「みんなの学校」が教えてくれたこと: 学び合いと育ち合いを見届けた3290日 (教育単行本)
- 小学館 (2015年9月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784098401635
作品紹介・あらすじ
「みんなの学校」が教えてくれたこと
2015年2月から全国で公開され、大ヒットしたドキュメンタリー映画『みんなの学校』。この映画の舞台となった大阪市の公立小、大空小学校では、「自分がされていやなことは人にしない」というたった一つの校則と、「すべての子どもの学習権を保障する」という教育理念のもと、障害のある子もない子もすべての子どもが、ともに同じ教室で学んでいます。全校児童の1割以上が支援を必要とする子であるにも関わらず、不登校児はゼロ。他の小学校で、厄介者扱いされた子どもも、この学校の学びのなかで、自分の居場所を見つけ、いきいきと成長します。また、まわりの子どもたちも、そのような子どもたちとのかかわりを通して、大きな成長を遂げていきます。
本書は、この大空小学校の初代校長として「奇跡の学校」をつくり上げてきた、木村泰子氏の初の著書。大空小の子どもたちと教職員、保護者、地域の人々が学び合い、成長していく感動の軌跡をたどりながら、今の時代に求められる教育のあり方に鋭く迫ります。
【編集担当からのおすすめ情報】
「こんな学校が日本に本当にあるの?」「こんな学校に通わせたい!」驚嘆の声続々。大ヒットドキュメンタリー映画『みんなの学校』の舞台、大空小学校で繰り広げられる感動の秘話に涙が止まりません!
【目次】
はじめに 『みんなの学校』とは
プロローグ 2015春 最後の修了式
第1章 「みんなの学校」の子どもたち
第2章 学び合い、育ち合う
第3章 私の原点
第4章 教師は学ぶ専門家
第5章 「みんなの学校」をつなぐ
エピローグ みんなが教えてくれたこと
【著者プロフィール】
木村 泰子 きむら・やすこ
大阪市立大空小学校初代校長。大阪市出身。武庫川学院女子教育学部短期大学保健体育学科(現武庫川女子大学短期大学部健康・スポーツ学科)卒業。「みんながつくる みんなの学校」を合い言葉に、すべての子どもを多方面から見つめ、全教職員のチーム力で「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。学校を外に開き、教職員と子どもとともに地域の人々の協力を経て学校運営にあたるほか、特別な支援を必要とされる子どもも同じ教室でともに学び、育ち合う教育を具現化した。2015年春、45年間の教職歴をもって退職。現在は全国各地で講演活動、取材対応などで多忙な日々。
島沢 優子 しまざわ・ゆうこ
フリーライター。筑波大学卒業後、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』などの雑誌・WEBなどで、教育関係・スポーツをフィールドに精力的な執筆活動を行っている。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート―スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』(小学館)など著書多数。企画・構成を担当した『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正・著/同)は8万部のベストセラー。日本文藝家協会会員。
【大阪市立大空小学校】
特別な支援を要する子を含むすべての子どもたちが同じ教室で学ぶ。不登校児はゼロ。地域の住民らの支援も積極的に受け入れる「地域に開かれた大空」の理念は「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」。唯一のルールとして「自分がされていやなことは人にしない 言わない」という「たった一つの約束」があり、子どもたちはこの約束を破ると、やり直しの部屋(校長室)へとやってくる。
【映画『みんなの学校』】
大阪市住吉区にある公立小学校「大阪市立大空小学校」の1年間を追ったドキュメンタリー映画。2015年2月公開。映画に先んじて放映された、テレビ版『みんなの学校』は、平成25年度第68回の「文化庁芸術祭大賞」など数々の賞を受賞。
感想・レビュー・書評
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子どもと大人。教育する上で大切なのは尊重と待ちだと思う。ありのままをその子を1人の人間として受け止め、変化を促しその変化を待つことができるか。
それを極限まで極めた学校がこのみんなの学校だと思う。
これは非常に難しいことだと思う。失敗、子どもから教わることも多いかと感じる。
その中で一人一人の教員がこれを日々の生活の忙しさの中取り組めたのがすごい。
慣れであったり疲労であったり、常に子ども達と向き合うのは難しい。頭が回らないと自分の中で納得できない問いかけや語りかけをできない。
多くのことを学んだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
映画「みんなの学校」を観て、どうしたらこんな学校ができるのだろうと考えた。木村さんの講演を聴きに行き、この本も手に取った。
そのなかで、大空小学校のすばらしいところは校長のカリスマ性というよりも、その教育理念と教育システムが見事に一致し、徹底して「子どもの声を聴く」ことを大切にしていることだと次第に理解できてきた。
地域と保護者を「サポーター」として学校に巻き込むこと。そのために、教員は学校を開き、保護者や地域と対等な関係を作る。文句は受け付けないが意見は歓迎する。保護者や地域も、学校をつくる主体になる。
最近、コミュニティスクールということがよく言われるが、地域が学校を評価し、ご意見番になることばかりが強調されていて違和感を覚える。地域と一緒に学校をつくってきた大空小学校の教育こそがコミュニティスクールそのものだと思うし、こういう形でコミュニティスクールが全国で実施されれば教員も子どもも歓迎するのに、と思った。
また、教員が子どもに対して上から指導せず、たったひとつの約束「自分がされていやなことはしない、言わない」だけを大切にしているという点についても、「画期的」だと言わざるを得ない。(こんな本質的な実践が「画期的」に見えること自体、公教育の、教員の反省すべきところなのだが。)
