美しい星 (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101050133

感想・レビュー・書評

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  • 本作は三島にしては平文で大衆よりなのだろうが、やはり部分部分に出てくる三島節は凄い。トンデモSF系と思いきや後半は怒濤の思想文学っぷりでくらくらした。

  • 自分たちが常に目にしているものが、自らを宇宙人と受け入れたことで色が変わってみえるのが新鮮でとても面白かったです
    私も自分を他所の星から来たものだと思って、日常過ごしたいと思いました

  • 後半にかけて面白さが増していく。羽黒助教授との論争はページを捲る手が止まらないし、何より自然や人物の言葉、行動に対しての表現が美しい。他の作品も読みたくなりました!

  • 三島由紀夫の文章って派手で読みにくいな〜と思うのになんかまた読みたくなってしまう不思議さがあります。


  • 自分たちを宇宙人と信じ込んだ(若しくは本物)家族が人間につき論を巡らせる思想小説。
    各所で異色の作品とされているが、作中の自称宇宙人が論じる人類滅亡論・救済論は、いずれもしばしば三島の言語化により示される真理(正論)のようなもの。
    エンタメ性を持たせつつ当時の時代背景や作者の胸中が伝わり、社会派とも取られる作品だがよく考えられている。

  • 三島由紀夫のSF風純文学。
    書かれたのは、1962年、東西冷戦時代。核兵器使用への恐怖が色濃かった。
    人類滅亡への現実的な不安感が、漂う時代。

    埼玉県のある家族が、それぞれ地球外の宇宙人である事に気づく。父は火星、母は木星、息子は水星、娘は金星出身。
    家族は、特に父親は地球を破滅から救うべく、宇宙人であることは隠し、世界平和に向けた活動をする。
    あくまで、三島由紀夫らしい美しい文章で、綴られる家族の活動は、藤本義一の重喜劇のごとく重コメディのようです。
    対して、宮城県に、白鳥座の未知の惑星からの宇宙人3人組が、人類をいっそ滅ぼそうという思想のもと活動を始める。
    全10章からなりますが、8から9章の宇宙人それぞれの地球に対する意見の応酬は、救済派と滅亡派ともに真理を得ている。
    政治的な側面があり、SFを描きたいというより、宇宙人という俯瞰的な立場を利用して、多少コメディ風に、三島由紀夫の当時の緊張した政治への意見を書きたかったのかと思う。

    • Manideさん
      おびのりさん、感想1100冊目ですよ
      (^^)パチパチ
      すごいですね。
      しかも、三島由紀夫というところがまた…なんか、すごいですね。

      三島...
      おびのりさん、感想1100冊目ですよ
      (^^)パチパチ
      すごいですね。
      しかも、三島由紀夫というところがまた…なんか、すごいですね。

      三島由紀夫作品読んだことないですが、宇宙人が登場するような物語もあるんですね。とてもイメージとのギャップがあります。
      いつか三島由紀夫読んでみたいですね。
      2023/11/25
    • おびのりさん
      Manideさん、こんばんは。
      丁重なレビューを続ける350冊でしたよね。
      お仕事等お忙しい中、レイアウトもいつも美しく
      感心しています。
      ...
      Manideさん、こんばんは。
      丁重なレビューを続ける350冊でしたよね。
      お仕事等お忙しい中、レイアウトもいつも美しく
      感心しています。
      私は、といえば、今回もなんとなく登録してしまいました。
      ほんとにたまたま、三島由紀夫の文学忌だったんです。そのうち三島由紀夫も読んでください。
      皆さん思っているより、面白いですし、言葉がぎゅっとなっていて、ほうわあってなります。(個人の感想です。)
      2023/11/26
    • Manideさん
      おびのりさん、コメントありがとうございます。

