金米糖の降るところ (小学館文庫 え 4-2)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094088663

作品紹介・あらすじ

姉妹は恋人を<共有すること>を誓い合った

アルゼンチン・ブエノスアイレス近郊の日系人の町で育った姉妹、佐和子(カリーナ)とミカエラ(十和子)。十代の頃、ふたりはいつも一緒にいて、互いの恋人を<共有すること>をルールにしていた。
古風で聡明な姉の佐和子は、留学先の日本で出会った達哉と結婚し、東京で暮らし始める。佐和子は達哉が共に生きたいと願った唯一の女であり、ミカエラは達哉に結婚を申し込んだ唯一の女だった。複数の飲食店を経営する達哉の周囲から、女性の影が絶えることはない。東京という場所から距離を置くために、佐和子は所沢の一軒家に引っ越した。
一方、気が強く奔放な妹のミカエラは、佐和子を追って留学した日本で妊娠し、アルゼンチンに帰国して父親の不明な娘・アジェレンを出産する。シングルマザーとして旅行代理店で働くミカエラにとって、アジェレンは大切な宝物だ。しかし、アジェレンには母親には言えない恋人がいた。
ブエノスアイレスと東京――華麗なるスケールで「愛」を描いた長編小説。



【編集担当からのおすすめ情報】
両親とも、友達とも、恋人や夫とも違う「姉妹」という特別な存在。これは、強い絆で結ばれた姉妹の物語です。解説は、作家の綿矢りさ氏。

感想・レビュー・書評

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  • 江國香織さんが描くとお洒落な空気が漂って、これもひとつの不思議な体験と思える。東京とアルゼンチンが舞台。それが映画のように色濃く綺麗に映し出している。
    だけど、どの登場人物にも共感が得られず(一人でもそういう存在がいれば)重い気持ちになり、休み休み読む。中盤から数十頁すっとばした。挫折しそうになったが、やはりラストが気になったから(最後どうなったというわけでもなかった)。
    男女愛という前に、特殊な姉妹の絆が強い佐和子とミカエラ。姉妹で男性を共有してきた。どちらかに恋人ができたら、姉か妹が誘惑して男性を試すって。奥はもっと深いがそこまで読み込むにはエネルギーが要った。
    そこまで達哉に魅力を感じない。佐和子の相手、田淵のことを「たぶちん」というおちゃらけた呼び方に違和感。
    タイトルと表紙のかわいらしさ、キラキラ感と内容が対比して、それが際立たせているんだなと思った。
    これからも江國香織さん読み進めていきたいと思っていた(思っている)が、これは(私には)個性が強すぎた。ちょっと間をあけて違うのを探します。

  • 現実にはあり得ない不思議ちゃんなストーリーなのに 読み始めると全く違和感なくその世界に入り込んでいける。
    (村上春樹も不思議ちゃんだけど あの人のは違和感ありありでエンドレスだからね 笑)
    または 全くなんてことない日常を描いているのに なぜか読み終わったあとにシアワセな気分になれる。なので寝る前に読むのにぴったり。
    わたしが考える江國ワールドは この2つのパターンだけど
    この金平糖はわかりやすく前者のパターン。
    江國さんが描くオトナの童話は 不思議ちゃんだけど そこここに本質的な何かが描かれていて だから違和感がないのかも。鋭いんだけど 鋭さを感じさせないのは江國さんの人柄なのでしょうか?
    久しぶりに江國ワールドを読んだけど やっぱり大好き。

  • 人生に躓くことのない人たちの恋愛模様。

    というと、聞こえはいいんだけど誰にも共感できなかった(共感だけが読書じゃない、という意見もあるとは思うんですが…)。

    浮気し放題の夫を捨てて自分のために乳児と妻を捨てる男と逃避行する主人公・佐和子にも、その佐和子と男を共有する佐和子の妹・ミカエラにも。唯一ミカエラの娘・アジェレンだけは若気の至り120%で可愛らしかった。

