沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104300

作品紹介・あらすじ

会長室の調査により、次々と明るみに出る不正と乱脈。国民航空は、いまや人の貌をした魑魅魍魎に食いつくされつつあった。会長の国見と恩地はひるまず闘いをつづけるが、政・官・財が癒着する利権の闇は、あまりに深く巧妙に張りめぐらされていた。不正疑惑は閣議決定により闇に葬られ、国見は突如更迭される-。勇気とは、そして良心とは何かを問う壮大なドラマ、いよいよ完結へ!。

感想・レビュー・書評

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  • 背帯の文言
    「この国を覆う、おそるべき良心の不在。恩地元最後の闘い」
     今回も読んでいて、腹がたった。
    国民航空、関連会社「国航開発」の政・官・財界との癒着、私腹を肥やす利権等、魑魅魍魎が蔓延するデタラメぶりがあまりにひどい。
     この物語が単なるフィクションであるなら、腹も立たないだろうが、登場人物の氏名は実在の人物の名前をもじったもので、実在する人物だからだ。
     ここで登場する自由党の竹丸副総理など、政界のドンとして君臨し、汚職事件で逮捕されたあの人だ。
    現在も政治家の金権体質は、あいも変わらず変わらない。
     本書で、架空の人物である、常務にまで成った行天四郎の行動がひどい。
     客室乗務員と社内不倫をするわ、運輸省航空局の官僚に、その愛人とのマンションを提供するわ、そのなりふり構わない行動は人間としてどうかとおもう。
     『行天四郎』は国民航空に於いて、利権に群がる魑魅魍魎を具現化した人物なのだろう。
    本巻では、地検から呼び出しを喰らう所で終わっている。
     国航開発の社長である岩合は、「岩合天皇」と呼ばれていた。その放漫経営により、私腹を肥やしていたが、ついに解任された。ここだけはスッとした。
     最後に会長の国見は解任。
     恩地は再び、ナイロビ支店長赴任を命ぜられ、本意ではないが、ナイロビへと向かう、残念な結果となっている。

     最後に作者の『あとがき』で、山崎豊子が述べている。
    「今回は非常に勇気と忍耐のいる仕事であったが、その許されざる不条理に立ち向かい、それを書き遺すことは、現在を生きる作家の使命だと思った」
     偉大な作家の、この『あとがき』は重い。

  • 全巻読み終えました。
    当初、先入観無しに読み進めましたが、筆者の長きに渡る取材からの小説との事。
    圧倒されました。
    これが小説と言う設定なら、最後のくだりが無情すぎます。
    しかし、忠実に再現した内容なら人の残酷さがよく分かります。
    通勤時に読んでましたが、何度も泣きそうになりました。
    おすすめの作品です。

  • 渡辺謙主演の映画、沈まぬ太陽を観て感動したため原作を読んでみた。
    山崎豊子さんは十年に1作書かれるということで
    すごく時間をかけられたのが、よくわかります。
    印象に残ったこと葉
    ニューヨークの動物園の鏡の間の鉄格子に埋め込まれた鏡があり、人間の上半身が映る仕掛けになっていて、その鏡の上には
    世界で最も危険な動物
    と記されていた。
    そしてもう一つは最後に
    何一つ遮るもののないサバンナの地平線へ黄金の矢を放つアフリカの大きな夕陽は荘厳な光にみちている。
    それは不毛な日々にあった人間の心を慈しみ、明日を約束する、沈まぬ太陽であった。
    なお、この小説に出てくる行天は白い巨塔の財前五郎の弟分として四郎としたそうです。

  • 最高です

  • 沈まぬ太陽1-5を読了。コンプライアンスが浸透しつつある(であろう)現代の感覚からみた本作で描かれる航空会社の汚職体質はあまりにも酷く、正に魑魅魍魎であった。利権の絡んだ世の中で正義を貫くことの強さ・難しさを感じた。

  • 人間の卑屈さ、組織の非情さがよくわかった。

  • 予定調和じゃなかった。でも不満はないかも。

  • 最後まで不遇で信念を貫く主人公と、野心と謀略にまみれたライバル。
    山崎豊子作品といえばこの構図。

    毎年、御巣鷹山の追悼登山のニュースを見るたびに、恩地元を思い出す。

  • 恩地元にとってあまりに不条理で理不尽な全5巻を読了。この結末で彼は報われたと言えるかは本人のみぞ知ることだが、正直者が馬鹿を見るというようなことは日常的に起きており、国民航空のような政治家が絡み決して綺麗な金だけではない多くの金が動く世界をどう立ち回るかは非常にセンシティブである。恩地のように正義と矜持を貫くか、行天のように組織に迎合し泳いでいくか、現実社会では後者を選択し社畜と揶揄されながらも地位を得る者も多いだろう。
    人間ドラマあり、アフリカの壮大なスケール感もあり、読み応えにある良い小説だった。

  • こんなに感情が相当揺さぶられた小説はありませんでした。腐敗に対する怒りと報われない主人公への同情。いい意味で疲れ果てました。
    願わくば、もう少し復讐劇が欲しかったです。あまりにも苦労が長すぎませんか?最後の最後まで…。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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