      三島由紀夫作品、どこかで一気に読んでみたいですね。
      どこかでゆっくり読んでみます(^^)
      おびのりさん、コメントありがとうございます。

      三島由紀夫作品、どこかで一気に読んでみたいですね。
      どこかでゆっくり読んでみます(^^)
      2023/11/27
  • これを読んでいた時(7月の初め)、日が暮れて、しばらく経った頃(8時過ぎくらい)に何気に空を見たら、やたら明るい星があって。
    星にしては明るすぎるので、「飛行機?」と思ったけど全く動かない。
    「本当に星なの、これ!?」と空を見回したけど、空は曇っていて、他に星は見えない。
    「あれだけ明るいってことは金星なんだろうけど、それにしてもこんなに明るいもの?」と不思議に思って。
    ネットで見てみたら、なんと、7月7日が金星の最大光度なんだとか。
    しかも、初めて知ったんだけどw、金星って満ち欠けして。最大光度の頃、つまり、ちょうどその頃、望遠鏡で見たら三日月のような形なんだとか(゜o゜!
    それが書いてあった、国立天文台のサイトによれば、その頃はなんでも、地球から見える金星に太陽の光があたっているのは1/4くらいで。
    細く欠けているんだけど(やたら細い三日月みたいな感じ?)、視直径(見える大きさってことか?)は、外合の頃(地球から見て、金星が太陽に向こう側にある頃)の比べ4倍くらい大きく見えるらしい。


    というわけで、その金星には住んでいなくて、地球に住んでいる金星人(?)が出てくるw、この『美しい星』だ。←本題に入るまで長すぎw
    三島由紀夫こと、ミッシーが書いた小説だ。←気安すぎ(^^ゞ

    三島由紀夫くらい、知っている。
    でも、小説は読んだことない(^^ゞ
    つまり、知っていると言っても、その名前と市ヶ谷駐屯地で切腹して死んだことくらいだ。

    小説なら、小1の頃から読んでいるし。
    高校生くらいは、いわゆる“若さ故の過ちw”で、文学にのめり込みかけたようなこともあったから(爆)
    どこかでミッシーの小説(ミッシーって、誰だ? エリオットか?w)に接していてもおかしくないと思うんだけど、なぜかカスりもしなかった。
    というか、三島由紀夫っていう人がいたことを忘れていたのかもしれない。

    そんなミッシーこと、三島由紀夫を読んでみたいなぁーと思ったのは、Eテレの「100分de名著」でやっていた『金閣寺』を見た時だから、もう何年も前だ。
    日本が戦争に負けて、世の中の価値観や常識がものすごい速度で変わっていく中、アイデンティティーを失っていった、ある意味真面目で純情な人たちがいたわけだけど、三島由紀夫みたいな人ですら、あの頃はそうだったんだなぁーと知って興味を持ったのだ。
    なのに、読まなかったのは、三島由紀夫って何が面白いの?ってなった時、まず出てくるのが『金閣寺』だったからだろう(^^ゞ

    いや。「100分de名著」で『金閣寺』を見ていた時は、ちょっと面白そうだと思った。
    思ったんだけど…。
    でも、『金閣寺』ってさ。
    金閣寺(金閣)が燃えちゃう、それだけの話だよね?
    それなら、津山事件を描いた松本清張の『闇をかける猟銃』の方が猟奇的だからドキドキして面白いよね?
    みたいなー(爆) ←本当に100分de名著を見たのか!w

    高校くらいの頃、“若さ故の過ちw”で文学にのめりかけたのが一気に冷めたのは、アレキサンドル・デュマの『ダルタニャン物語』を全巻読んで。
    そのあまりの面白さに「文学なんて、何でも深刻ぶりたい人が深刻ぶるためのもの」って思ったからだ(^^ゞ
    つまり、『金閣寺』にイマイチ手が伸びないのは、そういうことなんだろう。
    ていうかー、『ダルタニャン物語』を読んで、「文学なんて、何でも深刻ぶりたい人が深刻ぶるためのもの」って思ったのは、“若さ故の過ちw”といかないまでも、若さ故の上から目線ではあったんだろう(爆)


    そんなミッシーこと、三島由紀夫(←しつこい!w)とは全然違う話になるようだが、自分はテレビ東京で朝やっている「モーニングサテライト(モーサテ)」という番組を録画して毎日見ている。
    経済情報中心のニュース番組なんだけど、NHKのニュース(?w)と違って、海外の情報が多く紹介してくれるところがいいのだ。
    そんな「モーサテ」だが、たぶん15年くらい、月〜金、毎日見ているから。自然とそこに出てくるアナウンサーに親しみを感じるようになるw
    その中に、角谷さんというアナウンサーがいて(今はWBSに出ているよw)。
    いっやー、こんなキレイな人いるんだぁーって、最初の頃は呆れてw見ていたんだけど。
    ずっと見ていたら、キレイはキレイなんだけど、コオロギをなんの躊躇もなくポリポリ食べてたりして、意外と親しみやすそうな性格なんだなぁーって思ったらファンになっちゃっと(^^ゞ
    とか言って、その頃、別の曜日を担当していた西野さんの方がちょっとだけファンだったりしたんだけどね(爆)

