鞦韆 (新潮文庫 は 15-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101054131

感想・レビュー・書評

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  • 登場人物のモノローグ形式で記された、性愛小説六編を収録しています。とりあげられているのは、モデルの少年とカメラマンの男、作家夫人とその夫の留守中に家を訪ねてきた少年、嫁と義父・義母、猟奇的な医者と患者の男、夫に愛情を感じられない妻などです。

    ベッドの上も権力の作用する場であるということはしばしば語られますが、そのようにいってしまうと、あたかも権力の作用が単一の方向性を示しているかのように理解されてしまいます。しかし、元来こうした洞察が、ミクロな権力作用を分析するまなざしによってもたらされたということを反省するならば、そうした粗雑な見かたにとどまっていることはできないはずです。甘えたり憤ったり、媚びたり蔑んだりと、行為の進展にともなって微細な権力の作用が錯綜する場であることがわすれられてはなりません。本作には、モノローグという言説のなかで、その立場がめまぐるしく入れ替わっていく経緯がえがかれています。

    個人的にはこのような読みかたが可能だと考えていますが、著者の気負いがやや空回りしてしまっている印象を受けたのも事実です。著者は1948年生まれであることを思えば、性という領域が文学にとって開拓されるべき地とみなされていた時代の作品であり、現代ではそうしたインパクトは薄れているようにも感じます。

  • 江戸川乱歩の「盲獣」などのエログロ話から
    話が派生していっておすすめされたのがこの本。
    絶版になっていたものを、捜し求めてたまたま
    手に入れることが出来て読んでみたのだけど…
    エログロというよりも、エロなお話でした。

    登場人物の独白形式で進んでいくのだけれども、
    情景描写がいっさいなく片方の台詞しかないので、
    想像する余地がたっぷり。
    台詞だけのラジオドラマを聴いてるようなそんなイメージ。
    少年とオッサン、少年と人妻、欲求不満な人妻、
    医者と看護師と患者など…
    いろんな性愛のバリエーションが展開される。
    一番最初の少年とオッサンの話である「魔」はエロさ全開。
    喘ぎ声のような部分から果てるところまで。
    一般的にいう小説形式とは違う形でこういった描写も
    できるんだな、と感心してしまった。

    裏表紙に「異常な世界をリアルタイムで実況中継」と
    あったけれども、その言葉は相応しいなと。

著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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