世界史としての日本史 (小学館新書 は 9-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098252800

感想・レビュー・書評

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  • 日本国を日本史のみを通して考察するのではなく、世界史>日本史>日本の歴史的事実と捉えるべきというエクスキューズ本。現在の世界における日本の立ち位置を把握するのに、非常に示唆に富んだ一冊だと思います。

  • 日本近代史の代表的な研究者である半藤氏と、「全世界史」の著者出口氏の対談集。
    書名の通り、日本史は世界の流れの中で理解しないと、本質が判らないという趣向だ。
    ・元寇
    常識的には当時世界最強のモンゴル軍を日本は神風のおかげもあり、2度に渡り撃退したというものだ。しかしこの元寇軍は失業者対策の遠征軍で、実力もやる気も無い寄せ集め。なんとビルマもこれを撃退しているとの事。元寇・神風というのは江戸時代に朱子学と共に生まれた言葉である。
    ・自尊史観
    昨今大流行の日本立派論。愛国心が劣等感(経済力で中国に抜かれた等)と結びつくと攻撃的・排外的なナショナリズムとなる、と手厳しい。外国人が自国はこんなに酷いが日本は素晴らしいという本を書くと、簡単に数百万稼げるらしい。
    ・リットン調査団
    日本イジメのリットン調査団、これにより国際連盟を脱退することに…というのが常識。だがその中身を精査すれば、結構日本寄りの内容。満州国は国際連盟が管理し、日本の権益は存続を認めている。日本に名を捨て実を取らせるもの。また連盟軍の満州駐留というのも、当時の国際情勢から、日本軍が主力となる可能性が高かった。なぜこれを拒否して、自ら窮地に入り込んだのか・・・
    ・集団安全保障
    半藤氏が自衛隊側に何度も確認したが、自衛隊には外に出して攻撃できる能力は無いとのこと。戦争は武力とロジであり、ロジの観点が日本には欠けている。継続して戦争をする能力は無いし、主力が海外に行ってたら、本土防衛は困難。ただでさえ日本は南北に細長い非常に長い海岸線を持ち、山脈が走り、原発が海岸線に50もあり守備が難しいのに、海外派兵などの余裕は無い。
    ・東郷平八郎
    日本海海戦の敵前大回頭の話は、元帥が亡くなった昭和9年から出てきた、おそらくは作り話。「坂の上の雲」は小説であり、これを歴史的史実とする人間が多すぎる。

    等々知らなかったこと続出で、これらが世界情勢とどの様に結びついていて、どんな結果となったのかが良く判る本だ。

  • 半藤さんの日本史に出口さんの世界史視点を混じえた対談で、自国を過大に評価し過ぎずもっと勉強が必要、というトーン。両者の著作が好きな人には間違いがない。文中で紹介されるオススメ本に進んで更に知識を発展させる事が出来たら、本書の意義があったという事になるかと思う。

  • 歴史から学ぶことは多いと思い、色々勉強していますが、二人の知識に驚きます。もっと知りたい気持ちになります。

  • 現代史にあまり興味はなかったが、一般教養として手に取ってみた。非常に勉強になったし、現代史を勉強しないといけないと思った。

    一つの事象、判断をその小さな視点だけでしか見ないのが今までの日本史だと感じた。世界情勢があっての、日本のある事象であり、判断なのだ。日本国内のある事象を論じるときも、日本史ではなく、世界情勢の中で論じられるべき。

    そんな意識を植え付けられた。

  • 『昭和史』の半藤一利氏とライフネット生命保険代表取締役会長兼CEOで世界史の本も書いている出口治明氏の対談。最近よく見かける「日本のここがすごい!」といった日本特殊論の風潮についてや、第二次世界大戦の背景や日本が負けた理由、指導者の教養不足などについて対談している。

    第一章 日本は特別な国という思い込みを捨てろ
    第二章 なぜ戦争の歴史から目を背けるのか
    第三章 日本が負けた真の理由
    第四章 アメリカを通してしか世界を見ない危険性
    第五章 世界のなかの日本を知るためのブックガイド
    第六章 日本人はいつから教養を失ったか

  • 2人の対談による形式によって、より客観的な目で日本を分析できる。
    世界においての日本という国を見る、という目をもつようになる本。

  • 勉強不足を痛感させられる一冊。

  • 近代日本史を振り返る上で大変参考になった。

  • 対談を通じて、現在の日本がどうあるべきか、日本人としてどうあるべきか、それに対しての問題意識を共有することができる。
    歴史のカバレッジという意味では、特に近代史、特に第二次世界大戦前後の世界、日本を取り巻く史実が中心。

    両著者が対談の中で推奨する歴史書籍を紹介しているので、この情報は貴重、保存版。
    対談集なのでどうしても歴史を学ぶ、という観点では不十分だと思うのだが、これらの書籍を興味に応じて読んでみるのが良いのだろう。

    「世界史としての日本史」という表題の中には、第二次大戦時に日本は世界の潮流を見誤った、という反省と、「日本美化論」が華やかな昨今の日本の状況がそれに類似している、という注意喚起の意味を有している。

    以下引用~
    ・終身雇用とか、系列取引とか、日本企業の伝統と思われているしくみの大半が、実は1940年体制から生まれたもののようですね。1940年体制は、満州での実験から学んだことを、本国でもやろうとしたもののようです。

    ・「メシ、風呂、寝る」でいい仕事ができると思いますか?
    僕(出口氏)の言葉で言えば「人、本、旅」で、たくさんの人に会い、たくさんの本を読み、いろいんなところに行って見聞を広めて、勉強して初めて、「これは使える」「これを試してみよう」と気づくことができ、いい仕事ができるようになるのではないでしょうか。
    戦後システムでは、体力の再生産だけで良かったが、これからは知的能力の再生産が必要になってくる。寝る間を惜しんで長時間働いていたら勉強する暇がない、バカンスがなければ勉強する暇がないのです。

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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