    それはともかくw、角谷さんってどういう人なんだろう?ってウィキペディアで見てみたわけ。
    そしたら、「好きな作家は、三島由紀夫」とあって。
    こんなキレイな人が、なんで三島由紀夫なんか読まなきゃなんないんだろ?って←角谷さんにも、ミッシーにも失礼だろ!w
    その点で、三島由紀夫に興味をもってしまったのだ(^^ゞ

    でー、読んだかと言うと、そんなこともなくw
    というのは、三島由紀夫というと、まず出てくるのが『金閣寺』。
    『金閣寺』というと、金閣寺(金閣)が燃えちゃうだけの話だよね?
    それなら、津山事件を描いた松本清張の『闇をかける猟銃』の方が猟奇的で面白いよね?
    やっぱり、そこに戻っちゃうわけだ(^^ゞ
    ちなみに、『闇をかける猟銃』は、何年か前に読んだんだけど、特に面白くもなかった…、というかー、ぶっちゃけ、『八つ墓村』の方が面白いよね?
    みたいな?←たんに真面目な本が読みたくないだけだろ!w


    ということで、三島由紀夫だ(^^)/
    ブクログのミョーな面白さは、読みたい本を不思議と見つけてくれるところだったりする。
    つまり、たまたま「いいね」をくれた方だったかな? その方の本棚を見たら、三島由紀夫の本が何冊もあって。
    「いいね」をくれた本の(その方の)感想が、自分の感想の何倍も知的かつ、整理されていたこともあって、この人の感想なら参考にしていいんじゃないか?と思ったのだ。
    そんなわけで、時間が空いた時とかに、その方の本棚をつらつら読んだりしていたんだけれど。
    それでもなお読まなかったのは、やっぱり三島由紀夫=『金閣寺』だからだろう(^^ゞ
    いっそ、銀閣寺だったら、今すぐにでも読むんだけどなぁーってこともないんだろうけどw、それはそれとして、『金閣寺』というハードルはそのくらい高い。
    それは、金閣は3階建てだけど、銀閣は2階建てだから、ハードルがちょっと低い、ということではない。←どーでもいい!w

    つまり、自分が三島由紀夫を読むには、『金閣寺』じゃない面白そうな三島由紀夫の作品が見つかればいいわけで、こうなったら、こっくりさんか、生成AIに聞くしかない!と(^^ゞ
    ただ、こっくりさんに聞くには一人ではダメなので。
    じゃぁ、AIのご託宣を仰ぐか…、と。
    「三島由紀夫を読もうと思ってるんだけど、最初に何がおススメ?」とグーグルの「Bard」に聞いてみたところ、出てきたのはまたもや『金閣寺』。┐(´д`)┌
    いや。『仮面の告白』とか『潮騒』、あと『鏡子の部屋』に『豊饒の海』もおススメとして上がっていたんだけど、やっぱり『金閣寺』と一緒で、どれも、なぁ〜んかイマイチ手が伸びない。

    というわけで。
    今度は、たまたま「いいね」をくれた方に、そのグーグルの「Bard」の回答を(ある意味ネタとしてw)コメント欄に書き込んでみたと。
    すると、その人曰く、“三島由紀夫は社会派系と恋愛系に分けられる。さらに、甘美系と酷薄系があるんじゃないかと思う”と書いてあって。
    それを読んで自分としては、三島由紀夫に社会派系、恋愛系があるのはなんとな〜くわかるし。甘美系も、そんな感じあるなぁーと思ったんだけど、酷薄系という作品が今ひとつイメージ出来なくて。
    であれば、その方が酷薄系の傑作としてあげていた『宴のあと』、それを読もうじゃないかと流域面積世界最大の川wへ。
    ところが、どういう運命のイタズラか?w
    レビューを読もうとスクロールしていたら、『美しい星』というのが目に飛び込んできた。
    『美しい星』?
    こんなタイトルの三島由紀夫の本、あったっけ?と、なんとなーく興味を引かれて、ついクリックしてみたら…。
    “自分たちは他の天体から飛来した宇宙人であるという意識に目覚めた一家を中心に、核時代の人類滅亡の不安をみごとに捉えた異色作”って、何だそれ!? そんな三島由紀夫の本あったのか ……、という戸惑いとともに脳裏に浮かんだのは、今をさること10年? いや、20年くらい前か? 「超常現象バトル」に出てきた、UFOコンタクティーと称する、たんなるバカな人が話していた、「あー、あー、あー。うー、うー、うー」みたいな宇宙語(爆)
    あ、これ、そういう話?←絶対違うw

