    積読本多いし、再読はしてない…

    血ドバドバばっかりで…
    教えてくれるの?
    既読本達よ〜!
    …いや!教えてくれてる!
    ナイフであの部分なら、助かるとか…
    あれ飲んだら、ヤバいとか…
    いざと言う時、人を思う…
    う〜ん…説得力が…(^◇^;)

    最近、本読む人が減って来て、本さんも危機感あるんやろな。それも安易な自己啓発とかノウハウとかやなく、古典的なのを読んで自身を磨けと!

    但し、本読むだけではダメで、頭の中で考えるだけやなく、まずは、自身で一歩踏み出す事!つまり行動する!
    (ヤバい本は除く!私はヤバい…^^;)

    古典の難しいのも挑戦してみよかな…^^;
    難しいと思ったら、新しい事が書いてある!

    とかなんだかんだ言ってないで、好きな本を読んで楽しめば良いかな〜
    それが一番!人の意見に惑わされる事なく、自分の好きなようにしよ〜
    (惑わされて、フラフラのコメント書いといて、言うな!って思うけど ^^;)

    • ultraman719さん
      こんばんは!

      少し茶化し過ぎて…こんなんですねって言われると辛い気が…^^;
      純粋に本が好きな少年の話です。
      色んな人を救います。原点に戻...
      こんばんは!

      少し茶化し過ぎて…こんなんですねって言われると辛い気が…^^;
      純粋に本が好きな少年の話です。
      色んな人を救います。原点に戻すのかな。

      更に、現在の本への偏重を憂いているような。
      時代を超えて、生きてきた作品には、素晴らしい事が書かれていて、色褪せることない。
      但し、それはあくまでも、答えではなく、道しるべ。
      自身で踏み出す為の助言みたいな。
      癒されますよ。

      ん…まとまり悪くすみません。
      2023/09/24
    • yukimisakeさん
      こんにちは、わざわざ再度のレビューをありがとうございます!
      すみません(;_;)
      益々気になりました!たまにこういうのでガツンと浄化されたい...
      こんにちは、わざわざ再度のレビューをありがとうございます!
      すみません(;_;)
      益々気になりました!たまにこういうのでガツンと浄化されたいんですよね。

      これからも宜しくお願いいたします。
      2023/09/25
    • ultraman719さん
      私、浄化されたら、消滅するかも?笑
      私、浄化されたら、消滅するかも?笑
      2023/09/25
  •  題名に「本」と「猫」が入っている。しかも古書店が舞台だ。これは読まねばと思い読み始めた。作者は「神様のカルテ」(未読)を書いた夏川草介氏。

     読み始めたら、ちょっと異世界モノのようなファンタジー系でもあるような感じがした。しかしラノベではない。軽くないのだ。むしろヘヴィーな物語だと思う。 「本には力がある」というフレーズが気になる。というよりも気に入った。思うに自分は最近、あまり力のない本ばかり読んでいるような気がしてならない。
     
     また、ブクログのレビューに駄文を書き散らかしていることも反省せねば。あと巻末の「解説にかえて」は、作者の本に対する愛が感じられる。ここ必読です。

  • 2.22…ニャンコの日だなぁと思いながら読んでいたら、いつものように知らない間にウトウト。日付けが変わってました(笑)

    著者のあとがきが良かったです。
    「本から多くの大切な事柄を、私は教わってきた。優しさとはなにか。価値とはなにか。正義とはどうあることか。生きるとはいかなる在り方か。」
    「切実な問いに、本は「答え」を与えてくれるわけではない。けれども答えを見つけるための「道しるべ」はきっと示してくれるに違いない。」
    いまの話題の本もいいけれど、時代を超えて長く読み継がれている本をもっと読んでいこうと心に刻みました。

  • 医療シリーズを読んできた夏川氏の本と思い購入したが、全く予想外の内容。言葉を話す猫からの依頼で本を助け出すというファンタジーな内容だった。世界35ケ国で翻訳された記録的ベストセラーとも裏表紙に記載されていたが、何が受けたのだろうか。子供用の内容でも無いし、かと言って深いかと言われると・・
    本屋の祖父に引き取られた引きこもり気味の高校生。祖父が突然亡くなり、会ったこともなかった叔母に引き取られることに。話しができる猫が現れ、主人公に助けを求める。
    何万冊もの本を読んで並べる人や、本の一部のみ切り取って速読させる人など出てくるが、本好きの主人公が本の読み方を諭して解決する。
    難解な問い掛けなのにあっという間に解決して行く手法はどうなのだろうか?
    本に関して哲学的な作者の思いが感じられるが、個人的にはあまり刺さらなかった。

    • Hachiroさん
      今第二章まで読んだところなんすけど、まさに同じ感想。残りの章どうしようかなあ、
      今第二章まで読んだところなんすけど、まさに同じ感想。残りの章どうしようかなあ、
      2023/10/20
    • 浩太さん
      修行と思って読むか、いっそ止めるか。世間の評価が良いと、その先が面白いか、と迷うところです。
      修行と思って読むか、いっそ止めるか。世間の評価が良いと、その先が面白いか、と迷うところです。
      2023/10/20
    • Hachiroさん
      お返事ありがとうございます。
      半分弱は読みましたのでまあいずれは最後まで読むかとは思いますが、他に興味が移れば当分先送りになるかも。
      お返事ありがとうございます。
      半分弱は読みましたのでまあいずれは最後まで読むかとは思いますが、他に興味が移れば当分先送りになるかも。
      2023/10/20
  • 「本」に対する在り方を、考えさせてくれる名書。
    本と人の心の関係がどうあるべきか、教えてくれる。

