サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050270

作品紹介・あらすじ

獄に繋がれたサド侯爵を待ちつづけ、庇いつづけて老いた貞淑な妻ルネを突然離婚に駆りたてたものは何か?-悪徳の名を負うて天国の裏階段をのぼったサド侯爵を六人の女性に語らせ、人間性にひそむ不可思議な謎を描いた『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)。独裁政権誕生前夜の運命的な数日間を再現し、狂気と権力の構造を浮き彫りにした『わが友ヒットラー』。三島戯曲の代表作二編を収める。

感想・レビュー・書評

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  • 戯曲を読むのはなかなか難しい。女性しか登場しないサド公爵夫人と男性しか登場しない我が友ヒットラーという正比はおもしろい。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/713404

  • 戯曲二篇。「わが友ヒットラー」は、突撃隊幕僚長でヒットラーの友人を自認するエルンスト• レームと、ゴレゴール•シュトラッサーから見た、「長いナイフの夜」と呼ばれる1934年の大粛清劇の前後を描いたもの。政権基盤を固めるためなら苦楽を共にした友人をも切り捨てる、という独裁者あるあるの周りの当事者の視点、というのが面白い。

  • あとがきにも書いてあるのだが、女脳、男脳というくくりはあって、例えば各々得意不得意がきっちり別れているのだが、自分は女脳らしく、「サド夫人」は面白く読めたが、「ヒトラー」の方は全然頭に入ってこず、なので感想はサドの方のみ。ほんとねー、あんな日の丸はちまきとか巻いてね、ここまで女ごころのひだまでわかっちゃう、あれ、これって誰訳だっけ、三島だったよ、って何回も確認させられる程のソフィスティケイトさ。もうなんなのよ、今みたいにスマホが何でも教えてくれるんじゃなくて、頭に全部入ってんだぜ。バケモンだ。

  • 三島由紀夫の作品をなんとか理解できるようになりたい!彼がそれぞれの作品に込めた想いを理解したい!
    圧倒的な教養の不足と己の傲慢を感じます……
    【サド侯爵夫人】サドの狂気も、ルネの貞淑も、行き着くところは同じということ?サドが狂気を極めるのと対になるようにルネは貞淑を極めた。最終的には戻ってきたサドに夫婦としても思想的にも愛想を尽かしたのかな、と。
    【わが友ヒットラー】レームから見たヒトラーの話だったんだな、と。解説にもありましたが右と左を切り捨てることで政治的中道を示すパフォーマンス。いかにも悪が生まれる瞬間って感じで、映画のジョーカーが誕生した瞬間みたいでした。単純に怖かった。必死に自分を肯定しようとしているのも痛々しかったし。「男の友情」とはなんだったのか。

  • 二編あったが、どちらも戯曲形式になっている。

    前者はサド侯爵の噂話を通じて、その有り様が伝えられていく。時間の跳躍があり、心模様の変遷が語られていく。母と娘の気持ちの行き違いがあって、それが交差していく。サドの狂気は全面に出ないが、その受け止め方にこそ狂気がある。しかし、幻のサド侯爵が現実になると、とたんに、その狂気も冷めてしまう。

    後者はヒットラーとレームの友情が語られていく。しかし、レームはヒットラーの命令で殺される。それに関する描写がないので、実感が湧かない。極左の人間と、極右であるレームは話をするのだが、私の予想では、そこに密告者がいたということでの射殺かもしれないとも考えたのだが、左も右も殺してしまえば中道路線を保てるというヒットラーの天才が成し遂げたというのが、正しい読み方のようだ。

  • 三島自身の解題にほぼ全てが語られていると思う。個人的には『サド侯爵夫人』の方が、情景描写にドキドキさせられたが、主題や登場人物という観点では『わが友ヒットラー』の方が愛おしく、切なかった。楯の会の三島由紀夫が『わが友ヒットラー』を書いたことも、はたして彼自身の心情はどこまで吐露されているのだろうかと思う。

    「君は左を斬り、返す刀で右を斬ったのだ」を読む時、そこに浮かぶには日本刀で、戦前の昭和を思い浮かべてしまった。三島が能や歌舞伎に造詣が深く、劇作家でもあるという事実からも、戯曲に対して期待値は高く設定したが、それにきちんと応えてくれるところにますます三島由紀夫という作家の作品への信頼を深める一作となった。

  • 痴人・三島由紀夫面目躍如 

  • 三島由紀夫、天才。サドの本は気持ち悪いが、妻に着目すると、サドとの違いがきわだって、人間の価値観の幅を楽しめる。

    以下、好きだったことば。

    ・幸福といくのは、何と云ったらいいんでしょう、肩の凝る女の手仕事で、刺繍をやるようなものなのよ。退屈、不安、淋しさ、物凄い夜、恐ろしい朝焼け、そういうものを一目ひとめ、手間暇かけて織り込んで、平凡な薔薇の花の、小さな一枚の壁掛けを作ってほっとする。地獄の苦しみでさえ、女の手と女の忍耐のおかげで、一輪の薔薇の花に変えることができるのよ。

    ・(鍵穴に鍵をはめるようや退屈な暮らしに対して)あなた方は、鍵を開ければ一面の星空がひろがる不思議な扉のことなどを、考えてもごらんにならなかった。

    ・この世でもっとも自由なあの人。時の果て、国々の果てにまで手を伸ばし、あらゆる悪をかき集めてその上によじのぼり、もう少しで永遠に指を届かせようとしているあの人。アルフォンスは天国の裏階段をつけたのです。

  •  フランス革命期を背景に女6人(ルネ夫人・母モントルイユ・サンフォン伯爵夫人・シミアーヌ男爵夫人・妹アンヌ・家政婦シャルロット)だしか登場しない’’サド侯爵夫人’’、長いナイフの夜事件の直前を舞台に男4人(ヒットラー、活動家エルンストレーム・ナチ党左派シュトラッサー・鉄鋼王グスタフクルップ)しか登場しない’’わが友ヒットラー’’、何度も上映されてる三島由紀夫の台詞劇。非常に制約された状況下でこれだけの作品を作り上げた著者の激烈な才能を感じさせる一作。才能は感じたけど本で読んで面白いかどうかはまた別かもね、舞台で見るほうが面白そう。
     あとシャルロットをなぜ登場させてるのかの必然性が不明だった。愚直なエルンストレームに焦点を当てた描き方はよかった分シュトラッサーがかすんでしまったかな。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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