生きるとか死ぬとか父親とか (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101025414

感想・レビュー・書評

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  • 自分の父親も、自分の前では「父親」の顔しか見せなかった。それが崩れてきたのが、私が高校に上がったくらいのことだ。
    どうやら仕事がうまくいっていないらしい。「波動石」やら「よくわからん麻糸」やらスピリチュアルなものにハマった時期もあった。父方の身内と父親が喧嘩して、父親に借金があると知った。私が就職した後、兄弟で両親の還暦を祝う準備をしているとき、その身内から「(私の父)に貸したお金を返して貰えないから、息子たちで返してくれ」と電話があった。その時初めて、借金が返せないくらいの額であることを知った。

    私は父が好きではない。プライドが高く、外ヅラだけがいい父を。

    それでも、「父のことは憎めない」とこの本を読んで思った。やっぱり、どこがで繋がっていて、自分のことを育ててくれたという事実。父は父ではなく、一個人の「人間」であり、醜い部分もあるということ。スーさんの面白い語り口と、後半のシビアな状況と、なんだか自分の親はどうだろうなと重ねながらつい読んでしまった。特に後半。親の大切さに気づけたよ。スーさん、ありがとう。

  • この著者のpodcastが大好きで、通勤とか寝る前とかによく聞いてたのですが、ドラマをやるって聞いてからずっと読みたかった作品!やっと読めました。

    お父さん結構破天荒だなって思ったけど、そんなお父さんにすこしでも寄り添ったり理解しようとするスーさんの優しさにほっこりしました。あと何だかんだでほっとけなくさせるそんなお父さんの人柄もあるのかなと思いました。

    波乱万丈な人生を歩んでこられたからこそ、ラジオでも言葉に重みがあるのかなと思った。そして普通なら悲しいことでも、笑いに変えてしまうスーさんは強い。特に両親共に病気で1週間精神おかしくなって、その時の記憶がないことも笑い話に変えてしまうのは本当にすごい。自分が同じ立場だったらって考えたら、出来ない。

    他の本も読んでみようと思いました。あと久しぶりにラジオいっぱい聴こう!

  • ドラマ化されたとラジオで聴きながら見られず。気になりながらやっと原作を読めた次第。

    作者と父親との過去と今。手広く手がけた事業。お金のある時代に行った名店の思い出。両親の闘病生活。高齢で生まれた一人っ子の作者が、親に目とお金をかけられて育った子供時代から一転、今度は看病に実家の処分にと一人奔走し、父親と付かず離れずの関係を続ける。母の墓参りでつながる父娘。

    時折りラジオで父親のことを話すのを耳にする機会があり、どうやら彼は相当破天荒な人だと思っていたが、それなのにスーさんが、食事を管理してあげたり関係を維持できるのはどうしてだろうと思っていた。本を読むと、お父さんの、人に放っておかせない人柄?が見事に伝わってきて妙に納得。それにしても、どうやら昔から影のちらついていた母ではない女性の存在に嫉妬し、傷つき、そして悔しくも頼ってしまった時の作者の気持ちの描写の素晴らしさ。憎めない父親の姿を描きながら、時々そんな差し掛かる暗い影に覆い尽くされることなく淡々と描き続けられる肝の座りっぷりに、改めてスーさんのファンになった。

    言われてみれば親のことなどよく知らずにあっという間に歳を取る。あの出来事はなんだったかなんて過去のことを聞けるのは、自分が大人になって親の頭もまだしっかりしている束の間しかない。文筆業を理由にしながらも、しっかりお父さんから話を聞けた作者が少し羨ましい。

  • TBSラジオリスナーとしてこのドラマは見逃せず、ドラマをいい機会と捉えて、本作を読了しました。

    別の語り口であれば相当な毒親になってしまいそうだが、それでも軽やかに、しかし母が死に、父親ではなく男としての父親と向き合う必要が出た時の、胃のキリキリするような生活。
    家族とは愛憎関係であり、これもまた地獄。
    禍福とは糾える縄の如し

    オチになり恐縮だが、母親が100万円もする服を隠し持っていたエピソードが非常に興味深い。
    母親の寂しさは、最も筆の重さを感じた。

  • ドラマを知って原作を知った。
    海外文学は敬遠していたのだが、レビューで作者が日本人と知って、試しに購入。
    面白かった!
    母のことをよく知らないまま亡くしてしまったことを後悔し、父親のことはきちんと知っておきたいという思いから書かれたエッセイ。
    面倒で突き放したくなるのに、つい甘やかしてしまう。
    深刻な話なのに、さらりと話されてつい笑ってしまう。
    「この人には一生勝てない。勝てるわけがない」
    端から見たら、確かにカッコいい。
    が、億単位の借金を抱えながら、複数の女性の支えを受け、それを隠そうともしない父。
    身内だからこその葛藤を経て、今の形があるのだろう。
    疾うに亡くしてしまった母も、父と娘の間にいる。
    「家族」なんだな、と改めて思った。