職員室が子どもを守る場所、校長室が子どものやり直しの場所になっていること。大人が子どもの声から学び、自分を過信しないこと。学級単位ではなく常に学校単位で考えること。子どもたちを温かく見守る大人がたくさんいること。
それら一つ一つに子どもを中心に据えた教育の理念が根付いていること。
大空小学校が公教育の「理想」ではなく、「当たり前」になるべきだと改めて感じた一冊でした。 -
下手なマネジメントの本読むより、この映画を見た方がいい。というぐらい良かった。
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「みんなの学校」は、ドキュメンタリー映画でも知られている。ここでは、子どもも大人も、みんなが一緒に学び合い、育ち合う。みんなで学校をつくり、みんなで過ごしていく。初代校長・木村泰子先生が綴る、子どもたちとの日々や経験をぜひ感じてほしい。(Y.M)
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公立学校だから校長判断で可能性が広がる。
それを実践した記録である。
それには校長がある程度長く学校を指揮できないとだめだとも思った。
このような学校が広がると日本の未来も明るくなるのにと思った。 -
これほどストレートに本質を突いている実践はなかなかないと思う。
「子どもが育つ」とはどういうことか、「学校を作る」とはどういうことか。
映画で目の当たりにした子供たちの姿、学校の姿に重ねて、強烈に印象を残す。 -
映画の評判は、私の周囲ではイマイチだった。
映画は撮る側のメッセージが込められるもの。やはり「一般的な学校像と判断」が入り込んでいたのではないか、と考える。教育者目線でなく、こども目線でなく、部外者目線つまり大空小学校を初めて訪れる人の目線になっているのでは、と。
偶然、手にした本。初代校長が著者なので、期待大。
果たして、期待以上の内容だった。
3.11から学んだ下りは、そこだけでも防災リーフレットとして全国に配布してほしいくらいだ。
正直、何度も涙がおちる。感動で。
公立校だからといって、ひとくくりにする評価を見直さなければいけない。
やはり人間と人間との信頼なのだ・・・と。
それにしても校長先生の教育実習の指導教諭、教育の神様ことハラ先生のすばらしいこと!ここを読むだけでも大変勉強になります。 -
公立小学校なのに,公立小学校だから可能性がある…そんな気持ちになる学校の紹介です。
あたらしくできた小学校に,集まった教師たちと子どもたち。校長をはじめ,「学び合いと育ち合い」「どんな子も地域で学ぶ」をテーマに学校づくりに取り組んでいきます。
子どもへの圧倒的な信頼に裏打ちされて進められる学校運営。運営と言うと,何か,教師の圧倒的な指導が入っているように聞こえるが,実際は,「教師が子どもから学ぶ」という姿勢が一番だいじにされているようです。
地域とともに学校を作る…それは,地域におもねることではなく,地域も巻き込んでいっしょに子育てをすることです。
今の教育界でも,こんなことが可能なのだと分かるだけでも,貴重な記録です。
映画にもなった「みんなの学校」。その映画を文科省でも見たそうです。そのとき,木村校長は,当時の下村文科大臣から,
「校長のリーダーシップを,ぜひ全国の管理職を目指す人たちに伝授してください」
と言われたそうです。しかし…木村先生は次のように言います。
「校長がリーダーシップのとり方を間違えると,みんなの学校は実現しません」
ちまたには,リーダーシップの取り方を間違えている校長たちがうようよしています。そして,職員室の教師も子どもたちも萎縮し,自分を出さずに,目立たずに,控えめに過ごしているような気がしてなりません。
うちの学校はどうでしょう。まだまだ,子どもが主体的に動いているとは言えません。というか,ほど遠いです。
私も,少しずつ変えようとはしているけど…微力。ただ若い人たちの感性はなかなかいいです。この本にも出ていましたが,ベテラン教師たちは,これまでの姿勢をなかなか変えられません。
で,もしかしたら,今年から少しは変わるかもと期待しています。なんせ,この本を紹介したのは,新しい校長さんだから。 -
映画でもそうですが、読んでる間に何度も泣いてしまいました。声に出して驚いたり、笑ったり、読んでいる自分の反応に驚きました。
私は数多くいる、木村先生の教え子の一人でした。小学校5・6年を担任として受け持ってもらいました。今でも声を覚えています。(映画や本の中に出てくるような特別なクラスではありませんでしたが。)
さて、教え子ならではの泣き所は別にしても、誰しも心動かされる一冊ではないかと思います。
PBL(Project-Based Learning 課題解決型学習)とか、アクティブ・ラーニングとか、カタカナ言葉で難しく聞こえる事を当時から実践されていた事も分かります。誰もが分かる言葉でそれらが書かれているので、大阪弁のイントネーションを頭の片隅に置いて読むと、先生が話しているようです。
本の帯や、映画の告知編のキャッチーな印象よりも、生身の学校や生徒、先生などの人が見えて来ます。 -
ドキュメンタリー映画『みんなの学校』を観る機会があり、非常に感銘を受けた。ちょうど本書発刊のタイミングもあったので、さっそく読んでみた。
映画では実名だった子どもたちが仮名になり、本筋を変えない程度にエピソードが少し変更されていることを除けば、半分はほぼ映画に収録のままだ。もちろん、本書には取り上げられなかった映像、映像にはなかったエピソード部分もある。また、木村氏の教師としての原点部分に触れた箇所もあり、内容のすべてが大空小学校での取り組み実例かと、勝手に期待していたのとは若干違っていた。
だがそのどちらでも同じように、教育における主体は子どもで、子どもも大人もあるべき姿は学び合い育ち合いだ、という一貫した姿勢は繰り返し語られていて、木村氏が教育実習生の当初から変わらないものである。
いつもこれでいいのかと迷い続けている、正解はない、という言葉に勇気をもらった。
今目の前にあることを一生懸命やる、変えたいならば自分が変わる、そして今そこにいてくれる人に感謝する。
木村氏も、自分と同じように日々向き合っていることを知り、また明日から頑張れる気がした。 -
久しぶりにすごい。学び続けること。必読かも
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ステキな先生と学校、そして一番ステキなのは子供達!
