閉じ込められた女 (小学館文庫 ヨ 1-6)

  • 小学館
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094068078

作品紹介・あらすじ

映像化! 女性警部フルダ・シリーズ完結編

本シリーズの第1作『闇という名の娘』(英題:The Darkness)の映像化が進んでいる。第1作は「翻訳ミステリー大賞シンジケート」の月別ベストを始め、多くの書評家に取り上げられ、第2作はミステリ作家の阿津川辰海氏など、日本の作家たちにも注目されている。
本国アイスランドや英米で人気を誇る女性警部フルダ・シリーズ、ファン待望の完結編!

真冬のアイスランド高原地帯。猛吹雪が襲う人里離れた農場に、一人の男が訪ねてくる。農場主の夫妻は、あり得ない天候の下での来訪を不審に思うものの、男を招き入れる。男はレオと名乗り、ハンティング中に仲間とはぐれたと言った。
やがて男は、夫婦の隙を見て家の中を探り始めた。
真冬にハンティングに来たという男の言い分がそもそもおかしかった。夫のエイナールが男の荷物を調べると、多額の現金とナイフが見つかる。疑念と怒りを抱いたエイナールはナイフを手にレオと対峙する。
妻のエルラは恐怖にかられて母屋を飛び出し、地下室へと逃げ込んだ。しかし、そこで待っていたのは底知れぬ闇と、永遠に続くかと思われる時間だった。

その頃、レイキャヴィーク警察の女性警部フルダは、若い女性の失踪事件を追っていた。
男優位の警察社会で自分の能力を示す必要があった。
一方、娘のディンマがフルダに心を閉ざしている様子なのが気がかりだった。家族の中で、思わぬ悲劇が進んでいた。

名うての書評家たちから絶賛された第1作『闇という名の娘』から、シリーズを追う毎に時間が遡っていくユニークな構成。最新第3作は、第1作で孤独な死を迎えたフルダの身に何が起こっていたかが、ついに明かされます。
警察小説としてだけでなく、女性刑事の人生を描く人間ドラマとしても読み応えのある本シリーズ。本作が手始めでももちろん可。ぜひご一読ください!

感想・レビュー・書評

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  •  終わったところから始まる物語。時間を逆行して発表されてきた女刑事フルダのシリーズ三部作、早くもその完結編である。

     これを読んだのは、北海道までをも巻き込んだ猛暑のさなかだったのだが、作品世界は雪に閉じ込められたアイスランドの一軒家である。とりわけ、三人だけの登場人物による恐ろしい駆け引きの第一部は、大雪で閉じ込められ、血も凍る恐い心理小説なのである。まさに猛暑対策にはこの上ない一冊なのだった。

     アイスランドという国、その特色を生かした寂しさと孤独と、辺縁の土地を襲う暴風雪。それらが重なるだけでも、いわゆるヒッチコック的スリラーの完成度が極めて上がる。そこに加え、前二作によるヒロインの運命と、娘についての叙述を読者は知っているという困った事実である。

     本書は、恐ろしく少ない登場人物による300ページ強の小説でありながら、いやな汗をかきそうな第一部の怖さ、そして一気にその世界をひっくり返してしまうかのような第二部への驚愕の展開が、何といっても読みどころである。

     その他にも、フルダが担当することになる行方不明の少女はどこへ消えたのか? という付きまとう謎がある。これは本ストーリーとの関係性はどうなのか? 読者は何もつかまされぬままに、本書の恐怖と不思議に立ち会ってゆくことになる。この恐怖の館の驚くべき仕掛けとは? 物語の主たる装置はどこにあり、どう動いているのか?

     近年、登場人物や舞台装置の目まぐるしい展開が多くページ数も費やして説明に終始した小説の多いなか、この作品のシンプルさはどうか? それでも作られてしまう驚愕の展開とストーリーテリングは、何なのか? この作者の作品は、おしなべてそう厚くない長編でありながら、しかし、外れがない。アイスランドという国の人口の少なさと犯罪の希少さ、そこに生きる人間の寂しさのような風土まで含めてミステリーの素材としてしまう作者の力技が素晴らしい。

     本シリーズは三作を時間的に逆順で書かれることにより、読者側はヒロインの未来を知りながら読むことになる。また、未来において語られていた事実をも知っているからこその不思議も感じることになる。だからこそ過去の時系列にヒロインとともに遡行することで、怖さが高まる、という経験を珍しくさせて頂いた。

     おそらく逆に時系列で三作を読んでみても良いのかもしれない。そうしたチャレンジ体験者のレビューについても改めて伺ってみたいものである。

  • (アイスランドに雪が積もっていない時期があるのかわからんが)雪のせいで停電したり、交通機関が麻痺したり、平気で外界との連絡が取れなくなる時があり、恐怖ともに「都合悪いことは嘘ついちゃえばまずばれねえ」みたいなのある。(新潟県などは道路にお湯じゃばじゃば巻いているので滑らない、凍らない、雪かきしなくていい)(その分言い訳きかない?)
    なんか雪国に限らず、都合悪いことは隠蔽します。でもなんかあったら警察とかはばっちり助けてくださいね、みたいなの、うーん。でもやっぱり日本人って大真面目で少しはサボれ。と思った


  • 三部作通して読んだが、フルダの家族の事件ではなく、フルダが捜査した事件の中で、一番面白かったのが今作。
    序盤からチグハグな箇所が出現していて面白い。
    農場はこええな。

    ・行方不明の女性について

    頭おかしい人には常識だったり人としての一線が解らないんだな。
    ただただ不運。
    でも罪を隠蔽する時だけ正常になるのは狡猾だと思う。
    死んだ夫婦には同情できない。特に奥さんの方。
    喪ったものを似ている他のもので埋めるのは、一見意味がありそうに見えるが無意味で愚かだと思う。

    ・フルダのこと

    もう何があったか解っているので、娘を気遣おうとするフルダに対してのヨンがすべて邪魔。行動とか言動とか。
    やっと生きているディンマに会えた。存在してるはずなのに、影のように思えた。
    フルダ母も登場し、一緒にクリスマスを過ごそうとするが……
    そっか、ディンマはクリスマスに亡くなったのか。

  • フルダシリーズの完結編。アイスランドの厳しい気候、吹雪で遮断された一軒家での怖さがひしひしと迫ってくる。季節の特徴を背景に寒々とした闇の広がりが伺える。

  • シャイニングを思い出したな。閉鎖的な空間に閉じ込められると、少しづつ壊れていくのだな。

  • 確認を怠って、三部作の三作目から読んでしまったけど、たまたまが時間逆行してる作品だったおかげか、特に問題なく読めた。女刑事が主人公のシリーズ。ミステリーなんだけど、謎解きを強いられたり、謎解きを読まされてる感がないところがすごくいい。アイスランドのクリスマスが舞台だけど、だいぶ暗い話なので入り込みやすい人は時期ずらして読んだ方が無難かも。

  • 2022/4/6読了。女性刑事フルダシリーズの第3作目。この作品によってフルダの人生の闇が分かる。
    なかなか練り上げられたシリーズになっている。
    極北の国アイスランドの雰囲気がまたドラマの進行をより想像力を掻き立たせ、その世界に引き摺り込まされる。なるほどと⭐️四つ。

  • 読み終わりたくないくらい

  • フルダシリーズ、最終章。3作め。
    遡ってシリーズになっているので、彼女の、苦しみを、わかりつつも、最後は、結果的に、~なんだよね。って!
    事件における物語は、いつも解明される段階で、味わい深い。もう一度、1作めから、読みたくなった。

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