- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101027029
感想・レビュー・書評
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2013/02/10読了
岩国の女性作家 宇野千代による小説。
著者の遍歴が反映されている小説とも言えるだろうか。
読者が、男性か女性かで評価は大きく変わるかもしれない。
私の視点から見れば、まさに「女性」を体現するものであろう。
二人の女性の狭間で揺れ動く男の気持ちにはやはり共感しにくい。ただ、求めようとすること、女性らしさや生活とかよりも、自分(男)の尊厳を追求しようとすることは、まあ理解できる。
宇野千代のこうした、性別を介せず物語に昇華できるのは凄いことだろうな。
おはん、おかよ、翻弄された二者。
手記ではなく、語るという形式により、この男の人間くささ、もといヘタレ男具合が、ここぞとばかりに滲み出ている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
次郎くんのミスリードで、コジコジの母親になってしまった宇野千代。
宇野千代の名前はそれで知ったのだけど、ずっと本を読んだことがなかった。
文体が口語で方言見たいのが入っていて読みにくかった。
要するに、愛人と元妻の間で揺れ動くクズ男の話ってゆうことはわかった。正直いって登場人物全員すきじゃなかった。
強いてゆうなら、「私はこのヒモ男がほしい!」と我を通し続ける「おかよ」(愛人)の潔さは嫌いじゃないけど、経済的にも自立してる女性が、なんでこのヒモ男に固執する必要があるんだろうと思ってしまう。
一方で終始優柔不断で、押しに弱く、自分の意思などと持たない「おはん」には、「しっかりせんかい」とイライラしつつも、なぜか肩入れしてしまうような魅力がある気がした。「おはん」とゆうタイトルでこれだけ長い間支持されてる理由でもあると思う。
本当に愛している女は「おかよ」であるけど、「おはん」は心のどこかで後ろ髪をひかせる存在なのかも。
正直、おはんもおかよも、どう考えても主人公の男といるメリットないし、コスパもタイパも悪いから、早く別れたほうがよさそう。 -
故郷の祖母を思い出す方言や言い回しが嬉しかった。
読後感悪い。主人公の男の魅力ってどこにあったのかな・・・ -
2020年4月
(わたしの話だが、)
年下の友人のコイバナに「わかるよー、うんうん」なんて、まったくわかっていないくせに適当な相槌を打っている。
この人はこうだから好き、とかそういうモノではないんだろうな。恋って。
「ムラッときたから」とかそういう衝動的なものが根本にあるんだろうな。
そしてわたしはその根本がちとよくわかっていないから、まあいつものように薄っぺらな相槌を打っている。 -
解説:奥野健男(1926-1997、東京、文芸評論家)
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元妻と現妻のあいだをいったりきたりする身勝手な男の話
身勝手のみならず、彼は人から悪く思われたくないばっかりに
口約束と、けじめの先延ばしを連発して
みんな不幸にしてしまうのだった
しかしこの小説では
人は弱いものなんだから、とそれらの不始末を
なんとなく仕方のないことのようにして流してしまっている
ある面では
バブル期以降のトレンディードラマを先取りしてもいるだろう
それを許せるかどうかは読者しだいだが
終戦直後の昭和21年いらい
坂口安吾の「堕落論」が絶賛されるその裏で
こういう、「子供よりも親が大事」の太宰治もかくやたる
罪深きものが書き継がれていた事実は
なかなか興味深い
ただし、同様のモチーフを扱ったものでは
女房の合理主義と、封建的なしきたりのあいだで板挟みになる男を
道化のように書き得た点で
やはり谷崎やオダサクのほうが優れているように思う
捨てられた妻と子供に
戦争で死んでいった者たちが重ねられているのだと仮定しても
この作品の場合、どう見ても終盤はご都合主義だしなあ -
二人の女の間を男が情動で往き来する話。とにかくだらしない男の心理がありありと描かれている。
何故こんなにもと思うも、著者が恋多き方だったと知り納得。
二人の女からは一切恨みがましい表出がなかったのは不思議。私が汲み取れていないだけなのだろうか? -
主人公にもおはんにも怖さを感じます。
弱さの部分とか自分に嘘ついてそうなところとか。
主要人物では、おかよさんが一番好きというか安心できました。
語り口の柔らかい感じとか最近の本にはない情感とか好きです。 -
別れた女房のおはんと別れる原因となったおかよとの間で揺れ動く男の話。
なんというか、男がダメ男すぎて困る。それを助けられるのがおかよみたいな女。でもおはんと再び会って、子ども(自分と血が流れている)と一緒に暮らしたいと思って実行に移すも、なんの因果かその子は死ぬ。それから、法要が終わるとおはんは消える。
ちゃんと決めろよ、筋通せよと突っ込みどころ満載。
最後は男の懺悔の1言で終わっている。
本当、最後まで悔いているならさっさと行動してくれ。 -
おはんという女性の悲しさを感じる。おはんとおかよという対照的な女性と、その二人を愛して優柔不断な態度をとり続ける加納屋のどうしようもないずるさと弱さが描かれている。どこにでも実在する話なのだと思うけれど、こう客観的に読んでみるとなんと人間とは単純なものかと思う。作家は人間の知性や理性という修飾的なものを取り払った人間の生物としての基本的な部分を描いているのだと思った。