本音で向き合うこと、チームで向き合うこと、子どもたちの場を作っていきたいというシンプルだけどとても大事な気持ちが、学校という場が子供たちの能動的な生活の場所に変わっていく大きな要因であると感じた。
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映画観ました。
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「特別支援」って何なんだろう。
「障がい」「虐待」とラベリングして、社会が決めた枠から飛び出た子どもを排除するのは、今の社会を反映してる。
本当に「みんな」が安心してありのままでいられるには、その子のことを「私たち」として捉え、歩み寄ろうという姿勢が大切。
大空小学校、見学してみたいな。
その前に、映画!早速稲美町の上映会に申し込みました!
楽しみだな~♪
・「支援を必要とする子」は日々変わる。学校は最初から「障がい」や「虐待」など、ひとりの子どもを「くくり」で決めつけて見てしまいがちだが、そうすると大人の手からこぼれ落ちる子が必ず出てくる。
・子どもの周りにいる大人が「通訳」をしていくなかで、目の前で起きている物事の本質に、子どもたちが気づき始める。
・一番大切なこと。それは、子どもの声を聴く、ということ。ただ、漠然と聞くのではなく、子どもの声に耳を傾けようという姿勢が、目の前の大人にあってほしい。
・明るいところから暗いところを見ようと思ったら、「見よう」としなきゃ見えない。
・「この大人は自分を裏切らない」という大人にしか、子どもは本当のことを言わない。
・この日「もう暴力はしません」と誓った気持ちは真実。だから、「どうせまた乱暴するやろ」ではなく、その一瞬一瞬は本物。
・気になる子を変えることに全精力を使い果たすのではなく、その子の周りの子どもたちを変える努力をするほうが、その子は変われる。これを大人と子どもの関係に置き換えるなら、大人がほんの少し変わろうとすれば、子どもは変わる。
・その子らしくいることは、「その子の現状のままでいい」というのではなく、「その子の“ありのままの質”をあげよう」ということ。
・排除するのではなく、「その子と一緒に学べるにはどうしたらいいか」を考える。
・大人のつくる空気を、子どもはいつも吸っている。
・大人同士が安心し合える場では、子ども同士も安心できる。
・子どもが分かっているのに、「わかったやろ、絶対せんときや」。これは余計。説教になるか、子ども自らのやり直しになるかの分かれ道。 -
同じ著者の「見えない学力の育て方」よりもこちらの本は良かったと思います。初著であるので、丁寧に書かれていて本当の姿に近いと思います。説明にこなれた部分が少ないから、読んでいて共に歩む感覚がありました。
特に後半はとても勉強になりました。
もともとどの子もすごい→子どものすごいところを大人が潰し→腐ったのが大人なのかなって思う。そんな負のループを断ち切らないといけない、今すぐに。
文中にもあった通り、目の前の子は来年いてない。何か変えるなら今しかない。来年から、明日から、なんて悠長に構えてたら取り返しつかなくなる、それが子どもと過ごす責任だと思います。
「子どもをわかったつもりになってはいけない」
とても胸に響きます。私もこの教えを実践したいとメラメラ燃えました。でもきっと失敗する、その失敗も味わって、やり直して成長して、共に支え合いたいと思いました。
こう思うと、大人も子どももないよなー、みんなが学ぶ人なんだなーと思う。本当に子どもはただただ「小さい人」でしかない、ノッポさんの仰る通り。 -
感動したし、新たな発見もあったし、出きる限り多くの人に薦めたいと思える本です。
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一つ一つのエピソードにまとまりがあって読んでいて心地よかった。子供ができたときや理解できない事があったときにもう一度読みたい
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大人も子どもも平等に、学び合い育ちあい、本当の意味での多様性を教育の場で実践している学校の話。どのエピソードも涙出る。