    男性は佐和子の夫・達哉、妻子を捨てるサイコパスかな?という田淵、さらにアジェレンの相手は大学生に手を出す還暦近い爺。誠実な男が出てこない。

    最後まで読めたのは江國作品だから、だけど主人公はわりといつもと同じ感じ(語学で食べてて夫が事業で成功してて、浮気相手もエリートで)なのにちっとも共感できなかったのは、佐和子から痛いほどの恋愛感情を読みとることができなかったからだと思う。

    『きらきらひかる』の笑子や『ホリーガーデン』の果歩を書いていた江國さん。そのレベルをいつも期待してしまう。

    2011年秋発行。だけど2011年っぽくは全然ない。そこが江國作品のいいところかな。

  • 江國ワールド全開だ。
    というのが第一の印象。
    常識の枠なんて取っ払ってしまった、言ってしまえばはちゃめちゃな人々の物語なのに、どうして静けさが漂ってるんだろう…といつも思う。

    佐和子(カリーナ)とミカエラ(十和子)という、日系アルゼンチン人の姉妹。ふたりは幼いころから仲が良く、何でも共有しあって生きてきた。付き合う男でさえも。
    しかし佐和子が初めて「共有したくない」と言い出した男が達哉で、佐和子は彼と結婚して日本で暮らし、ミカエラはアルゼンチンに戻って暮らし、離ればなれになってから20年近くが過ぎた。
    そして。

    恋慕の感情に突き動かされるように行動することもあるけれど、愛情と舌打ちの違いが分からなくなって、どちらかというと消極的な衝動で行動を起こすこともある。
    どこか醒めていて大人しい佐和子と、奔放で行動的なミカエラ。正反対に見えるふたりだけど本質は似通った部分がある。

    全てを悟っても静かにミカエラを許す姉の佐和子と、ミカエラの娘・アジェレンの恋愛がとくに印象的だった。
    アジェレンの恋は恐らく痛手になるのだろうけど、若いうちに一度は経験しておいたほうがいい。自分にはこの人しかいないし、相手にとっても自分は誰よりも必要不可欠な存在だと信じて思い込むこと。たとえそれが違っていたとしても。

    佐和子の夫・達哉もとんでもない男だけど、登場人物の中ではいちばん普通の感覚を持った人間で、こういう存在が登場するからこそはちゃめちゃな物語が成立するのかもしれない、と思った。

    そしてこの物語に「金平糖の降るところ」という童話みたいなタイトルをつける感覚に感服。
    物語中の、とてもロマンチックなエピソードから。

  • 江國さんが描くと、どんなどろどろした話もおかしな話も、美しく、静かで、かわいらしい。

    アジェレンの恋心が、素直で好きだった。
    欲しければ、奪いなさい。というセリフも。
    現実はそうはいかないことが多いけれど。

  • あいかわらず空恐ろしいほどに甘い残酷さを軽やかに描かれる。
    恋も愛情も夫婦という枠組みも倫理も羽ほどの重みももたず、そう在れることと強さと孤独のまさに羨ましさよ。

  • 「会えないあいだ、おなじ本を読もう」「それを読んでいるあいだは、おなじ場所にいることになるから」

  • まともな人が全然出てこない。さすが江國さんワールド。

  • 単行本を再読。
    単行本の表紙が好きです。表紙に一目惚れして購入。
    江國香織ワールド全開の作品です。
    私の周りにいる3姉妹の子は洋服や下着を姉妹で共有することがあるらしいけど(私にも妹がいるけど、共有はしません。)、男の人も共有というのはなかなかできるものではないよな。
    江國香織さんの作品だと、それもあり得るかと思えてしまうのが不思議です。

  • 初めて読んだ江國香織の作品だから思い出補正もあるかも。
    文章がおしゃれで、なんて雰囲気のある作家なんだと驚いた記憶。
    私は倫理観を作品にも持ち込んでしまうタイプだけど、なぜか江國香織は読める!

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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