踏んでもいい女 (小学館文庫 さ 16-1)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094088472

作品紹介・あらすじ

大ヒット作『凍花』に続く文庫ミステリー!

真砂代は、横浜で銭湯「くじら湯」を営む祖父と二人暮らしをしている。自分の容姿には、どうしても自信が持てない。知人の仲介で望みもしない見合いをしたところ、ほとんど話もしないうちに相手の男性は席を立ってしまった。みんな自分のことを傷つけても踏んづけてもかまわないと思っているように感じてしまう。
見合い相手には、ずっと思い続けている貴子という年上の女性がいるらしい。真砂代はひょんなことからその貴子と知り合い、日中の限定で家事を手伝うようになる。

感想・レビュー・書評

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  • 表紙のイラストで今時の話かと思っていたら、戦時下の横浜が舞台だった。容姿の冴えない19歳の真砂代は強引にすすめられたお見合いを受ける。しかし、見合い相手にはずっと思い続けている貴子という年上の女性がいた。
    惨めな気持ちになる真砂代だったが、偶然にもその貴子と知り合い家事を手伝うことになる。
    働かずにお洒落な洋服に身を包み、庭の花を見ながら絵を描いて過ごす貴子。
    誰しもが生きるだけで精一杯だった戦時下に、夫とパリで暮らす為に絵だけを描く貴子を嫉妬しながらも、いつしか彼女の生き方に憧れていく真砂代。
    真砂代に一番に完成した絵を見せてくれると言っていた日に空襲が起きた。
    家族が疎開し、銭湯を続ける祖父と2人きりの暮らしの中その日を生き延びる為に一生懸命な真砂代にとって貴子の家だけが、桃源郷だったと言う言葉が印象的だった。

  • 私は凍花よりも好みだった。女同士のこういう心理わかるわーというのと、戦争の時どう生きるか。

    常に思っていて、たまに言ってみるけど、特に男性に理解されない考えが書かれていた。以下引用(文庫p207)
    きれいに死んでいこうとする人よりも、たとえ地べたを這いずりまわって他人に軽蔑されても、なお生に執着する貪欲さのほうが私はよほど美しいと思うわ。

  • え?驚愕?
    ミステリーでも何でもない。失敗。

  • まだ100年にも満たない昔、日本は戦争をしていた。
    普通に暮らしている場所が戦場になって、飛行機がたくさんの焼夷弾を落としたり機銃照射で多くの人が殺されていった。
    非戦闘員が住んでいるとわかっている場所を、何のためらいもなく「戦争だから」という理由だけで攻撃できる。
    それこそが戦争の悲劇なのかもしれない。
    戦時下であるにも関わらず悠々自適の生活を送る貴子。
    みんなが食べるものにも困っているときに、働くわけでもなく、ただ食べて絵を描くだけの生活。
    雑草を摘み、ひよこを育て、真砂代が祖父との生活のために苦労しているときも、貴子がいる家だけは別世界だった。
    掃除を引き受ける代償が貴子からのお礼の言葉というのが面白かった。
    食料を分けてもらえればどんなに楽だっただろうに、真砂代の誇りがそれを許さなかったのだろう。
    徐々に近づいていく二人の距離。
    貴子にとって真砂代が特別な存在だったことは間違いない。
    気づくのが遅かったけれど、真砂代にとってもそれは同じだったことに少しホッとした。
    軍事政権にとって危険な思想も、平和な日本ではごく当たり前の考え方だ。
    結局は支配する人たちにとって邪魔なものが、その時代の危険思想になっていくのだろう。
    戦争、生きるということ、友情、誇り・・・。
    たくさんのことを考えさせてくれる物語だった。
    ただひとつ、文庫の裏表紙にあるあらすじの最後の一文。
    「辿り着いた真相に、あなたは必ず驚愕する」。
    売らんかなの精神で多少の煽り文句は必要なのはわかる。
    でも、いくらなんでもこれはないだろう・・・と思ってしまった。
    この物語の良さを何もわかっていない人が書いたとしか思えない。
    何とももったいない。

  • 戦時中の横浜で暮らしている19歳になる真砂代はパッとしない容姿の性格も地味な娘。ある日紹介で見合いをするが、その男はろくに話もせず、貴子という見知らぬ女性と比較して席を立ってしまう。貴子は自分は踏んでも構わない女だと皆から思われていると悲しく思った。
    ある日ひょんな事で貴子の家を掃除する役割をすることになった真砂代は、その贅沢で勝手な貴子に反発を覚えながらも、彼女の描く絵や、結婚の馴れ初めなどに触れる度に次第に惹かれていくのを感じていた。
    そんな刺激ある毎日を送るうちにも、本土に戦火は迫り彼女達の運命を大きくかえていくのでありました。

    とても良い本でしたが、あらすじでわざと衝撃のラスト的な事書いてあって感心しませんでした。全然驚愕しないし、そもそもそういう趣旨の本ではなくて人間ドラマなのです。惹句に惹かれて読んだ人ががっかりしたりしたら、本が可哀想です。

  • 戦時中の厳しい生活環境の中でもお屋敷からくすねたりしない主人公に好感。 鶏が盗まれたシーンでは愕然とし、物々交換のシーンは農家のおばちゃん相手にハラハラ。冴えない主人公が最後に幸せそうで良かった。

  • 「凍花」で有名になった著者のデビュー作。
    「千の花になって」改題。小学館文庫小説賞受賞作。

    昭和19年、横浜。
    19歳の真砂代は、戦時中にもかかわらず一人贅沢に暮らす年上の女性 貴子と知り合う。

    受賞時のタイトルは「千の花も、万の死も」、これが一番内容にあっているような気がする。
    タイトル「踏んでもいい女」はイヤミス風を狙ったのだろうが、本作はイヤミスではない。
    いい話ではあったが、イヤミスでもミステリーでもなく、期待を裏切られた感が強い。
    (図書館)

  • タイトルに惹かれて。
    カバー絵や裏表紙の説明書きを見た感じでは今時の「踏まれやすい女あるある話」かと思いましたが、そうではなくて戦時中のある魅力的な女性を描いた物語でした。

    貴子の発言や思想には現代にも通じるものを感じ、うなずける部分が多々ありました。
    しかし、そんな独自の思想を持っていた彼女も戦火の下には無力で、たくさんの人と同じように惨い亡くなり方をしてしまった……。

    色々な意味で期待を裏切られた作品でした。

  • 151016

  • 最初、タイトルの意味を踏んでも→いい女(踏まれても尚)と勘違いしました。。。
    踏まれてもいいと思われている、みじめな女、という意味でしたが、主役はどちらかというと「貴子」という風変わりな美人に重点が置かれているような気がしました。
    時代背景が現代でなく、戦時中がメインで、とろいと言われていた真砂代が貴子と出会って意識に変化が。絵ばかりかいて人に家事をさせて、贅沢ばかりが目につき、自分勝手に見えて高飛車な貴子に反感を持ちつつも最後は好きになっている。
    現代を生きる私からすると、真砂代のほうが最初からあまり好感を持てない気がした。
    対照的な二人を描いているので、どうなっていくのか先は気になりながら無事に最後まで読み終わりました。

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著者プロフィール

一九六四年大分県生まれ。横浜市立大学文理学部卒業。二〇〇八年、「千の花になって」(文庫化にあたり『踏んでもいい女』に改題)で第九回小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。姉妹の確執を描いた第二作『凍花』がベストセラーに。他の著作に『幻霙』『日本一の女』『40歳の言いわけ』がある。

「2017年 『五十坂家の百年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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