    祖父が亡くなり、古書店に取り残された主人公、夏木林太郎。そんな林太郎が不思議な喋る猫に出会い、本を救う冒険に出る。…
    簡単にあらすじを述べるとこうなってしまうが、本当にこれだけではない。
    たくさんの本への道筋、読者が新しい冒険に出るための布石が敷き詰められている。

    世界的名著…、恥ずかしながら私は、ほんの数冊も手に取ったことは無い。
    高校生の頃、世界史の知識として詰め込み、大学に入ってからも、ちょこちょこタイトルは聞いていたはずなのに。
    この歳になってわかる。高校生の頃大苦戦しながら叩き込んだ文化史は、触れるきっかけのためにある。
    それなのに、何故か手に取ろうとしなかった。
    明治文学も、読もうとしてみたものの、文体が難しく、数ページで諦めてしまった。
    読んだのは、こころくらいだ。

    おかげで、夏川さんがあとがきで言われているような仕掛けには、なーんにも気が付かなかった笑。

    だから、夏川さんの策略に乗って、名作に触れてみようと思う。まずは、最近名言が刺さったゲーテかな。
    中高生の頃に課題図書だったものの、真面目に読まなかった老人と海、クリスマス・キャロルも本棚にある。読もう。

    • ゆうさん
      私も夏川さんの仕掛けには一切気づかずどこか悔しさと自分の無知さを思い知らされたので、世界的有名な本を手に取ってみたいなと思いました
      私も夏川さんの仕掛けには一切気づかずどこか悔しさと自分の無知さを思い知らされたので、世界的有名な本を手に取ってみたいなと思いました
      2024/04/12
    • ゆうりさん
      ゆうさん、コメントありがとうございます。
      まず、家にあったカフカ「変身」から読んでみました(*´꒳`*)
      次は、老人と海にしてみようかなと思...
      ゆうさん、コメントありがとうございます。
      まず、家にあったカフカ「変身」から読んでみました(*´꒳`*)
      次は、老人と海にしてみようかなと思っています(*´ω`*)
      2024/04/15
  • 唯一の家族であった祖父が、高校生の林太郎に『夏木書店』という古書店を残して、突然亡くなってしまった。
    「閉店」の札がかけられた店の奥に、翡翠の目をした一匹のトラネコが突然現れ、本を助け出すために力を貸してほしいと言う。

    人間の言葉を話すトラネコのトラと林太郎が迷宮を乗り越えていく、壮大なファンタジー。
    本を愛する人たちへの、熱いメッセージが込められていて、たくさんの哲学的な言葉にも触れることができます。

    書棚の奥に開かれる扉は、静かで奥行きのある本の世界を象徴しているかのようで、作者の本に対する強い愛情が感じられます。
    そして、無気力で引きこもりがちだった林太郎が見事に成長していく、清々しい物語でした。

    「本には心がある」
    その心を見失わないように、自分自身を養い続けたいと思う。
    本の世界には果てがないのだとつくづく思います。

  •  主人公の高校生・林太郎は、古書店を経営する祖父が突然他界し、孤独の身に…。
     そんな彼の元に1匹のトラネコが現れ、本を救うために「お前の力を貸りたい」と唐突に言われて、物語が動き始めます。
     猫と共に迷宮世界に入り、相手と共に本についての持論を展開しながら、「閉じ込められ、切りきざまれ、売りさばかれる本」を救っていきます。
     迷宮を乗り越えられたのは、結局のところ林太郎の本好き・優しさと祖父の教えでしょうし、最後は女の子も救っちゃいます。
     林太郎くん、カッコいー!
     引きこもりの林太郎に勇気をもたせ、一歩踏み出させたのは、猫であり祖父だったのですね。そして最後の最後には自分を救ってますね。
     本書はファンタジーの装いに留まらず、随所に著者の世界名作書愛・読書愛に溢れ、出版業界の課題や世の中の風潮へも課題提示してくれる深さも持ち合わせているようです。
     本は、時空を越えた様々な世界へ誘うだけでなく、他者への思いを馳せる想像力をもくれる良さがあるのだと、再認識できました。

  • 人の言葉を話すトラネコと、唯一の家族である祖父を亡くした高校生の夏木林太郎が本を守るために迷宮に挑むファンタジー。

    林太郎の成長する姿を通して、本の持つ力や魅力が伝わってくる。そして心に響く言葉が溢れていた。
    読書をはじめて触れる中で最近抱えていた悶々とした心を晴らし、名作に怖気付いていた気持ちをバッサリ切ってもらえた。

    中でも最後の迷宮で、本は『人を思う心』を教えてくれるとの言葉は強く心に残る。
    本は時に寄り添い、自分と向き合う時間をくれる。そこから一歩進める人でありたい。100冊目がこの本で良かった!

  • ひとりぼっちになった青年が、亡き祖父の古書店で人間の言葉を話すトラネコと出会う。そしてトラネコと本を守るための冒険が始まる。
    著者の本への大きな愛情が伝わってくる。本を読む行為の意味。本が好きとはどういうことか。
    本を取り巻く厳しい現状とファンタジーの世界を融合させ、わかりやすく読者へ訴えかける。
    本を売る者、買う者、読む者。すべての者へ、本との向き合い方を改めて考えさせてくれる。
    やっぱり私も本が大好きだ。

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著者プロフィール

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作は10年に本屋大賞第2位となり、11年には映画化もされた。著書に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『新章 神様のカルテ』『本を守ろうとする猫の話』『始まりの木』『臨床の砦』『レッドゾーン』など。

夏川草介の作品

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