国境のない生き方: 私をつくった本と旅 (小学館新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098252152

感想・レビュー・書評

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  • ヤマザキマリさんの本は『歩きながら考える』に続き二冊目ですがこちらの方がダイレクトにひびきました。

    ヤマザキマリさんの半生がぎゅっと凝縮されているのだから当たり前かもしれません。
    これからこの本を読んで社会に出られる若い人が羨ましいと心から思いました。

    お母様はシングルマザーでオーケストラのヴィオラ奏者。
    14歳の時にヨーロッパをひとり旅し、17歳でイタリアに留学して絵の勉強を始められます。
    そして隣の部屋のイタリア人の詩人ジュセッペと出会い、多大なる影響を受けパゾリーニの映画をすべて観ます。
    そして27歳で息子のデルス君を出産します。
    ジュゼッペとは別れます。
    日本に戻り、デルス君を育てるために、イタリア語の講師などをしながら猛烈に働き、漫画家としてデビュー。
    そして35歳で13歳年下のイタリア人ベッピーノと結婚。

    人、旅、本が大切なのがよくわかる体験談でした。
    この本は必然性があって読んでいる人には必ず刺さる部分があると思いました。

    私にとってそれは、マリさんの読書歴であったかもしれませんし、人や土地との付き合い方だったかもしれません。


    P104より
    パゾリーニにしろ、プリウスにしろ、いろんな政治的な軋轢の中で生きてきた人たちですから、そこで押しつぶされないために、現実をバリバリ咀嚼する丈夫な胃袋を持っていたと思うんです。
     彼らが持っていた膨大な知識量は伊達じゃないんですね。彼らにとって教養っていうのは、単にひけらかすためのお飾りじゃなくて、現実を生き抜くための具体的な力、進むべき道を切り開くための飛び道具みたいなところがある。
     知識をそこまで鍛えあげるには、やっぱり、自分ひとりで抱え込んでいたのではだめで、常にアウトプットして、人とコミュニケーションすることが必要。
     これは私もイタリアで痛感したことですが、教養を高めるといっても「自分はたくさん本を読んだからいいわ」という話ではないんですね。見て読んで知ったら、今度はそれを言葉に転換していく。
     これって日本人に欠けているところではないかと思います。
     さまざまな国籍、文化、背景を持った人たちが一緒に生活している場所では「言わなくてもわかってくれる」はあり得ない。ヨーロッパの社会においては「自分の考えをアウトプットする」は必須の能力でもあるんです。
     ただし、それはいわゆるディベートとは違う。自己主張して、相手を圧倒することではないし、まして優劣や勝ち負けを競うものでもない。考えていることをアウトプットすることで、彼らは、教養に経験を積ませているんです。そうして、教養をブラッシュアップして、深化させていく。
     日本にも、60年代くらいまでは、こういう知識人がいたと思うのですが。


    P252より
     だから思うのですが、みんな、持っている地図のサイズを変えてみたらいいと思うんです。基本にする尺度を変える。
     自分が暮らしている町でもなく、国でもなく、自分が生きているこの地球、この地球で生きているありとあらゆる生き物、そういうすべてをふくんだ宇宙、そこまで地図を広げていったら、ものの考え方や見え方も変わるんじゃないか。
     単純に地球があって、太陽があって、この環境の中で生きていける生命体として、私たちは命を授かったのだから、まず「生きてりゃいいんだよ」。これが基本。
     生きてていいから、生まれてきたんですよ。
     それなのに、なぜ生きていくのかとか、仕事がどうとか、人間関係がどうだとか、私にいわせれば、そんなものは、あとからなすりつけたハナクソみたいなものです。

     もっと、ただの生き物みたいに、生きることそのものに夢中になったらいい。
     あとからくっつけたいろんなものを、とっぱらって、囲いの外にでてみる。
     一度でも出てみれば、きっとわかると思います。
     この世界が、どんなに広いか。生きることは、そうやってあらゆる扉を開け放つこと。
    生きる場所をここだけに限定することはない。用意されたものを生きるのではなく、もっと、人は多元的に生きていくことができるんじゃないか。
     そうして、何の囲いもない荒野を往くのなら、遠くの富士山を見ていけばいい。
     私は、いつも、そんなふうに思います。遥か遠くに美しいものを想い描くことができるなら、人は足元にある小石は気にならなくなるから。もう先に進むしかない。

     私も、まだまだ一か所にとどまる気はありません。
     人間は動く生き物なんだから、移動するのが当たり前。旅をするのも当然のこと。
     生きているからには、感動したいんです。感動は、情熱のガソリンですから。ガス欠になると途端に頼りない人になっちゃうので、まだまだ動きますよ。どこまでも!

