ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.78
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本棚登録 : 19001
感想 : 2164
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101036168

感想・レビュー・書評

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  • 自分の中に残ってる子供の頃から成長してないところと、無くなってしまったところ、秀美くんの心を通して、いろんなものが見えた。自分のことは、いまだに大人になりきれないなと反省する日々。秀美くんの方が、よっぽどかっこいい。
    山田さんは「大人に読んでもらいたい本」と言っていて、「叙情は常に遅れて来た客観視の中に存在するし、内なる倫理は過去の積み木の隙間に潜む」という言葉に、うまいこと言うなぁと感心した。

  • 高校一年の時の読書感想文の題材にした。薄くてすぐ読めそうだったから。

    主人公はシングルマザーの母に育てられ、勉強はできないが考え方が素敵だった。母親の主人公への接し方も一般的な母親と違い、かっこよかったと記憶している。

  • 心に響く素敵な言葉がたくさん散りばめられている作品だった!図書館で借りて読んだけれど、久しぶりに買ってもいいかなと思える小説に出会えて嬉しい。私は、こういう、さらさらとした文章なのに自分の心にスッと真っ直ぐに入ってくる言葉が秘められている本がすごく好きだと改めて思った。

    秀美はとても魅力な主人公だなと思った。そして、秀美の家族もとても素敵だなと思った。
    読みながら、私は自分のかつての学生生活を思い出していた。そうそう、学校って、楽しくてキラキラしている一方で、どこか窮屈なところもある場所だったなあと思い出す。

    本書の中で、私の好きな言葉を以下に残しておきたいと思う。

    「女の子のナイトになれない奴が、いくら知識を身につけても無駄なことである。知識や考察というのは、ある大前提のその後に来るものではないのか。つまり、第一の座を、常に、何か、もっと大きくて強いものに、譲り渡す程に控え目でなくてはならないのだ。」

    「何故、人間は悩むのだろう。いつか役立つからだろうか。しかし、後に役立つ程の悩みなんて、あるのだろうか。とりわけ、高尚な悩みというやつの中に。」

    「『世の中には生活するためだけになら、必要ないものがたくさんあるだろう。無駄なことだよ。でも、その無駄がなかったら、どれ程つまらないことだろう。そしてね、その無駄は、なんと不健全な精神から生まれることが多いのである』」

    「自分の確固たる価値観を持つのは難しい。多くの人々は、それが本当に正しいものであり得るのか不安に思っている。そこに他人の言葉が与えられることで、彼らは、ある種の道標を与えられる安心を得るのだ。」

    「その人になってみなければ明言出来ないことは、いくらでもあるのだ。倫理が裁けない事柄は、世の中に、沢山あるように思うのだが。」

    「『ぼくは、女の人の付ける香水が好きだ。香水よりも石鹸の香りの好きな男の方が多いから、そういう香りを漂わせようと目論む女より、自分の好みの強い香水を付けてる女の人の方が好きなんだ。』」

    「人は、自分の体に残された他人の刻印の威力を死というものを間近に感じた時に思いしるのだと、ぼくは、改めて感じた。」

    秀美は母子家庭で育った事実から、周りの大人に散々なレッテルを貼られて嫌な思いをした経験を持つ。だから、他の生徒よりも少し異なる価値観を持っているし、どこか達観している。だけど、恋に悩んだり、自由なふりをしたり、高校生らしい一面もある。そんな自分の人生を一生懸命生きている姿に、私はものすごく惹かれた。

  • 秀美くんは学校の成績は悪いけど、人生の成績は高いんだろうなあと思います。
    大人から見ると生意気だなあと思うし、同級生から見ると大人びてるなあと思われるのかもしれないけど、人生を達観してる所とか人間関係とか、自分らしく生きる姿勢が素敵だなあと。
    勉強が出来る事は自信は繋がるけど、頭脳より人間としての魅力を磨きたいなあと思いました。

  • 言葉選びのボキャブラリーが豊富。一度読むだけでは理解できない文章が多々あり、それを楽しむ作品なのかと。紋切り型の良い子を目指し、自分らしさを失う子になってほしくない、子育てに感銘を受けた。

  • 高校生男子の一人称で書かれたもはや古典ともいえる青春小説。今になって読むとは思わなかったが、たまたま家にあったので読んでみた。
    小説としては基本的にはとても読みやすいので爆速で進んだが、途中から読点の多さが気になってきて若干読み流し気味になり、それでも最後まで高速のまま突っ走った。で、内容はというと、面白くはあるのだが、自分自身の高校生活とはあまりに違っているので、正直、へ〜そうなんだ〜そんなことある〜?って感じである。これは田舎とか都会とかの差ではなくて、単に私が茫洋とした高校生だったからであろう。
    番外編の小学生時代の話のほうが面白かったかもしれない。主人公の視点だけでなく、若い担任教師の視点、それも教師が主人公の母親を見る視線が面白かった。しかし教師の立場で述懐したのを読むと、これってモンスター・ペアレント以前の話だなと気がつく。主人公の母親はモンスター・ペアレントとは違うが先生に簡単な尊敬は向けない存在として描かれている。今、同じような設定で書くとしても、教師の一人称で語られる内容は全く違うものになるだろう。ここで教師が語ることがピンとこない若い人もいるのではないだろうか。なかなか難しい時代である。

  • 主人公である時田秀美の価値観だったり発言が、どこか本質をついているような内容で印象的。
    そして魅力的である。

    物語に登場してくる人物にも素敵な人間性や面白味がある。
    特に物語として激しい展開がある訳ではないが、ゆっくりと進んでいく時田秀美の周りにある世界が馴染んでいく、そして読み進めるにつれて親しみが感じられるような作品だと感じた。

    ゆっくりとしているが、そんな中に時々登場人物の発する言葉がメリハリを生んでいて気持ちよかった。

  • 正確に書くと星4.4。
    昔読んだことをふと思い出したので書く。
    当時の高校一年生の私には、この話がとても新鮮で、特に主人公がなかなか見ない性格をしていて、とても面白かった。
    ちょっと冷めていて、でもちゃんと物事を受け入れて行動していて、こんな感性を少し持つ人間になりたいと思った。
    もちろん話の展開も面白い。
    思春期の人たちに読んでほしい。

  • 記録2022.9.6

  • 昔こんな子いたかなぁ…と思って読みました。
    まわりにはいないけど、ドラマに出てきそうな子。
    そんな印象かな。
    勉強は出来ないけど、魅力的な子。
    そんな主人公の学生生活のお話でした。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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