小川未明童話集 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101100012

感想・レビュー・書評

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  • 何年かに1度は読み返す一冊。文体の美しさ、物悲しさに惹かれて、ぼろぼろの表紙も取れた文庫を手離せずにいる。

  • 初めて読んだ小川未明作品。
    豆本にしたいなと思ったのは、「赤いろうそくと人魚」「ある夜の星たちの話」「小さい針の音」。
    戦前の日本児童文学界で最大の存在、知らずに大人になってしまったのは、ちょっと残念。
    読んでいる間、未明ワールドに浸れておもしろかった。

  • 『小川未明童話集 赤いろうそくと人魚』
    著:小川未明
    新潮文庫 昭和26年

    小川未明の童話の世界がたっぷり詰まった一冊。
    暖かい世界。
    基本暖かい世界の中で、結構「何!?」と心ザワザワする出来事が起こったりもし、でもそれらも深く語ることなく過ぎていく。
    現実の不条理を、なんだか美しく、そういうこともあるよね、と包み込んでいるような気がしないでもない。
    と思えば、結構な文明批判みたいな事もあったりして、童話といえども子供から大人まで楽しめる作品群。
    この空気感。時にミステリアスで美しい。独特。


    【収録作品】
    ☆は現段階で青空文庫に未収録の作品。


    『赤いろうそくと人魚』
    海が寂しくなった妊婦の人魚は、子供だけでも賑やかな人間の世界にと、山のお宮に子供を産み落とす。
    老夫婦に拾われた人魚の子はすくすく育ち、
    お礼にと、ろうそく屋の夫婦のろうそくに絵を描くようになる。
    そのろうそくの燃えさしを宮に供えれば、
    海難に遭わなくなると評判になる。
    人魚の噂を聞いた香具師が、
    老夫婦から大金で人魚を買う。
    人魚は悲しみにくれ、ろうそくを赤く塗る。
    以来、赤いろうそくが宮に供えられた日は、
    海が大きく荒れたという。

    『野ばら』
    大きな国と小さな国の国境警備兵の交流。
    友情と、戦争。

    『月夜と眼鏡』
    月夜におばあさんの家を訪れる、眼鏡売りと少女。

    『しいの実』
    田舎生まれのおたけの実家からしいの実が届く。お礼にセーターを贈る。

    『ある夜の星たちの話』
    夜、星たちが密やかにお喋りを始める。子供たち、汽車、工場の煙突。星は優しく見守っている。

    『眠い町』
    行くと眠くなる町に赴いた少年は、老人に眠くなる粉を託される。
    世界の急激な開発を嘆く老人に粉を託され、
    開発の速度を遅らせる少年。
    手元の粉が無くなり眠い町に帰ると…。

    『大きなかに』
    おじいさんが出かけて帰ってこない。待つ子供。おじいさんはカニを背負って帰ってくる。メタファー?

    ☆『雪くる前の高原の話』
    レール、石炭、はち、つた、木、釘、それぞれの生活、サイズ感。脱線と雪。

    『月とあざらし』
    子供が行方不明になり毎夜嘆くあざらしに月が声をかける。孤独と孤独。太鼓を渡され、嘆きから次のステップへ。

    『飴チョコの天使』
    飴チョコの箱に書かれた天使が、都会に行きたいと願う。

    『百姓の夢』
    飼っている牛を大切にしない百姓だが…。

    『千代紙の春』
    鯉を売るおじいさんと孫が病気のおばあさん。その人の周囲の人間関係に思いをはせる優しさ。

    『負傷した線路と月』
    レールが機関車に傷つけられたと月に訴える。月が機関車を訪ねてみると、重い荷のせいでケガをしたという。荷は自分がどこへゆくか分からず怖いという。月は人間の観察を始める。

    『殿さまの茶わん』
    殿さまに薄くて軽い茶碗が献上されるが、汁を入れるととても熱くて苦しい。ある日百姓家で厚い茶碗を使うととても心地よく、物には真心こそが肝心と気付き陶器師を諭す。

    『牛女』
    牛女と呼ばれる体の大きな不具者の女は一人で子供を育てるが病気でなくなる。
    死後も彼女の魂は子供を見守り続ける。

    『兄弟のやまばと』
    街へ出たい兄弟のやまばとは、母の反対をおしきって街へと向かう。しばらくすると…。

    『とうげの茶屋』
    峠の茶屋の老人は、新しく道をバスが通るというので、客足が減るのではと心配する。
    が、とある出来事から、世の中が便利になるのはとても良いことだと、すっきりする。

    『金の輪』
    金の輪をキレイな音立てて鳴らしてやってくる少年!