  • パワフルの権化みたいな人でビックリ。
    テルマエ・ロマエの作者さんだったんですね。

    何気なく読み始めた本だったけど、たくさん得るものがあって読んでよかったなと思った。
    テルマエ・ロマエも読んでなかったのですぐに読んでみようと思う。

  • 漫画『テルマエ・ロマエ』の著者であるヤマザキマリさん自身の半生と、その傍らで彼女を支えた本を紹介した自伝的エッセイ。

    14歳で欧州一人旅、17歳でイタリア留学、そして絵描きで生計を立てる苦労を経験し…と波乱万丈な半生を歯に衣着せない語り口で綴っている。幼少期から広い世界を舞台に太く濃い経験を積み、自分の軸を培ってきたヤマザキさん。人生に正解はないからこそ自分の選んだ道を全力で行こうとする姿勢に、読んでいる先からやる気が突き動かされる。
    背中で語れる大人、とはこのような人を指すのではないかと思う。

  • ヤマザキマリさんの価値観に共感するところが多かった。
    ヤマザキさんのお母さんやマルコじいさんの言葉も良かった。
    自分で考えて自分で判断すること。

  • 子ども時代にヤマザキさんを海外へ送り出したお母さまの先見の明がとにかくすごい。

  • ヤマザキマリさんにハマっています。
    ヤマザキさんの言葉に何かしらの刺激や発見、後押しをしてもらっている気分。
    読みながら、今の自分に響いてくる言葉がたくさんで付箋だらけになってしまいました。
    また再読したい1冊です。

    『人生は一度きりなんだから、無駄にできる時間はこれっぽっちもない』

    『ガンガン傷ついて、落ち込んで、転んでは立ち上がっていると、かさぶたは厚くなる。その分、たくましくなる』

    『人から見たらその人の突出してゆがんでいるポイントにこそ、その人がその人だけの道を切り開いた秘密が隠されているように思うのです』

    『失敗を恐れて、動き出せない人は、自分の中で全部をやろうとしているんじゃないでしょうか。一か所にとどまっていると、悩みばかりがどんどん成長していってしまいます。もうだめだと追い込まれた時こそ、世界に向かってもっと自分を開いていった方がいい。
    本当に自分が欲している栄養分はなんなのか。(中略) もし今いる環境の中に自分のプラスになるものがないなら、それを探す手間を惜しまないこと。
    そのためには、やっぱり、歩きだすしかない』

  • すごい人だなあ。漫画家といえば、締切に追われて仕事場に缶詰になっているイメージなのが、覆された。世界のあちこちで暮らし、何物にも縛られない破天荒な生き方をしている。歴史にも文学にも造形が深いが、理屈ではなく全て自分の経験と感性に裏付けられた、力強い自分の言葉で語っている。場所にも人にも縛られず、時空までもこえた、「囲い」の外で生きている。圧倒された。

  • 先日Netflixのテルマエロマエのアニメ版見ていて、毎回本編の最後にヤマザキマリさんが温泉を旅するロケがあった。
    その時のヤマザキマリさんの考え方にどこか魅力を感じていて、それがきっかけでKindleのセールでこの本を見かけてついつい購入した。

    地球スケールで、染まってしまった人には気づかない囲いをを越える力がどうして培われたのか納得が行った。

    他者からどう見られても自分の生き方を貫く姿がかっこよく、私もそう生きたいと思った。

    ■「人から見たらその人の突出してゆがんでいるポイントにこそ、その人がその人だけの道を切り開いた秘密が隠されているように思うのです。」
    ヤマザキマリさんは変人が好きで、変わったものがとても好きだと。今社会や会社で、ISOとか標準化する流れになっているけれど、どんなに変わった人でもその人それぞれの個性を大切にしたいと思えるようになった。

  • 日曜天国でヤマザキマリさんが立て続けに登場したので、思い出して読んでみた。
    ラジオでも話していたようにお母様が凄すぎて、参考になりようがないねぇ(いい意味で)
    地図のサイズを変えて生きると言うのは良いですね。住所、地球。いろんなことがどうでも良くなり、強く生きれそうだね。

  • まじでバイブル!!どうしようもなく辛かったことも後々振り返ると、必要な経験だったことがある。どんな悩みも地球規模で考えたらハナクソ、それな。

著者プロフィール

1967年東京生まれ。漫画家。14歳でドイツとフランスに一人旅へ。17歳でフィレンツェの美術学校入学。1994年、一人息子デルスを出産。1996年、漫画家デビュー。帰国し、北海道大学などイタリア語の講師を務めつつ、北海道の放送局でイタリア料理の紹介や旅行のレポーター、ラジオパーソナリティなどを務める。2002年、14歳下のイタリア人ベッピと結婚。エジプト、シリアと日本を往復しながらの生活が続くが、2004年に日本での仕事を整理し、リスボンに家族三人で住むことになる。主な著書に『テルマエ・ロマエ』『モーレツ! イタリア家族』『世界の果てでも漫画描き』『地球恋愛』『ルミとマヤとその周辺』など多数。現在シカゴ在住。

「2012年 『ヤマザキマリのリスボン日記──テルマエは一日にして成らず』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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