山本周五郎中短篇秀作選集 2 惑う (山本周五郎 中短篇秀作選集(全5巻))

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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784096772027

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  • 「泥棒と若殿」
    子供の頃から苦労をし、初めて泥棒に入った古屋敷には、三日も食わずで死のうとしていた若殿がいた。泥棒・伝九郎は、若殿・成信に飯の支度をし、そのための銭もかせぎ、一緒に暮らし始めた・・・。
    伝九郎、良い人過ぎるよ。

    「おたふく」
    おしずは、長く貞二郎(彫金師)を思っていた。妹が嫁ぎ両親も亡くなり、しばらく一人で暮らして、三十二になった。思いもかけず、貞二郎と結婚することとなる。長く思い続けていた間、貞二郎の彫金の作品を集め、男物の高価な着物を買い、着ている姿を思っていた。その高価な品物を見た貞二郎は他の男がいるのだと、思い込んでしまう。酒に溺れる貞二郎と、そんなことは思いもせず、恥ずかしくそれらの品物についてはぐらかすおしず。
    純粋すぎるおしずに振り回される貞二郎…。

    「妹の縁談」
    前作のおしずの妹・おたかの縁談話。
    おしずさん、天然過ぎ。

    「湯治」
    縁談話の続き。結婚前に姉妹と姑、仲人(?)の女だけで湯治に行こうという話になる。しかし、世を変えると偉ぶり、家族から金を巻き上げてきた姉妹の兄が現れて・・・。
    受難なおしずさん。

    「なんの花か薫る」
    岡場所のある店で働くお新。その店に刃傷沙汰を起こし、逃げ込んだ房之助。お新は仕事仲間の菊次に客に惚れてはいけないと釘をさされる。礼に現れた房之助はお新を嫁にすると言い、お新も身を清めるため、半年客をとらずに過ごした。だが、祝いだと店に来た房之助は、「結婚の話を本気にしたのか」と笑い、元々の許嫁との縁談の話をして帰っていく。
    女の敵、房之助(`ロ´)!

  • 近くの図書館の周五郎作品は大分古く,しかも傷んでいる。そんなとき,この短編集に出会った。「おたふく」はもちろん,「晩秋」「なんの花か薫る」など名作だらけ。

  • 「惑う」・・・現代に生きる我々がこの言葉を使う時は、どんな時だろう?
    この小説の「惑う」は、現代が忘れた「惑う」です。

    鉄平さん、志村屋さん同様に、
    「おたふく」「妹の縁談」「湯治」の三部作(?)が絶品だと思います。

    江戸って、いい時代だなあ。
    いやいや、この「清貧」の心、今だって持って生きることは可能なはずです。
    何を読もうか迷ってる御仁、惑わずこれを召し上がれ!

著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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