直観を磨くもの: 小林秀雄対話集 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101007090

作品紹介・あらすじ

本質を射ぬく目、いわゆる「直観」を養う方法とは何か。類い稀なる慧眼の士、小林秀雄が各界の第一人者十二名と語り合う中に、そのヒントは立ち上る。思考停止を招く「○○主義」、芸術作品を曇らせる浅薄な「知識」、空論化する「弁証法」……。文学・絵画・演劇といった「芸術」、哲学・思想・科学といった「論理」、そして人間力といっていい「教養」。小林秀雄の直観を探る格好の対話集。

感想・レビュー・書評

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  • 昔の人は、やっぱり偉い…‼️
    この教養の深さ、広さ…
    本当に頭が上がらないッ(@ ̄□ ̄@;)!!
    しかも、意見が辛辣ッ‼️
    言いたいコト言える時代は幸せだったよねぇf(^ー^;
    小林秀雄ファンは一度は読むべし✨

  • 小林秀雄と、湯川秀樹や折口信夫など各界の知性ともいうべき方々との対談。歴史、哲学、音楽、絵画など、様々な分野に造詣が深く、また本質を捉えようとする意欲の結晶が表されていて、やはり学ぶこと、良いものに触れること、考えることは、非常に重要であると再確認。タイトルにある「直観」は、一般的にいう「直感=勘」とは異なり、知識の持ち主が熟知している知の領域で持つ、推論など論理操作を差し挾まない直接的かつ即時的な認識の形式。直観を前提として具体的な問題を正しく説明したり解決に導くためには、多くの経験と知識、理解が必要であり、これこそが必要なのだと思った。

  • 独特の語り口が魅力的だ.湯川秀樹との対談は,わかりにくかったが,その向かう姿勢のようなものは面白く感じた.あと,友人関係にある今日出海と河上徹太郎との
    いろんな方向へ飛んでいく対話が自然で面白かった.

  • 小林秀雄の対話集.12の対談がのっているが,対談のレベル,雰囲気にはかなりばらつきがある.東大仏文の同級生である三好達治や今日出海とはざっくばらんに話しているし,旧知の大岡昇平との対談もそう.

    そして一番緊張感があるのは湯川秀樹との長い対話.かみ合っているのか,かみ合っていないのかよくわからない部分もあるが,小林秀雄が真剣に物理学のことを,「わからない」を連発しながら,わかろうとしているのがえらい.これは岡潔との「人間の建設」でも感じたこと.もう少し,物理学の知識があればより深い話ができたろうに.

    三木清との対談の後半部分や折口信夫,福田恆存,河上徹太郎との対談は私にはよくわからない.

  • なんだか、ものすごく大きな世界に浮かんだ舟に乗って大旅行した気分。

    小林秀雄が「直感」というオールで、ものすごく大きな世界に浮かんだ舟を漕いでいく。自分もその舟に乗せてもらった感じ。

    三木清という荒波や、横光利一というさざ波を超えると、湯川秀樹というものすごい大波がやってきた。
    ざぶんと水を浴びながらも、舟は進む。
    三好達治、折口信夫、福田恆存といった波を乗り越えたあたりで、ようやく小林秀雄丸の船酔いから覚めてきた。

    梅原龍三郎という波は、水面にきらきらと太陽の光が照り返しまばゆい。
    かと思えば、大岡昇平という波で、またすこしもまれる。

    永井龍男という波は、建築畑の自分でも、少しオールを貸してもらえた気分を味わえた。

    五味康祐という波あたりから、舟はいっそうその勢いを増し、今日出海、河上徹太郎という波にさしかかるころには、もう舟と波は一体となっていた。


    というような、雲を掴むようなレビューになってしまったけれども、直感というものの深遠な世界をのぞき見つつ、なんとか振り落とされずに、波止場にはたどり着けたと思う。

    3回ぐらいは読みたい本。

  • 数学教員をしている友達が、数学的な気づきは、思いの外「論理的」じゃないという話をしていた流れで読むことになった本。数学というと「論理的な思考」をしていると世間的には思われがちだが、証明に向けた出発点、最初の気づきのようなものは、とても直感的なものだという話だ。
    この対談集では、画家、音楽家、作家、批評家、物理学者といった人たちが使っている、普段、言語化されることの少ない「直観」的なものを、小林秀雄が聞き取ろうとする。

