東京の異界 渋谷円山町 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101019819

作品紹介・あらすじ

渋谷は「谷」である。谷底の渋谷駅からスクランブル交差点を渡って道玄坂をのぼり、坂道を右に折れると、そこは円山町。かつて都内有数の花街として栄えたこの街は、謎多きあの東電 OL 殺人事件の現場でもあった。街の生き字引や現役芸者、風俗店主らの肉声を採取し、事件の痕跡を辿る。色と欲の匂いに誘われて、路地と坂の迷宮を探訪するディープ・ルポ。『迷宮の花街 渋谷円山町』改題。

感想・レビュー・書評

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  • 本橋信宏『東京の異界 渋谷円山町』新潮文庫。

    渋谷円山町の今昔を描いたルポルタージュ。プロローグで東電OL事件に触れると、渋谷の地理的特徴、花街として栄えた街の過去からラブホテル街や風俗街としての現在の様子が描かれる。楽屋オチのように業界人と渋谷の関わりが描かれ、現役芸者や風俗関係者の声も描かれるたりと的が絞り切れないまま、何度も東電OL事件に触れていくが、事件の核心には何一つ迫らない。

    本体価格590円
    ★★

  • 読んだ後に円山町界隈を散策してみました
    都内の少しダークな感じの街をちょこっと覗くのが好きになりました
    昼間ですけど

  • 東電OL殺人事件に触発されて手に取った本。『昼の世界ではエリートの彼女も、風俗の世界ではたちんぼというヒエラルキーの最底辺に甘んじるしかなかった』という本書の中の一節に男性社会で生きる女性の悲哀を感じた。

  • あの場所を歩く時、何だかねっとりサッパリとよく分からない空気を感じるので前から興味があった。歴史があって面白い土地だなと思う。

  • 2022.4.14読了。

    東京における異界の地として、「渋谷円山町」の歴史と今が、丹念な取材により浮かびあがります。知らないことも多くあり、とても興味深く楽しめました。

    どうしてこの街に惹かれるのだろう、と読みながら考えました。

    そこは、刺激や活気に満ち満ちていて子供っぽく、最新なのに懐かしく、艶やかで淫美で危険で恐ろしい、なんでもあるけど何もなく、何一つないのに全てが揃う、魅力的だがひどく疲れる場所です。

    いつからか、あらゆる欲望を引き受けてくれる街、と認識するようになったのですが、では大いなる満足に浸れるほどの欲望が、自分にあるだろうかと思うと見当たらない気がする、いつも上っ面だけさらってわかった気になってたように思って、だから本書籍に手が伸びたのだろうと思います。

    お品書きは以下の通り。

    花街の記憶
    円山芸者
    丘の上のホテル街
    風俗の街として
    一八年目の東電OL事件
    死と再生の街

  • 以前より「東電OL殺人事件」に興味があって。
    某書店の平積みで、帯に東電OL関係の記述があり、
    何の予備知識もなく購入。

    一応「若い」筆者が頑張って取材している感はあるが、
    いかんせん「肌感覚」が伝わって来ず、
    全体的に掘り下げが浅い印象(^ ^;

    円山町が花街だった時代に触れた部分でも、
    当事者の話を聞いてはいるが、
    聞いた話をただ書いているだけのように見えて...
    筆者の個人的な強い思い入れも感じなければ、
    特に問題意識を持っているわけでは無く...
    表面上を撫でているだけの印象を持ってしまった。

    私が円山町をうろちょろしていた頃は、
    まだ三業組合も健在で見番も残っていて。
    その当時の独特な雰囲気が伝わって来ないなぁ...と(^ ^;

    もっと古い資料を掘り起こしたり、
    同じテーマを扱った先人たちの書物を「予習」していれば、
    もっともっと魅力的になっただろうに、残念な感じ。

    東電OLについて触れている部分でも、
    佐野眞一氏ほどの情熱を注ぐ訳でも無し、
    「新証言」も紹介してはいるが、
    何と言うか「他人事感」が漂っていて(^ ^;

    あまり入り込んで読めなかった残念な一冊(^ ^;

  • 「東京の異界 渋谷円山町」

    ---

    渋谷は、女たちが現実から空想の姿に変身する街だ。
    女子高生は派手なアクセサリーとメイク、金髪のウィッグをつけてギャルになる。
    私服から着物に着替え、喜利家鈴子は円山町の芸者になる。
    東電エリート女性社員はSHIBUYA109で着替え、たちんぼをやっていた。
    出産したばかりの新妻は、赤ちゃんを待機所に預けて、客に母乳を飲ませる風俗嬢
    になる。
    渋谷は、女が変身する街である。

