羆撃ち (小学館文庫 く 8-1)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094086911

感想・レビュー・書評

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  • 自然と共に生きるドキュメンタリー。ライフルで熊を撃ち殺すことを残酷だとも思うが、そのような感想を抱く事自体が自然の中で生きるとはどのようなことか理解していないということなのだろう。都市圏の中で人生が完結する私達には非現実的な生活だが、ハンターのリアルが描かれている。

  • 北海道のヒグマ猟師によるルポルタージュ。

    著者久保俊治氏は、娘の「みゆきちゃん」らと共にたびたびTV番組にも登場している人だ。

    この本を読むのは実は約6年ぶり2回目なんだけど、クマを追う迫力と猟犬を失った悲しみゆえに、前回はブログに書けなかった。(実際、その体験の大きさの前では感想もへったくれも出て来ないのである)

    単身で山に入り、孤独のうちに自然の中で寝食し、野性と向き合う。次第に研ぎ澄まされていく感覚。山との、そして獲物との「対話」。そして自ら手塩にかけて仕込み、「これ以上ない」というほどに育った猟犬フチへの深い愛情。

    2回目も圧倒された。

  • 北海道の凍てつく自然。その中で猟に生きる人の話。

    猟にかけて生きていくということ。経済では測れない価値を彼は有していたのだと思う。心底憧れる。

  • 冬の旭川に仕事で行った日、ホテルで通読した書。
    これを読んでから、羆に対しとても興味が湧き、次々と羆やマタギに関する本を読むようになった。
    この本は、わかりやすく涙を誘うのだけど、自分と犬一匹だけで羆に立ち向かう情景が素晴らしい。

  • 北海道で羆のみを追う日本で唯一のハンターである久保俊治さんの自伝的小説。

    相棒の犬「フチ」との出会いから、リアリティに充ち満ちた狩猟、アメリカ留学、帰国、そして再びの猟生活を類い希なる表現力で描いていて、めちゃくちゃ面白くて泣ける。

    久保さんは、NHKのプロフェッショナルにも出演していました。弟子を育てていたのが印象的でした。

  • 久保さんと猟犬フチとの強い絆と別れに涙。ご主人に忠実に機微を働かせて山を駆けるフチ。そのフチに深い愛情と信頼を寄せる久保さんは自然の中で生きた。自然の一部だった。アメリカのハンター養成学校やハンティングやガイドの世界を垣間見ることができた。現代ではかなり変化したところも多いとは思うけど。

  • ・木を集めて火を焚く。それからおもむろにシカの体を仰向けにし、右の後脚を左手で抱えるようにして自分の左膝の上にのせる。右手に持った山刀の峰側で腹線の切り開く位置をなぞって毛を分ける。昔から猟師に伝わる「けじめを入れる」という作法だ。刀を入れる場所をきちんと確認し、心の準備をする、切りやすいように毛を分ける、と言った意味合いがある。

    ・実家で過ごしていたある日のこと、近所の犬の、自分に対する反応の異常さに気がついた。他の人が近づくにつれ、吠え方が激しくなり、姿が見えなくなるまで吠えついているような犬が、私に対しては、近づくに従い吠えるのを止め、最後には尻尾を巻いて犬小屋に逃げ込んでしまうのだ。何度試してみても変わらない。獰猛そうな犬でも試したが、吠えつく時間が少し長いだけだった。グッと睨みつけると小屋に逃げ込まないにしても吠えつくのをやめ首を垂れてしまう。山の中での生活が長いため、獣のような匂いがするのだろうか。風呂に入り、服も着替えて試してみる。だが、私に対する様子は前と同じで変わらない。

    ・そうか、死だ。自然の中で生きた者は、すべて死をもって、生きていたときの価値と意味を発揮できるのではないだろうか。キツネ、テン、ネズミに食われ、鳥についばまれ、毛までも寝穴や巣の材料にされる。ハエがたかり、ウジが湧き、他の虫にも食われ尽くし、腐って融けて土に返る。木に養分として吸われ、林となり森となる。森はまた、他の生き物を育てていく。誰も見ていないところで死ぬことで、生きていた価値と意味を発揮していく。

    ・脆く壊れやすい、しかし私にとっては望めばすべてがあり、与えてくれたのが自然であった。獲物が、山菜が、川には魚が、厳しさが、優しさが、そして夢と冒険がそこにはあった。脆く壊れやすく、儚そうで強い自然だからこそ、その中にどっぷりと浸かりきってみたい、自分の野生を確かめてみたかったのだ。その自然から貪るようなことはするまい、と常に自分に言い聞かせてきたはずであったのに、気付かぬうちに楽をして多くを望んでしまっていた。

  • 2018.4.23読了
    いわた書店選書

  • 山を歩き、動物と向き合って生きる筆者の生活を追体験できるかのようなビビッドな文章。
    鹿のぬくもりで体を温める、とったばかりの獲物を生で食べる、熊の生きた証と向き合ってその死を引き受けること等、生きるために食べるという行為に向き合う猟師の信念に説得力がある。家族の話が一切出てこないのも、猟師としての人生に焦点が当てられているからだろうか。
    何よりも、猟犬フチへの愛情、育成の物語。猟犬は猟師の器以上には育たないと、真摯にフチに向き合う姿が印象的。やや偏屈であっただろう著者の一番の理解者であり、相棒であり、体の一部だったのだろう。

  • 久保俊治 「 羆撃ち 」プロ猟師である著者の猟師生活ノンフィクション

    宮沢賢治「なめとこ山の熊」、星野道夫の写真の世界観とリンクした。命のやり取りの残酷さ、自然との距離感を間違えたら命がなくなる緊張感、自然に生かされている自分など 研ぎ澄まされた死生観に満ちている

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