- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101057033
感想・レビュー・書評
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武者小路実篤 1885.5.12 -1976.4.9 実篤忌
恋愛小説で良いのかな。
まだあまり売れていない小説家が、友人の妹に恋をする。活発で明朗な彼女に惹かれる。二人は、ゆっくりと愛を育む。そこへ、作家のパリへの留学が決まり、結婚の約束をして旅立つ。いよいよ帰国の船の上で、彼女がスペイン風邪で急逝したとの電報を受け取る。失意の作家。その後の人生を彼女を忘れずに生きる。
このストレートな悲恋感が人気だったのでしょうか。映画化ドラマ化されているようです。
恋に堕ち、遠距離恋愛、死別と、今でもコミックのストーリーにありそうな。
武者小路先生は、村落共同体「新しき村」が謎なんですよね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「あんなに丈夫だったのに、どうしてあんな風邪位にやられたのか。尤も今度のスペイン風邪という奴は丈夫なものの方がやられるらしい」(124p)
武者小路実篤の小説を中学校以来初めて読んだ。いっときから、彼は好きな小説家ではなくなっていた。思えば、彼を読んでいたのは、現在の中学生がライトノベルを好んで読むのと同じだったのかもしれない。ほとんどが会話文であり、少し変な言葉遣いを気にしなければ現代話とも思えるような時代性、社会性の無さが気持ちよかったのだろう。それが反面物足りなさを感じて、わたしはやがて離れていった。
本書を選んだのは、分厚いスペイン・インフルエンザ歴史書の中で、二つしかない「スペイン風邪」が描かれた文学のうちの一つだと教えられたからであって、武者小路文学を読みたかったからではない。まぁ久しぶりに読んで、酷いライトノベルでもないけれども、深遠なテーマを描いたライトノベルでもないという感想を持った。それはともかく、スペイン風邪である。
夏子は、同じ小説家仲間の妹で、逆立ちや宙返りが得意なお転婆高校生として登場して、数年後に美貌の女性として再会する。主人公は、両思いになった後で、半年間の巴里遊学に出かける。帰ってからの結婚を約束しているので、文通は欠かさない。帰りの航海の途中にも夏子からのアツアツの手紙が届くくらいである。ところが、シンガポールに着いた時に夏子の兄から訃報の電報が届くのである。
1918年のインフルエンザ第一波は、それほどにも突然で、20数万人が亡くなった。昨日までピンピンしていた若い女性が、3日足らずで亡くなることはあり得る。臨終の様子は兄の会話文にあるだけで、ほとんど語られない。スペイン風邪とは何かも、語られない。スペイン風邪文学とは、やはり言いたくはない。
解説子は、本書発表当時(1939年)の情報統制の中で、戦争で若者が亡くなることへの精一杯の批判だったのだろう、と述べる。それがあるにしても、そうだとすれば尚更、夏子だけでなく他にも美しい若者が何十万と亡くなった社会にどうして触れないのか。主人公の社会とは、生活に心配のない周りの人たち(家族と友人)だけなんだと、わたしは思った(言うまでもなく武者小路は子爵の息子である)。今日改めて武者小路文学を読んで、もう要らないと思った。 -
1939年作品。「友情」に続けて読みました。著者に対する知識としては、もちろん文学史の授業で学んだ白樺派の代表的な作家であることと、いろんなところで目にする色紙くらいでした。久々に「友情」を読み返して、代表作の「愛と死」も読みました。あらすじとしては、若い二人の往復書簡を中心とした恋愛物語です。タイトルから想像するエンディングですが。この先の村岡の文筆活動が、どういうものになるのか期待を持たせてくれるように思えました。手紙の内容が甘くて、にやけてしまいました。手紙って、やっぱりいいなあと思いました。
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1939年(昭和14年)の作品。普遍的なテーマのせいもあるかもしれないが、古さを感じなかった。読まずに死なないで良かった。
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2人が愛し合う場面の描写によって死が余計につらくて悲しくて、死の描写によって2人の愛が余計に尊かった。
「死ぬということは実によくない。」本当にそう、切実、つらい -
私がスペイン風邪という言葉を知ったのはこの本。
コロナになって思い出した。号泣しながらイッキに読んだなぁ。切ない恋物語です。
今の時代では味わえないのだろうなと。 -
夏子の死後に村岡が一人思うこと、
死んだものは生きている者にも大なる力を持ちうるものだ。生きているものは死んだ者に対してあまりに無力なのを残念に思う。
と
「元気にします。元気にします」と自分は心の内で言ったが、同時に
「あなたが居ないのに元気になれというのは無理です」と言った。
「そんなことをおっしゃるものではありません」
そんな声が聞こえそうな気がした。
が印象深い。
正直、というか、
気持ちにうそがない感じで。
設定は「友情」と似ているけれど、
こちらもしびれるせりふが多くてしみます。
涙がでる。
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おすすめされて読んだ本ですが、なかなか本屋さんで出会えずやっと見つけて、軽い気持ちで読んだらボロボロと涙が止まりませんでした。
小説や漫画で私が読んだり見てきたものは詳細に描かれていたり、主人公の気持ちがドッと伝わってくるようなものが多かったのですが、この小説は私が今まで見たものとは違いました。
1人の人を愛したことが淡々と描かれています。
朴訥とした雰囲気がまた、読者の想像を掻き立てます。
不朽の名作と言われるだけあるなあと思いました。 -
死んだものは生きているものにも大なる力を持ちえるものだが、生きているものは死んだ者に対してあまりに無力なのを残念に思う。
深い。死んでしまった人のことを糧に自分は強く生きていくなんてことはできひんけど、その人が喜んでくれるような恥ずかしくないような生き方をしていきたいと思った。死んでしまう前に精一杯愛を伝えることも大事やと思うから定期的に実家には帰りたいし親孝行したい!