    「東京の異界 渋谷円山町」本文より。
    ---
    渋谷の坂を登り切った高台にある歓楽街。

    階段や坂や路地が入り組み、路地を挟むように風俗店やラブホが立ち並ぶ街。
    東電のエリートOLが夜な夜な客の袖を引き、駅の踏切音が鳴り響く安普請のアパートで殺された街。

    渋谷から少し離れた異界でシノギを削る芸妓屋、風俗店、デリヘル、ラブホの有為転変と栄枯盛衰、東電OL殺人事件のその後が綴られたルポタージュ。「東京の異界 渋谷円山町」

    カバー写真は和風旅館とラブホテルと訳ありなコート姿の女が写ってる。表紙から漂う鄙びて淫靡なデジャヴ感。

    それは坂や階段に囲まれ、和風料亭や風俗店が立ち並ぶ、ちょっと前の横須賀の夜の街「若松町」の雰囲気とよく似ていた。もちろん今は乾燥したウンコにファブリーズをかけたように、面影は残っているがかつての臭気はもう消え失せてしまっている。

    もう20年以上前にただの興味から私は東電OL殺人事件の現場となったアパートを訪れたことがある。あの事件は、事件より被害者の意外な素顔の方が注目を集め、当初は生ごみに集るカラスの群れのように報道陣が現場や遺族のもとに詰めかけ、被害者の人権も遺族のプライバシーも関係なく食い散らかして、その上にクソまで垂れるように有る事無い事書き立てていた。

    私が訪れた頃には、報道陣どころか事件の傷跡や痕跡すら残っていなかった。

    まだGoogleマップもない頃、プリントアウトした事件現場のアパートと玄関が映った写真を手に京王井の頭線「神泉駅」を降りた。

    駅を降りて踏切を渡り、写真と見比べながら周囲を見回すと当のアパートは意外なほどあっさり見つかった。
    アパートのドアのへ近づき、5メートルほど手前まで来たとき、突然何か強烈な殺気を感じたように項が総毛立ち「被害者の女性はここで殺される前からとうに死んでいた。彼女は自身の生死とは関係なく今も客を引いている。」と感じ、それ以上前に進めなくなった。そのまま後退りするようにその場を離れた。

    凶暴な肉食獣から逃げるように、ある程度距離を取ってからドアに背を向け、踏切を渡って、逃げ込むように駅前の「カフェ・ド・ラ・フォンテーヌ」に入り、メニューも見ずにコーヒーをオーダーした。

    被害者は生前カフェ・ド・ラ・フォンテーヌでコーヒーを飲みながらアイシャドーを引いてたと本には書いてあった。彼女はここで夜の女になっていたわけだ。

    春先で暖かい陽気だったにもかかわらず、私の体は冷え切り、ホットコーヒーを2杯飲んでも寒気は止まらなかった。

    ようやく温まる頃、外の日は落ちかけていた。

    夜が近づくとこの街は昼とは全く違った顔を見せる。昼のお客は夜ではカモでしかない。私は神泉駅から電車は乗らずに渋谷駅目指して箱型ヘルスやラブホに挟まれた狭くて急な階段を登って渋谷を目指した。
    高台にある円山町から振り返ると神泉駅は谷の底にある。そこからまた谷底にある渋谷駅まで、大勢の客引きや、カップルたちとすれ違った。

    そんなことを思い出しながら、仕事終わりに寄ったソウルミュージックが流れるカフェバーでこの本を読んでいた。

    とにかくこの本を読めば、円山町を愛する著者が何度も訪れて丹念に調べ上げ、街に暮らす様々な方々のパロールを丁寧に拾い上げて書きあげた本だと言う事がよく分かる。

    ページを捲るたびに忘れかけていた、殺害現場となったアパートの玄関の佇まいや、京王井の頭線の踏切の音、迷路のように入り組んだ細い路地、フードダクトから吐き出される油の匂いや街に漂う消毒液の匂いやドギツイ香水や安い石鹸の匂いまでもが思い出される。

    自宅にいながら路地裏に漂う淫靡な雰囲気を味わえる事間違い無しだ。

    ぜひ、ステイホームのお供に。

  • 所謂“ヤバいところ”の中でも、散策してみてトップクラスにヤバいと思った渋谷円山町。その歴史や成り立ちを丁寧に取材された良書。

  • 東電OL事件の衝撃は、いまだにひきずってるww あの松濤の温泉スパビル(爆発した)とか。。ユニマットの社長が愛人にやらせてた。。
    本橋先生の安定の書。

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著者プロフィール

1956年、所沢市生まれ。著述家。早稲田大学政治経済学部卒。逍遙と実践による壮大な庶民史をライフワークとしている。著書に『東京最後の異界 鶯谷』、『上野アンダーグラウンド』『迷宮の花園 渋谷円山町』『全裸監督』など多数。

「2018年 『色街旅情 紙礫EX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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