- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101006086
感想・レビュー・書評
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太宰治の描く人間は人間らしさが溢れてて、でも、こんな奴いてたまるかという気持ちになる。
『グッド・バイ』は太宰治の最後の作品となっているが、最後の「絶筆」も含めてジェットコースターのようなスピード感。本当に面白いと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自殺による絶筆である表題作を含めた後期作品16篇。『走れメロス』を代表とした精神的に健全な作品の多い(らしい)中期とは大きく異なり、敗戦後の日本に期待をしつつも、やがて絶望したかのような暗い作品が多数を占める。
理不尽、不条理、実体の伴わない思想と挫折、、、そんな言葉が浮かぶ。閉塞感がすごい。それを笑い飛ばして前に進んでいくような明るさを持っていたのが表題作『グッド・バイ』だっただけに、絶筆であることが非常に悔やまれる。
『薄明』
戦時中に疎開を繰り返している男の話。家が焼けたり子供の目が見えなくなったりと起きていることは前途多難だが、つい酒を飲んでしまうところやどことなく穏やかな雰囲気が描かれており戦時中の話という感じは受けない不思議。
まだ敗戦後ではないというのもあるのだろうか。子煩悩で朗らかな印象の暖かい短編。
『男女同権』
男女平等が謳われるようになった時代に、女性から散々虐げられた男による「女尊男卑」的側面が語られる。
いかにも天邪鬼な発想ではあるけど、男女という人間を2種類に分ける方法ではこうした歪みは当然のごとく発生してくるわけで、男女同権が「思想」として潔癖なものになってゆくことへの反感というか危惧というか、そういうものを感じた。時代の空気や心?のようなもので変わるのと、思想・制度としてガッと変えるのでは、受け入れ方も違ってくるのだろう。
『冬の花火』
戦後の時期にこんなもん演劇で見せられたらテンションダダ下がりで頭おかしくなるんじゃなかろうか。それとも、そんな時期に演劇見られる層ならしんみりする余裕もあるのだろうか。
ありとあらゆる生々しい現実を装飾するように、戦争・桃源郷・お百姓、様々な物語が作られ、人はそうして初めて世界を飲み込むことができた。そんなオブラートが戦争によってひっぺがされてしまった。そんな話なのかなと感じた。
『春の枯葉』
敗戦後の焼け野原に現れた新たな価値観と淘汰されてゆくであろう田舎の価値観。「わたくしのような、旧式の田舎女は、もう、だめなのでしょうか。」(p.226)
『朝』
夜に酔っ払い女性と二人きり、女性の机上には『クレーヴの奥方』。自分の本能と相手を尊ぶ気持ちがせめぎ合う短篇。分からんでもない。
『饗応婦人』
ただただ悲しい話。先の2つの戯曲も含めて、この感情をどうしたらいいのか分からない。
『グッド・バイ』
愛人作りすぎて収拾付かなくなり、偽の妻を連れていって諦めさせようとする色男の話。本妻は別にいる。最期には妻にグッド・バイされるというオチを想定していたらしい。
コメディ調で書かれているため、他の暗い作品ならともかく、これ書いてるうちに自殺したのかと驚いた。 -
フォスフォレッセンスが特に気に入った。
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太宰の後期作品16篇。
サービス過剰な「饗応夫人」
遣る瀬無くなる「眉山」
が好き。
「男女同権」は女性の優遇さを引き摺り下ろすことを喜ぶ老人の演説。
太宰はあんなにもてたのに、こんなに女性が怖かったんだとびっくりした。 -
妻子連れて4人戦火を逃れ、三鷹から甲府、故郷津軽へと疎開した太宰であるが、戦時中の疎開生活から日本の無条件降伏によって幕が降りた大戦後の日本、そこに生きる人々、男女、そういったものが、そのままそっくり、描かれている。
そのままそっくり、というのは、当時の表現者たちといえば「偽善的」で「サロン派」な平和主義者ばかり、しかし太宰というひとはそうではなかった。
家族との乞食同然の生活の惨めさ、日本敗戦の口惜しさ、情けなさ、今後への展望、ユートピア信奉、田舎出身の自虐的態度、都会の不変さ。
全てが気取らず(仮に気取って書かれていても、気取り自体をまた如実に告白するのが太宰という男かと)、残酷な程に生々しく投影されている。
グッド・バイは未完のままであったが、他作品に比べ、皮肉的ではあるがユーモアがある。コメディがある。
解説にもあったが、太宰の第四期は花開き掛けていたのであろう。 -
妙に面白い。似た雰囲気の短編なのに何故か飽きさせない。良いところに研がれた文章がおいてある。読み手の心理を心得ている。
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軽快で、朗らか。クスッと笑える。
私が最初に読んだ太宰治の本。 -
読んでる間は酒飲みの登場人物や風刺的な内容に辟易するし読後感も良くはないけど、読み終わってみると面白かったと思う
文章がうまくて読みやすい
たずねびと、冬の花火、春の枯葉、メリイクリスマス、フォスフォレッセンス、饗応夫人、美男子と煙草が好き -
・グッド・バイは未完の遺作。
・パンドラの匣、トカトントン、ヴィヨンの妻、眉山が入っている角川文庫クラシックス。
・太宰治は自分の経験をもとに書いているのかもしれないが、文章がうまくて、読みやすい。