    『遠くで鳴る雷』
    川を流れる、水神さまへの供物のきゅうり。
    その行き着く先は…。

    『港についた黒んぼ』
    笛を吹く盲目の弟とそれに合わせて踊る姉。
    姉はある日金持ちに見初められて出かけてゆくが…。なにこれ、パラレルワールド!?

    ☆『小さい針の音』
    小さな村の教師が、都会へ出る時に、
    子供たちから時計を贈られる。
    はじめは大事にしていた時計も、裕福になるにつれて見向きもしなくなり売り払うが、
    ある日彼の部下がそれを持っている事が分かり、
    昔を思い出す。

    『島の暮れ方の話』
    道に迷った男が美しい女に出会う。道案内をされ村に辿り着くが、村人はそんな所に人はいないはずだと言う。女に出会った家を再訪すると、そこには…。

    ☆『二度と通らない旅人』
    吹雪の夜、山の中の一軒家に旅人が宿を求める。
    住人は拒否するが、家の娘が病気だという事を知ると旅人は、
    薬だけでもと渡して去っていく。
    医者が見放した娘はその薬で回復し、
    村では、その人は神様だ、と噂が立つ。
    娘は成長し、孫も生まれ、
    旅人を止めてやらなかった父母兄は、
    今度こそ、誰か来たら泊めようと心に誓う。
    が、誰も来ない。

    『黒い人と赤いそり』
    氷の上に取り残されて流された人たちを、救出にいった五人は戻らなかった。
    人々は救助隊を探すことをしなかった。
    以来、黒い人影、赤いそりが、不吉の前兆として現れる事になる。

    『かたい大きな手』
    田舎から来たおじいさんと、孫の勇吉の交流。
    都会と田舎の対比、金というものへの考え。
    生活は、どちらがより豊かなのか。

  • ほっこりする話や、少し悲しくなる話などイロイロな作品が楽しめます。
    優しい文章で心が癒されます。

  • どこかで聞いたことのある、知ったように思っていたお話たち。

    童話だからか難しい言葉が使われていないため、書かれている情景が、ふわぁと浮かんできました。昔あったであろう穏やかな風景が。

    最後は優しい気持ちになりました。

  • 「赤いろうそくと人魚」は有名だけど読んだことがなかったので、図書館で見かけてなんとなく読んでみたら、思いのほか良かった。言葉がきれいで、しっとりとした情緒がある。童話だけど特に子供向けという感じでもなく、解説の「元来、童話というものは詩に近いものであります」という一文に、なるほどと思った。

  • 童話って、シュールだよね。
    最後は切なく終わるものが多い。
    アンデルセンやグリムは遠い国のお話し感が強いけど、これは、情景が浮かんでくる…

    農村の話と暗い海の話が多いと思ったら
    新潟の人でした。。。
    環境は影響するのかな。

    全部で25話だったかな…
    読んでいくときっと気に入る話がある気がする。。。

  • 以前読んだ『菓子屋横丁月光荘 浮草の灯』に出てきた、人魚のお話が読みたくて購入してみた。
    初めて読むお話ばっかりだったけれど、「めでたし。めでたし。」で終わらない、物悲しいお話が多いなぁって印象です。

  • 「赤い蝋燭と人魚」がすごい。

  • 大学生の頃読んだ。良かったと思う。

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著者プロフィール

明治・昭和時代の小説家・児童文学作家。新潟県出身。「日本児童文学の父」と呼ばれ、『赤い蝋燭と人魚』『金の輪』などの名作を多数創作。

「2018年 『注文の多い料理店/野ばら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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