    というわけで、自分が初めて読む三島由紀夫はこれしかない!!と(^^ゞ
    だって、金閣が燃えるより、男色に目覚めるより、宇宙人の方が何十倍もエキサイティングだし、面白いじゃん!
    ……と読み始めた『美しい星』だったが、読み始めて、最初のページでびっくり!
    暁子って、角谷さんと同じ名前じゃん!(^^)/



    そんな、ミッシーファン…、じゃなかったw、三島由紀夫ファンには怒られちゃいそうな、初・三島由紀夫だったが、うん。まぁー、これは小説としてはイマイチかなぁ〜って?w
    ていうか、どうなんだろう?
    著者としては、後半をあらかじめ想定した上で、前半を書いていたんだろうか?
    …と首を傾げてしまうくらい、前半と後半でチグハグ感があるよーな?

    ていうか、後半の重一郎と羽黒たちの議論は、ほぼ意味不明(爆)
    ま、その意味不明が、何でもかんでもわかりやすくしちゃって、誰も何もわからないし、わかろうともしない。
    さらに言えば、わかった風な顔して語っているヤツの話が専門的すぎて、ミクロで見て言うならうなずけなくもないんだけど、マクロで見たらそれって左翼の考え方だよね?みたいなことばかりな、今の時代性ゆえなのか?w
    それとも、この時代(出版されたのは1962年らしい)は、みんなでこんな意味不明な議論を楽しんでいたのか?w、その辺りはわからない(^^ゞ
    ていうか、60年代前半の情勢に基づく話を、今さらわかった顔する必要もないよーな?(爆)

    ただ、ざーっと読んだ限り、三島由紀夫自身のスタンスは、たぶん、羽黒の側にあるんだよね?
    坂本龍馬が言ったんだか、坂本竜馬が言ったんだか知らないけどw、『竜馬がゆく』の中に、“世界の人民をいかに皆殺しならんと工夫すべし。胸中にその勢いあれば天下に振うものなり”とあったと思うんだけど、たぶん、三島由紀夫も、事を成すにはそのくらいの非情さが必要だと自らを律していたということなんだろう。
    ていうかー、三島由紀夫の後の行動を踏まえると、戦後の日本人やその社会の風潮にウンザリしていて。「こんな浮薄な世の中、今すぐ滅んでしまえ!」と怒りで書いたのかもしれないし。
    そこまでいかないまでも、戦後のその時代をニヒリスティックに捉えた上での、多分にギャグを含んだ皮肉なのかもしれない。
    三島由紀夫という人がどういう人だったかイマイチよくわからないので、その辺はなんともだけれど。
    ただ、この本を読み終わってみると、実は三島由紀夫って、戦後の日本のカルチャー(大衆文化)の土台を、結果的につくっちゃった人であるような気がするんだよね。
    エロ・グロ・ナンセンスというのとはちょっと違うんだろうけど、羽黒の語っていることは、戦後の知識人による日本人へのブラックユーモアな皮肉という面が強いような気がするかな?
    ただし、それはユーモアのように穏やかなものではなく。それこそ坂本龍馬(竜馬?)じゃないけど、“戦後の日本人をいかに皆殺しならんと工夫すべし。胸中にその勢いあれば天下に振うものなり”的な、戦後の日本人とその社会をブスリと刺して。
    その反応を見て、イヒヒと笑って喜ぶユーモアなんじゃないだろうか?w

    一方、重一郎の語っていることは、もしかしたら、三島由紀夫の理想(?)である、自分が育った「浮薄でない戦争前の(上流階級の)日本社会」、つまり、「美しい星」に住んでいた頃のノスタルジーってことなのかなぁーと思った。
    そういう意味じゃ、ピュアな三島由紀夫?(^^ゞ