    個人的に一番印象に残ったのは、一番最初の三木清との対談「実験的精神」と、五味康祐との対談「音楽談義」だった。
    実験的精神では、研究が進むにつれて、その分野について知っておくべき「教養」が生まれることによって、その「教養」を得ることと、その「教養」について考えることが研究になってしまったことを批判する。ある意味、福沢諭吉などの最初に何かをし始めた人たちというのは、先行論がない。だからこそ、目の前で起きたこと、目の前にある物自体を見て、思考した。そういう「実験的精神」が今の知識人にはないという。
    たしかに、何かしらの困難にぶつかったとき、考えるよりも解決法を調べたがるという精神は、今の人間にも同じことが言えるように思う。本当は、調べるのではなく、目の前で起きていることなんであるのかを分析して、ただ、その困難が解決するようにすればよいだけである。そういう物を見る精神に関する批判は、すごくささるものがあった。

    「音楽談義」が面白かったのは、より音質のよい音響機器を考えようとする五味に対して、小林秀雄が徹底的に批判的だったところだ。小林秀雄に言わせれば、音質をよくしようという考えは、「音」を聞こうとする人間の発想であって、「音楽」を聞いている人間の発想ではないのだそうだ。
    モーツァルトの曲をCDで流したとしたとき、雑音を全て取り去って、「生の音」に近づけたとして、それは、モーツァルトの音楽に近づいたことになるのか、と小林は言う。そして、それは逆も同じで、モーツァルトを目の前で生演奏したからといって、聴衆は、本当にモーツァルトの音楽を聞いていると言えるのかとも言う。
    音楽を聞く経験は、あくまで聞き手の経験であって、雑音のあるなし、生かそうでないかの違いではない。たとえ、雑音が混じっていたとしても、人はモーツァルトの音楽に感動できる。その経験の方が大切なのだと考えているのだろうと読んだ。
    単純に、音楽を聞く経験について、面白い発想だと思った。

    どの対談にも言えることだが、やりとり全体に漂う内輪感に、ものすごく時代を感じる対談だなとも思った。特に、後半の大岡や今といった人たちとの対話は、ほとんど友人の会話だった。それは、対談の中に出てくるたくさんの作品や作家、本、お互いの論文といった固有名詞に表れていると思う。その中には、今の僕たちでも、名前くらいは知っているものが多くある一方で、同じ時代に生きていた人にしか通じないようなもの多い。
    現代にも、知識人のこういった対談がないわけじゃないけれども、同じ教養や知識、論じるべき共通の作品をを持った人たち。そういった人たちの世界が狭いがゆえに、同じ問題意識を全く異なる分野の人同士でも共有できた時代の匂いを感じる。湯川秀樹と小林秀雄のような、全く異なる世界に見える二人も科学的な新しい発見という共通の話題で、つながることができたのではないかというような気がする。

    最後にある石原千秋による解説「「わかる」ことと「わからないこと」のはざまで」が、とても印象的だった。間違っていることを知りながら、それを訂正するのではなくて、「そうか」と言って受け入れる教師。自分がわからないことをわかるまで「わからない」と言い続ける小林秀雄の姿勢。
    わからないながらも、対話するなかで、ちょっと分かるようになる。そんな、人との話し方のヒントに溢れた本だと思う。

  • 抽象的な言葉が多く、そちらの世界での対談になっているところは体験していない者にとっては難しい。文学、音楽、演劇、絵画など趣味の世界を超越したレベルでの対談になっている。対象を調査しようとして得た知識をもとに対談しているのではなく、堪能しようとして辿り着いたところをもとに話している。小林秀雄が巨人だということが何となく分かるような気がする。12ある対談の中では湯川秀樹、今日出海、との対談が面白かった。

  • 学問にしろ文芸にしろ、「手」の修練から生まれる個々人ならではの到達点を是とし、「頭」から入った平板な一般解は認めない峻厳な審美眼。背筋が伸びる。

  • p.2014/1/11

  • 小林秀雄氏と十二人の対談。文学だけでなく科学,絵画,音楽,…さまざまな領域で第一線の人と語らう。ただ知っているとか好きだ嫌いだというのではなく,自分なりの直観?を持ち,それを言語化できる(しようとする)ことに驚く。関心のないことにここまで豊かな知識を持たないけれど,その関心の広がりは知識が知識を呼ぶようなものではないだろうか。自分自身が求めることに全てが関連付いている。私もそうなのだろう。広さと深さは比べるようなものではないけど。

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著者プロフィール

小林秀雄
一九〇二(明治三五)年、東京生まれ。文芸評論家。東京帝国大学仏文科卒業。二九(昭和四)年、雑誌『改造』の懸賞評論に「様々なる意匠」が二席入選し、批評活動に入る。第二次大戦中は古典に関する随想を執筆。七七年、大作『本居宣長』(日本文学大賞)を刊行。その他の著書に『無常といふ事』『モオツァルト』『ゴッホの手紙』『近代絵画』(野間文芸賞)など。六七年、文化勲章受章。八三(昭和五八)年、死去。

「2022年 『戦争について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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