    • moboyokohamaさん
      TVドラマ、良いですよね。
      自分も亡くなった親とのことを思い出しながら、そうだよなーなんて思いながら観ています。
      國村隼さんのファッションも...
      TVドラマ、良いですよね。
      自分も亡くなった親とのことを思い出しながら、そうだよなーなんて思いながら観ています。
      國村隼さんのファッションも素敵。
      歳とってもあんなにカッコいいとうらやましいです。
      2021/06/03
    • 佳月さん
      moboyokohamaかわぞえさん
      コメントありがとうございます。
      原作を読んでからは、冒頭のラジオのシーンは省いて、父と娘のシーンを...
      moboyokohamaかわぞえさん
      コメントありがとうございます。
      原作を読んでからは、冒頭のラジオのシーンは省いて、父と娘のシーンをもっと増やして欲しいな、と思うようになりました。
      國村隼さんも吉田羊さんもとっても素敵なので尚更。
      録画して観ているので、追いついていないんですけどね。
      2021/06/05
    • moboyokohamaさん
      確かにドラマ冒頭部分はウケを狙った感じがしないでもないかな。
      田中みな実さんのファンを取り込もうって。
      その分父と娘のシーンにして欲しい、っ...
      確かにドラマ冒頭部分はウケを狙った感じがしないでもないかな。
      田中みな実さんのファンを取り込もうって。
      その分父と娘のシーンにして欲しい、って、そうかもしれないですね。
      もったいない数分に感じてしまうかな。
      ま、話の導入部ということで製作者側も工夫したのかなと納得しておきます。
      2021/06/05
  • どうしても僕の経験や実感を思い浮かべてしまうけれど、親子関係とは何だろう、と考えてみようにも呆然とするばかりです。先月父親が亡くなりました。母親は車イスの生活なので、現在施設に入居しています。僕は、ずっと実家暮らしで、両親が不在の現在の生活に、戸惑うというか、戸惑うということにすら実感がないというか。我が家の親子関係など、とてもさっぱりしているのかなあ、と。
    僕と父と。僕と母と。父と母と。父とは、もう話すことができないし、かと言って生前の父とは、あまり深い話をした記憶もなく。ああ、いまさらなのだけれど、僕がもっと話しかけること、そういうことに気づいていなかったということ。とはいえ僕は、それを悔やんでいるわけではないし。ただただ、照れくさかっただけなのです。どうしても、面と向かって話すことができませんでした。「父親と息子なんてそんなもの」誰かが言っていたことを鵜呑みにして、それでいいと思っていました。
    僕の母は、僕に厳しかった。家族全員に厳しかった。母自身にも厳しかった。だからいつも少しだけ気を使っていた。親を親とも思わないような言動には特に厳しく、反抗期だから、だなんて、そんなの理由になどならなかった。真面目で筋が通らないことが大嫌いで、そういった意味では、僕にとって見習うことが多かったと思う。そして僕のことを誰よりも褒めてくれたのが母だった。施設に入居しまったことを悔いているだろうに、仕方がない、と言ってくれている。母の強さはこういうところだと思う。
    父の死があまりに急すぎたし、葬儀の際の母の嘆きにも、僕はかなり堪えた。これから母は施設で一人きり、さぞや落ち込んでいるだろうと思いきや、葬儀のあと数日後に施設で面会すると、母は僕の予想を良い方に裏切ってくれた。しっかりしてる。現実を受け止めて、生きることを意識していた。強い人です。
     
    本の感想を記す場所なのに、僕自身のことばかりを長々と…申し訳ありません。
     
    『生きるとか死ぬとか父親とか』
    以前ドラマで観ました。主人公の若い頃を松岡茉優が演じていた。僕はいま松岡茉優に夢中です。というわけで、この本を手に取るきっかけは松岡茉優でした。じつは松岡茉優が出演していたことを思い出したのは、つい最近のこと。放送当時の僕は松岡茉優の存在自体は知っていたものの、現在のように、これほどまでに彼女のことに夢中になってしまうなど、僕自身まったく思いもよらない事態です。
    彼女が出演していたのは、
    『はんぶんのおんどり』
    の項でした。この物語の核心部分ではないかと僕は思っています。後々に至る出発点というか。親子という関係とは暗黙の領域というか、それは親子の数だけ存在する、他者には踏み込むことも理解することもできない領域ではなかろうか。安易に、分かるなどと共感を許さない機微というか。
    親子関係という安易な共感を許さないという点についてのみ共感が許される。誰しも持っている、理解ができる、かといって他人には分からない。それが親子の関係性なのでしょう。

  • これね、いいね。
    軽いイメージだったけど、裏切られた。
    彼女が人気がある理由がわかるような気がする。

  • ドラマが面白かったので原作本も読んでみた。親子といえど別人格の人間。イライラしたり理解できないこともあるし、些細なことで喧嘩することだってある。言ってはいけない言葉で傷つけることも。なのに喧嘩の数分後には冗談を言って笑い合ったりもする。家族って不思議。365日仲良しこよしの家族もいるかもしれないが、このくらいの距離感が父も娘も生きやすいのかも。

  • 一気読み。
    5回ぐらい声出して笑う箇所あり。中盤以降が前半より圧倒的に面白い。
    叔母さんが亡くなる前のスーパーでの買い物あたりからもう目が離せない。
    湿っぽくないのにしっかり胸に響く何かがある。

    ジェーンスーさん、未婚のプロとか言いながらしっかり「パートナー」がいらっしゃるんですね。

    豪放磊落なご家族に囲まれた、お金持ちのお嬢様が強かに生きているお話でした。

  • 親子の赤裸々な関係を描いた自伝的な書。
    父親を放っておけない著者が、父親をめぐるエピソードを書いてはいるが、これは自伝だとも思う。
    何より、中江友里氏の解説が秀逸!

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著者プロフィール

1973年、東京都出身。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティー。『ジェーン・スー生活は踊る』(毎週月~木曜午前11時TBSラジオ)に出演中。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で講談社エッセイ賞を受賞。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社)、『これでもいいのだ』(中央公論新社)、『ひとまず上出来』(文藝春秋)、『きれいになりたい気がしてきた』(光文社)など。

「2022年 『OVER THE SUN 公式互助会本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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