    そんなことを考えると、そのピュアさを恥じ、それを隠すために三島由紀夫特有の観念論をまとうことで、死ぬことに美を見出し、そこに突っ走っちゃったのって、どうにかならなかったのかなぁーって思うかな?
    昔、♬ツッパることが男のたった一つの勲章ぉ〜なんて、思わず、中二病も大概にしろよ、ばぁ〜か…w、って呆れちゃう歌(いや。その部分だけ好きだったw)があったんだけどさ(^^ゞ
    ツッパらなくていいの、イヤなことはしなくていの、自分が生きやすいように生きればそれでいいの的な左翼の腐ったのwみたいな考えばかりが横行して。
    誰もツッパりもしなければ、イヤなことなんてしないで楽ばかりして、いつの間にか後進国に住む人になっちゃった私たちニッポン人wを、「それでいいのかぁー、ニッポン人!」って大喝してくれる存在として、生きていて欲しかったかなぁー(^^)/

    もっとも、生きていれば生きていたで、テレビを始めとするエンタメ業界の重鎮としてチヤホヤされていて。
    もぉー、鼻持ちならないくらい、嫌ぁーなヤツになってたかもしれないけどね(爆)
    ていうかさ。
    もし、三島由紀夫が生きていたら、たぶん「朝まで生テレビ」とかに出ていてw
    大島渚と「バカヤロー!」、「お前こそバカヤロー!」なんて言い合っていたのかな?
    それはそれで、ちょっと見てみたかったよーな?(^^ゞ
    (あれ? 大島渚って、まだ存命なんだっけ?w)


    そんな『美しい星』だが…って、もはや、どんな『美しい星』だ!?って感じになってきたがw、最後はミョーに家族の内面をしみじみ描いて、静謐に終わる。
    その静謐な感じが、昔読んだ『赤外音楽』の原作とちょっと似ていて(?)、結構好きだった。
    もっとも、こっちの静謐さは、夜のそれなのに対して、向こうは(確か)昼間のそれだし。
    向こうは、主人公たちは、行かないことを選ぶのに対して、こっちは行っちゃう…、のか?w
    ていうか、『赤外音楽』の原作なら、こっちの方がまだ面白いんだけどさ(^^ゞ
    (って、ウッカリ『赤外音楽」のネタバレしちゃってゴメンw)
    ていうかー、そう、著者としては羽黒と重一郎が議論している内容は書きたかったんだろうけど、あの部分はない方が、たんに文芸作品としてスッキリ楽しめたんじゃないのかな?
    暁子が金沢に行く章とラストは、その情景がまざまざと浮かんでくるだけに、なぁ〜んか惜しい気がした。

    ただ、なぁ〜んか惜しい、と思っちゃえる内容の小説を、羽黒と重一郎の意味不明な議論で惜しげもなく破茶滅茶に出来ちゃうことこそが、その辺の作家と三島由紀夫の差なのかも?w、なぁ〜んて思ったりもした。
    やるじゃん! ミッシー(^^)/

  • 凄かった。三島由紀夫の感性と知性と美意識が宇宙人と円盤に出会い生み出す唯一無二のスパーク。果たして宇宙人たちは人類のどこに救済すべき価値を見出すか。著者の人類に対する深い憂いと苦悩から絞り出されたその価値観、激しい議論と洞察力に胸打たれた。

  • 「大杉家には秘密ができた。一家全員、宇宙人だと自覚したのだ。父は原水爆を憂い米ソ首脳にメッセージを送り、金星人の同胞と称する男を訪ねた娘は処女懐胎して帰ってきた……。対立する宇宙人〈羽黒一派〉との人類救済の是非を巡る論争は『カラマーゾフの兄弟』「大審問官」の章とも比肩する。三島文学の主題がSFエンターテインメントと出会った異色作。」

    「結局、彼らが本当に宇宙人なのかどうかなんてことは問題じゃない。彼らがそう「思いこんだ」ことが大事な小説なのだ。ー私たちが本当に何かを大切にしたり、強く信じたり、夢見たり、美しいと思うことは、実は「自分たち一家は宇宙人である」と思い込むことと同じくらい強く、ある主のキモチワルさを残す。きっとほかの人から見たら「なんでそんなに・・」って引かれると思う。それがどんなに切実なことでも。」
    「三島由紀夫は、その信念に対する本気度がちょっと飛びぬけていたんだと思う。生きることとか、人間とか、国家とか、そういう大きなものに対する思想や美学。彼は本気で、切実に「美」を追いかけていたんだと、小説を読んでいるとわかる。」三宅香帆

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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